表示段落: 第1部/第1章/3/3-3


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3-3 平成12年秋雨前線と台風第14号に伴う大雨

(1) 災害の状況

 9月11日から12日にかけて,本州上に停滞していた前線に向かってゆっくりと沖繩方面に進んでいた台風第14号から暖かく湿った空気が入って,前線の活動が非常に活発となった。これにより西日本から東日本にかけての太平洋側で長時間にわたり,活発な雨雲が発生・発達を繰り返し大雨をもたらした。特に,東海地方では,名古屋地方気象台において明治29年に記録した最大日降水量の2倍近い日降水量428mmを観測するなど,各地でこれまでの観測値を更新する記録的な豪雨となった。

 この豪雨により,名古屋市で新川が約100mにわたって破堤したほか,庄内川や天白川でも越水するなど,愛知県及びその近県で,溢水,浸水,冠水が発生し,伊勢湾台風以来の浸水害となった。死者10名,負傷者115名,住家の全壊31棟,半壊172棟,一部損壊305棟,床上浸水22,894棟,床下浸水46,943棟の被害が発生したほか,愛知県を中心として延べ約61万人に避難指示・勧告が出された。

 電気・ガス・水道・電話・下水道関係では,延べ約32,500戸が停電となったほか,約5,700戸にガスの供給支障が生じた。また,100局の携帯電話基地局や岐阜県,三重県,長野県内4局の放送中継局が停波した。上水道は,愛知県で967戸,長野県で840戸,岐阜県で731戸が断水したのをはじめ,全国で3,386戸が断水となった。下水道も愛知県で41か所が被災した。

 また,土砂災害も,土石流,地すべり,がけ崩れ等合わせて全国で123件発生し,県道以上の道路では,法面崩壊により124か所,冠水により95か所が通行止め(12年9月12日10時現在)となった。

 鉄道関係では,東海道新幹線で降雨規制等により約18時間にわたり運行抑止となったほか,JR東海,各私鉄で計22路線が運休となった。

 農林水産業関係では,農地4,465か所,農業用施設3,207か所,林地荒廃1,058か所,林道4,468か所,治山施設48か所,漁港施設11か所,漁業用施設1か所に被害が発生した。また,冠水等により農作物等にも被害が及んだ。

 建設省の試算によると,被害額は約8,500億円となり,公共施設に比べて一般資産の被害額が多かったのが特徴である。

(2) 国の対応状況(省庁名,大臣等は当時)

 9月12日13時より,災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]行方不明者の捜索救助に全力をあげること,[2]これまでに生じた被害に対し適切に対応を続け,復旧が速やかに進められるよう対応すること,[3]関係機関は今後とも迅速かつ的確な情報収集・伝達を行い,関係地方公共団体も含め緊密な連携を図り,警戒体制に万全を期すること,[4]事態の推移に応じ必要があれば災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。

 政府は,この豪雨災害による中小企業者等の被害が過去の激甚災害と比べても非常に大きいこと等を考慮し,中小企業関係の激甚災害指定基準を緩和した上で,「平成12年9月8日から同月17日までの間の豪雨及び暴風雨による災害」を激甚災害に指定( 表1-3-1 )し,中小企業者等に関する特別の助成措置を講じた。この激甚災害指定の際には,農地等の災害復旧事業に係る補助の特別措置等も適用した。また,「平成12年9月8日から同月18日までの間の豪雨及び暴風雨による災害」を局地激甚災害に指定( 表1-3-2 )し,公共土木施設等の災害復旧事業に係る補助の特別措置等を行った。さらに,10月17日には,7月25日の閣議決定で災害対策分として使用留保していた公共事業等予備費約200億円のうち,約21億円を豪雨災害による河川等災害復旧事業等に使用することを閣議決定した。

  (表1-3-1) 平成12年激甚災害適用措置及び主な被災地

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 内閣官房では,9月12日午前5時30分に官邸連絡室を設置し,被災情報等を集約して内閣総理大臣,内閣官房長官等に適宜報告等を行った。

 国土庁では,9月13日に扇国土庁長官が,10月2日には蓮実国土総括政務次官が被災地を視察した。さらに,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を愛知県,岐阜県の9市13町に適用することとした。

