表示段落: 第1部/第1章/3/3-1/(2)


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(2) 国等の対応(省庁名,大臣等は当時)

 噴火前の3月29日と翌30日の両日に,災害対策関係省庁連絡会議を開催し,関係省庁間の緊密な連携等を確認した。また29日に2回,官邸において関係省庁局長等会議を開催するとともに,現地には,国土庁長官官房審議官をはじめとする関係省庁の担当官を派遣し,地元自治体等と有珠山現地連絡調整会議を開催し,現地における今後の対応等について検討した。翌30日には増田国土総括政務次官を現地に派遣し,現地の体制を強化した。

 3月31日13時07分頃の最初の噴火後,直ちに,関係閣僚会議を開催し,「平成12年(2000年)有珠山噴火非常災害対策本部(本部長:中山国土庁長官,場所:国土庁)及び現地対策本部(本部長:増田国土総括政務次官,場所:伊達市)」の設置等を決定した。その後開かれた非常災害対策本部第1回本部会議では,下記の6点からなる災害応急対策に関する基本方針を決定し,これに沿って対策を実施していくこととした。

[1]

 今後の火山活動について,引き続き,観測・監視の強化,情報伝達体制の確保など,厳重な警戒態勢を執る。

[2]

 被害状況の迅速かつ的確な把握に努めるとともに,住民等の安全を最優先に,避難誘導等に万全を期す。

[3]

 災害の拡大防止を図るため,関係省庁,地元地方公共団体の緊密な連携のもと,状況に応じた適切な応急対策を講ずる。

[4]

 政府調査団(団長:中山非常災害対策本部長(国土庁長官))を直ちに現地に派遣する。

[5]

 現地に設置している有珠山現地連絡調整会議を平成12年(2000年)有珠山噴火非常災害現地対策本部にきりかえる。

[6]

 住民の避難生活が長期化する可能性にかんがみ,応急仮設住宅の供与をはじめとした適切な救済措置を講ずる。

 これを受け,本部会議終了後直ちに,中山非常災害対策本部長(国土庁長官)を団長とする政府調査団を現地に派遣した。翌4月1日に政府調査団は帰京し,直ちに非常災害対策本部長より現地の状況を小渕内閣総理大臣に報告するとともに,4月3日,非常災害対策本部第1回本部事務局幹事会会議を開催し,政府調査団報告等を行った。

 また,現地では,非常災害現地対策本部が設置されたことに伴い,有珠山現地連絡調整会議を有珠山噴火非常災害現地対策本部合同会議に切り替え,3月31日,伊達市役所において第1回有珠山噴火非常災害現地対策本部合同会議を開催し,現地における様々な課題・問題について協議を重ね,その対応に当たった。なお,非常災害対策現地本部合同会議は,当初毎日2回開催し,8月11日の現地対策本部の閉鎖までに計61回開催された。

 4月7日15時より非常災害対策本部第2回本部会議を開催し,下記の5点からなる災害対策に関する基本方針の決定等を行った。

[1]

 観測・監視の強化,情報伝達体制の充実等により,引き続き厳重な警戒態勢を執る。

[2]

 引き続き,住民等に対する安全性の確保を最優先として避難誘導等に万全を期する。

[3]

 避難者のニーズに的確に応える情報提供等を行うとともに,避難所における生活環境の改善や応急仮設住宅の供与等の適切な支援措置を講じる。

[4]

 農林漁業,商工業や観光業等生業への支援措置及び被雇用者への支援措置を講じる。

[5]

 今後とも,関係省庁や地元地方公共団体と緊密な連携を図りつつ,状況に応じた適切な応急対策を講ずる。

 また,4月15日には,森内閣総理大臣が現地を視察した。28日,官邸において青木内閣官房長官の出席の下,第3回関係省庁局長等会議を開催し,監視・観測体制の強化,大規模噴火が起こる兆候があった場合の現地対策本部の体制強化等について確認を行った。5月3日,火山の状況と監視体制,火山活動に応じた避難等について協議するため,関係閣僚会議を開催した。6月には,6日から7日にかけて,中山非常災害対策本部長(国土庁長官)が現地を視察,また,6月16日,関係閣僚会議を開催し,緊急時の住民避難,今後の復旧・復興対策等について確認した。9月14日,非常災害対策本部第2回本部事務局幹事会を開催し,有珠山噴火災害の復旧・復興等について報告等を行った。年が明けた平成13年1月22日,伊吹非常災害対策本部長(防災担当大臣)及び山崎非常災害対策副本部長(内閣府大臣政務官)が現地を視察した。

