表示段落: 第1部/第1章/4/(3)/[4]


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[4] ネットワーク化と災害

 高度情報システム等によって,世界的に経済社会の人,物,金等の諸要素が分かちがたくネットワーク化されるにつれ,個々の独立性が低下し,災害等によってネットワークの一部が破壊されただけで,ネットワーク全体の機能が停止するといった脆弱性が増加する傾向にある。

 我が国においては,例えば,1984年の世田谷ケーブル火災において,管内の加入電話,公衆電話が不通になったばかりでなく,区役所,警察,消防など公共機関,さらには金融機関などのオンラインが停止し,広域的に多大な影響を及ぼした(参考:http://xing.mri.co.jp/research/reseach/bousai)。さらに,1998年の大阪における専用回線事故でも同様の混乱が発生し,この場合には航空管制業務にまで影響し,大きな事故災害につながる可能性もあった。

 また,経済的な観点から見ると,一部の地域の災害が国境を越えて多方面に影響を及ぼす可能性が高まりつつある。例えば,G7諸国の国際資本移動の規模(直接投資及び証券投資の合計値の対名目GDP比率)は,最近では10%を越える水準にまで上昇している。大規模な災害等によりこれらの資金の流通が停止するような事態になれば,被災国のみならず世界経済に大きな影響を与えると考えられる。

  

 以上述べてきたように,21世紀中にも人類が新たな災害の脅威にさらされることは明らかであり,犠牲者と被害の軽減を図るため十分に備える必要があることは言うまでもない。

 世界的には,国連が1990年代を「国際防災の10年」と定め,国際防災の10年事務局を中心として,特に途上国における自然災害による人的損失,物的損害及び社会的・経済的混乱を,国際協調活動を通じて軽減するための活動を行ってきた。本活動を終了するに当たり,コフィ・アナン事務総長は,1999年9月に開催された第54回国連総会の事務総長報告の中で,現在,国際社会が自然災害の人的,資金的コストの急増に直面しており,犠牲者に対する救援能力を強化しつつ,その発生を防止するための効果的な戦略を考えなければならない旨指摘した。まさに「Prevention is better than cure(予防は治癒に勝る)」の思想である。

 同総会において「国際防災の10年」期間中に実施された先駆的な取組みを今後とも継続するために,2000年より「国際防災戦略(International Strategy for Disaster Reduction:ISDR)」活動を開始することを決議し,現在,国連・国際機関と連携しつつ災害対応力の強いコミュニティの形成と災害リスクの管理を目指して,防災に関する意識啓発活動等に努めている。21世紀の新たな災害の態様に的確に対応していくためにも,このような国連を中心とした防災活動に積極的に参加していく必要がある( 第4章2 参照)。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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