 警察庁及び関係管区警察局では,関係機関との連絡調整等に当たるとともに,愛知県警察等関係都府県警察では,被害情報の収集,救出救助,行方不明者の捜索,交通規制,被災地警戒等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時6機,延べ約30機)。

 防衛庁は,関係地方公共団体への連絡要員の派遣,航空偵察等を行ったほか,9月11日に愛知県知事より,12日に岐阜県及び長野県知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,11日から26日までに,物資輸送,住民避難,給水・給食,塵埃輸送,防疫活動,道路啓開等の支援を実施した(人員派遣:最大時約1,800名,延べ約9,900名,航空機派遣:最大時約10機,延べ約140機)。

 大蔵省では,多大な被害を受けた名古屋市及び西春日井郡の指定する地域の納税者について,国税庁告示をもって,平成12年11月15日まで,申告,納付等の期限を延長した。

 文部省では,教育委員会等の関係機関から被害情報を収集するとともに,適切な対応をとるよう指示した。また,臨時休校,授業の打ち切り等の措置を講じた。

 厚生省では,9月11日,愛知県,岐阜県の9市13町に災害救助法を適用し,避難所の設置,食品の給与等を支援した。

 日本赤十字社は,愛知県等5県の被災者に毛布,日用品セット等を配布した。また,西枇杷島診療所に開設された臨時救護所に救護班を派遣した。

 農林水産省では,農業共済金の早期支払いについて,農業共済団体等を指導した。

 通商産業省では,電気及びガス料金の支払期限の延長等の災害特別措置を認可した。また,政府系中小企業金融機関による「災害復旧貸付」を適用するとともに,中小企業者の返済猶予等既往責務の条件変更等につき,実状に応じて対応するよう政府系中小企業金融機関等を指示した。さらに,著しい被害を受けた中小企業者等に対しては,閣議決定により,貸付利率を財投金利と同水準まで引き下げ,その中でも特に著しい被害を受けた中小企業者については,地方公共団体と協力して利子補給を行い,結果的に無利子となる措置を実施した。

 運輸省では,鉄道及び海運等関連事業者団体への注意喚起及び安全運転の確保について指示した。また,海上保安庁が行う救難活動のための臨時ヘリポート拠点として使用可能とするため,伊勢湾浮体式防災基地(ミニフロート)を出動させた。

 海上保安庁では,延べ471名を派遣し,巡視船艇,航空機による被害状況調査,孤立者救助等の救助活動,応急物資の輸送等を実施した(人員派遣:最大時114人,延べ471人,巡視船艇派遣:最大時22隻,延べ26隻,航空機派遣:最大時2機,延べ6機)。

 気象庁は,警報を含む気象情報を適時に発表し,大雨,洪水等の気象災害に十分に警戒するよう呼びかけた。

 郵政省では,電気通信・放送事業者に対し被災設備等の早期復旧等を指示するとともに,臨時郵便局の設置及び衛星通信設備によりオンラインサービスが可能な移動郵便局(スペースポスト号)を東浦郵便局(9月13日〜14日),枇杷島郵便局(9月15日〜18日)に派遣した。また,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。さらに,通信確保のため(財)日本移動通信システム,(財)東海移動無線センターの協力を得て,愛知県内の市町村へ無線機を貸与した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルを運用するとともに,避難所等に特設公衆電話を設置した。

 NHKは,被害が甚大な放送受信契約者に対し,放送受信料を免除した。

 建設省では,排水ポンプ車20台を全国から集結し,排水対策等を実施した。また,災害査定官,土木研究所等の職員を現地に派遣し,現地調査及び応急復旧工法指導等を行うほか,崩壊地の拡大等による土砂災害の発生防止のため,災害関連緊急砂防等事業の採択及び実施を支援した。9月18日,住宅金融公庫の災害復興住宅融資の受付を開始した。9月13日には扇建設大臣が被災地を視察した。また,河川激甚災害対策特別緊急事業を実施した。

 自治省では,被災納税者の地方税の減免措置等について地方公共団体に対し通知したほか,10月17日に愛知県下16団体,岐阜県下2団体,長野県下8団体の計26団体に対し,11月に定例交付すべき普通交付税の一部6,466百万円を繰り上げて交付した。

 消防庁では,関係都道府県に適切な対応をとるよう指示した。また,各消防機関は,危険箇所等の警戒巡視,要救助者の救助,避難の誘導,土のう積みなどの水防活動等を実施した。

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