 政府は,4月28日,予備費を使用し,地震計,GPS,遠望カメラ等の観測監視体制を充実することを決定した。また,7月25日,この有珠山噴火災害に対する緊急災害復旧及び緊急防災対策として,一般国道230号をはじめ,有珠山周辺の迂回路・避難路の改修,防災・雪寒対策,道路情報装置の整備などの道路整備関係約129億を含む約196億円の公共事業等予備費の使用について閣議決定した。9月19日には,7月25日の閣議決定で災害対策分として使用留保していた公共事業等予備費のうち,1億4,800万円を有珠山対策として使用することを閣議決定した。

 避難指示地域内への住民一時帰宅については,一時帰宅する住民の安全が確保されるよう,非常災害現地対策本部が地元地方公共団体と自衛隊,消防,警察,道路管理者,気象庁等関係支援機関の調整を綿密に行い,実施日ごとに計画を策定した上で実施した。

 また,今回の災害について局地激甚災害の指定を行った( 表1-3-2 )。

  (表1-3-2) 平成12年局地激甚災害適用措置及び対象区域

 被災地域の復興のため,北海道が平成12年12月に「復興方針」をとりまとめ,平成13年3月には「復興計画基本方針」を策定した。政府としては,「復興計画基本方針」に基づき地元1市2町が策定する「復興計画」の実現に向けて,政府一体となって支援を行っていくこととしている。

 関係機関においては,以下の措置を講じた。

 内閣官房は,3月29日に官邸連絡室を設置し,更に同日官邸連絡室を官邸対策室に改組し,関係省庁の情報共有化を図るとともに,政府の初動対処方針を決定した。また,4月3日及び9日には危機管理監を現地に派遣したほか,3月29日以降現地に職員を派遣し,関係機関と協力し現地における対応に当たった。

 国土庁は,3月29日に情報先遣チーム,翌30日には増田国土総括政務次官を現地に派遣し,現地との連絡調整を強化した。31日に非常災害現地対策本部が設置され,増田国土総括政務次官は,非常災害現地対策本部長として引き続き現地にとどまり,指揮をとった。また国土庁長官官房審議官を非常災害現地対策本部長代行として現地に常駐させるとともに,多数の職員を派遣し,現地における対応にあたった。4月19日には自衛隊等の航空機から撮影した被災地域の映像を元に,明らかに全壊と認められる住宅を確認し,3月31日付で虻田町に「被災者生活再建支援法」を適用した。また,7月28日には,今後も避難が長期化することが見込まれる202世帯を同法に基づく「長期避難世帯」として認定した。

 警察庁では,非常災害現地対策本部に警察庁幹部を派遣して,現地での連絡体制の強化を図った。また,噴火前に東北管区広域緊急援助隊の派遣を指示するとともに,噴火後には,管区機動隊等の派遣を指示した。北海道警察では,現地に派遣された機動隊と協力して,避難誘導,避難拒否者の説得活動,交通規制,立入規制,避難住民の短時間・一時帰宅の支援,避難所における「困りごと相談」等に当たった(ヘリコプター派遣:最大時4機,延べ約160機)。また,4月23日,保利国家公安委員会委員長が現地視察を行った。

 総務庁は,5月16日,17日,被災者等からの各種相談,問い合わせ等に応じるための総合的な相談窓口として,伊達市及び豊浦町において関係機関の協力を得て特別総合行政相談所を開設した。

