表示段落: 第1部/第2章/5/5-3


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5-3 地方自治体における風水害対策の推進状況について

 国土庁(現内閣府)は,平成12年12月,今後の風水害対策の推進を講じていく上での基礎的資料とすることを目的として,全国の市区町村における豪雨時の洪水・土砂災害等に対する予防対策の実態に関するアンケート調査を実施した(対象市区町村数:3,252,実施方法:郵送配布郵送回収,回収率:70.5%)。

(1) 市区町村の被災経験

 ( 図2-5-6 )は,過去20年間で洪水・土砂災害に伴う避難者(住民の自主避難も含む)が発生している市区町村を表している。全国の市区町村の内,約6割で避難者が発生していることがわかる。このことから,風水害に対する防災対策は全国的に重要な課題であることが分かる。

  (図2-5-6) 過去20年間の洪水・土砂災害に伴う避難者の発生状況

(2) 市区町村におけるハザードマップ作成状況

 住民はそれぞれの居住地域において,災害の危険個所・地域をあらかじめ十分把握しておくことが重要であり,そのために,地域の地図に災害の危険個所や避難場所・避難ルートを表したハザードマップが利用される。ハザードマップを利用し,迅速に避難を行った例も数多くある。( 図2-5-7 )はハザードマップの作成状況,( 図2-5-8 )はハザードマップの配布状況を表している。ハザードマップの作成済みの市区町村は,洪水・冠水で2割弱,土砂災害で3割弱,さらにハザードマップ配布済みの市区町村は,洪水・冠水で1割強,土砂災害で2割弱である。地方自治体では,予算制約や住民に混乱を与えないため等として,ハザードマップを配布していないところが多く,全国の6割の市区町村が被災していることからすると,住民への危険個所の事前周知が不十分であることが言える。

  (図2-5-7) 危険箇所を示したハザードマップ作成状況

  (図2-5-8) ハザードマップ配布状況

(3) 警戒避難に関する客観的基準

 一昨年7月の広島における土砂災害の教訓から,行政の住民に対する避難勧告の出し遅れを防ぐために,警戒避難を行うかどうかを判断する客観的基準(時間雨量などの数値的基準)の設定を進めるよう中央防災会議の提言の中で求めている( 第2章5-2 参照)。

 ( 図2-5-9 )は,避難勧告の定量的な発令基準の有無を表している。洪水・冠水に関しては約3割,土砂災害では約2割5分の市区町村で設定されている。避難勧告に関する客観的基準に関しても,ハザードマップと同様に導入が不十分であることが分かる。

  (図2-5-9) 避難勧告の定量的な発令基準の有無

(4) 避難所の安全確認状況

 昨年9月の東海地方の豪雨災害では,避難所として使用される地域のコミュニティセンターなどが浸水し,避難所としての機能を十分に果たさなかった。

 ( 図2-5-10 )では避難所の安全性の確認状況を表している。洪水・冠水,土砂災害ともに6割弱程度の市区町村でしか避難所の安全確認が行われていない。

  (図2-5-10) 避難場所の安全性の確認

 以上のように,ハザードマップの整備,時間雨量などの客観的な避難勧告基準の設定,さらに避難所の安全性確認などソフト面における風水害対策が進んでいない現状を伺うことができる。河川堤防,砂防えん堤などの国土保全施設の整備が財政的な理由や用地買収の困難性などの理由により,その整備がなかなか進まない現状において,住民の生命・財産を守るためにはソフト面での災害対策を推進することが重要である。今後,危険箇所の周知徹底や避難誘導体制の整備等の対策が望まれるところである。

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