表示段落: 第1部/第2章/6/6-3


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6-3 地方公共団体の火山災害対策

 有珠山及び三宅島において大規模な火山災害が発生したこと等に伴い,火山災害対策への関心が高まりつつある。これらの状況にかんがみ,火山周辺の市町村に,防災対策の現況と認識についてのアンケートを実施した。以下,その概要を示す。

(1) 火山対策に対する認識と対策〜危機意識は高まっているが対応は不十分

 「以前と比べて火山災害への危機意識が高まっているか」との問いに対し,「高まっている」(「かなり高まっている」及び「多少高まっている」の回答の合計)とした市町村は65.3%に達し,半数を越えるアンケート対象市町村において,火山災害への危機意識が高まっている。その一方,各市町村の火山災害対策の充足度については67.0%が「不十分」(「やや不十分である」及び「全く不十分である」の回答の合計)と回答している( 図2-6-4及び5 )。

  (図2-6-4) 以前と比べた火山災害への危機意識の高まり(N=124) (図2-6-5) 火山災害への危機意識と比べた対策の充足度(N=124)

 火山周辺の市町村の多くが火山対策についての危機意識を高めているが,火山対策の水準に対しては市町村自身が必ずしも満足している状況にはないことが分かる。

(2) 火山災害対策の状況〜避難場所指定等は進捗しているが,市民への啓発,訓練,ハザードマップの作成は実施率が低い

 多くの市町村において「避難場所の指定」「情報伝達機器の整備」を実施しているとともに「避難時用の食料,飲料水や毛布等の備蓄」等の施策についても3割程度の市町村が実施している( 図2-6-6 )。

  (図2-6-6) 実施済又は実施中の火山災害対策(複数回答可)

 しかしながら,火山災害に対して住民の関心を高めるために実施した施策,及び火山防災訓練については,いずれも「特に実施していない」と回答した市町村が最も多かった( 図2-6-7 , 図2-6-8 )。

  (図2-6-7) 住民の関心を高めるために実施した施策(複数回答可)

  (図2-6-8) 実施した火山防災訓練(複数回答可)

 また,ハザードマップを作成している市町村も過半数に満たず( 図2-6-9 ),作成していても,「有効な火山噴火災害対策が検討されていない」「火山の危険性によるイメージダウンが心配」等の理由でマップを公開していない市町村が作成済市町村中15.4%あった。さらに,ハザードマップを作成しない理由としては,「火山噴火災害の危険性がない,又は切迫していない」とする回答が過半を占めた。

  (図2-6-9) 火山ハザードマップの作成状況(複数回答可)

(3) 火山周辺地域の状況〜火山周辺の居住人口や観光客は多いが,対策は進んでいない

 今回アンケートの対象とした火山周辺市町村の人口の合計は約400万人である。また,火山は観光資源となっている場合が多いことから,火山噴火により危険となる地域を訪れる観光客も年間合計延べ約1000万人(観光客が来訪する1火山あたり50万人)に達している。これに対して,火山災害時に住民や観光客等に対して避難指示・勧告等を行う基準を予め決めている市町村は28.2%にとどまっている( 図2-6-10 )。また,実際に避難指示・勧告を行うこととなった場合の問題点については,「避難指示・勧告を出すタイミングが分からない」とともに,「一旦避難指示・勧告を出した後それを解除する時期が難しい」との回答が多く見られた( 図2-6-11 )。

  (図2-6-10) 住民や観光客等に避難命令・勧告等を出す基準について(N=124)

  (図2-6-11) 避難指示・勧告を出す上での問題点(複数回答可)

(4) 火山との共生 〜噴火の場合の対応もなるべく市町村内で

 火山が噴火した場合に避難が必要と各市町村が想定している区域の人口の合計は,今回のアンケートの結果においては延べ45万人となったが,それらの人々に対しても,半数を超える市町村が市町村外への避難の可能性はない(「あまり可能性はない」と「全く可能性はない」の合計62.1%)と回答している( 図2-6-12 )。火山周辺の市町村は,できる限り地元にとどまれるような火山対策を行いたいと考えている。

  (図2-6-12) 居住者の市町村への避難の可能性(N=124)

 火山に対する危機意識の高まりに応じ,火山周辺の市町村においては,避難場所の指定及び整備等の対策を講じているところである。しかしながら,アンケート調査によると,住民への啓発,訓練,ハザードマップの作成及び公表,観光客への避難勧告基準等の施策については未だ不十分であり,対策全体的にも市町村自らが満足する水準には達していない。また,噴火時の避難においても,できる限り住民が市町村内にとどまれるような対策を意向している。これらを踏まえ,今後とも,住民と火山とが共生できるような,火山対策の充実が重要である。

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