 北海道開発庁は,建設省と一体となって,高感度監視カメラやヘリコプター等による火山活動や泥流の監視を行うとともに,現地画像を関係機関や避難所に配信した。また,公共事業等予備費により,新たに無人災害調査車等を整備するとともに,泥流対策として,緊急的に無人化施工等を実施した。さらに,北海道産業,経済全般への影響を軽減するため,「北海道活性化懇談会」や北海道産品の購入促進キャンペーン等を実施した。3月31日,4月8日,5月1日及び6月30日に二階北海道開発庁長官が現地を視察した。7月8日には森田北海道開発庁長官が現地を視察した。12月14日,扇北海道開発庁長官が現地を視察した。米田北海道開発総括政務次官を3月30日から31日,4月4日及び6月6日に現地に派遣するとともに,7月14日,橋本北海道開発総括政務次官を現地に派遣した。

 防衛庁は,航空機による航空偵察,関係地方公共団体への連絡要員の派遣等を行うとともに,3月29日に北海道知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,3月29日から7月24日までに,住民避難,給食・給水,避難住民の短時間・一時帰宅,火山観測監視等の支援を実施した(人員派遣:最大時約4,300人,延べ約100,000人,航空機派遣:最大時約20機,延べ約1,000機,艦船派遣:最大時4隻,延べ約100隻)。また,4月9日,瓦防衛庁長官が現地視察を行った。

 科学技術庁では,航空機による山体表面温度観測,地球観測衛星による観測を実施するとともに,高サンプリング地震観測を整備強化した。

 大蔵省では,多大な被害を受けた伊達市及び壮瞥町の指定する地域並びに虻田町の納税者について,国税庁告示をもって,平成12年10月31日まで,申告,納付等の期限を延長した。

 文部省では,幼児・児童生徒の所在・状況の把握,転入学の弾力措置等適切な対応をとるよう指示した。また,北海道大学医学部附属病院の医師団,北海道大学歯学部附属病院の歯科保健班を派遣した。4月17日には中曽根文部大臣が現地を視察した。

 厚生省は,3月29日,伊達市,虻田町,壮瞥町に対し災害救助法を適用し,避難所・応急仮設住宅の設置等を支援した。避難住民に対する救護活動,心のケア,健康相談等の実施のため,地元地方公共団体等は,救護班や精神保健班,保健婦を避難所等に派遣した。また生活福祉資金の貸し付けの対象を低所得者に限定しない特例措置を実施した。

 日本赤十字社は,各赤十字病院から救護班を派遣し,避難所等で巡回医療等を実施するとともに,毛布,日用品セット,お見舞い品セットを避難住民に配布した。また,赤十字防災ボランティアを伊達市,長万部町に派遣した。

 農林水産省では,避難指示地域内の家畜の移動先を確保し,家畜改良センター等から避難農家に粗飼料を提供した。また,漁船等の安全確保,ホタテ管理作業の支援,水産生物や海洋環境への影響調査のため,水産庁の漁業取締船及び調査船を現地海域に派遣した。さらに,被害の著しい農林漁業者に対する農林漁業金融公庫融資について,地元地方公共団体と協力して,貸付利率の無利子化を実施した。4月6日,玉沢農林水産大臣が現地を視察するとともに,5月1日,金田農林水産政務次官を現地に派遣した。

 通商産業省は,緊急時に備えた対応の準備等について,北海道電力や簡易ガス事業者に指示等を行った。また,北海道電力及び簡易ガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また,政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付を適用するとともに,著しい被害を受けた中小企業者等に対しては,閣議決定により,貸付利率を財投金利と同水準まで引き下げる措置を実施した。さらに,特に著しい被害を受けた中小企業者については,地元地方公共団体と協力して利子補給を行い,結果的に無利子となる措置を実施した。4月9日,深谷通商産業大臣が現地を視察した。

 運輸省は,鉄道事業者,航空関係者,観光関係団体に対し必要な注意喚起を行い,安全確保に努めるとともに,自動車検査証の有効期間の延長等の避難者への生活支援を実施した。また,観光振興対策として,北海道が行う観光キャンペーンへの支援など,運輸関係事業者や旅行業者等に対し必要な協力要請等を行った。3月31日,4月8日,5月1日及び6月30日に二階運輸大臣が現地を視察した。また,7月8日,森田運輸大臣が現地を視察した。3月30日及び4月10日,鈴木運輸政務次官を現地に派遣した。

 海上保安庁は,周辺漁協等に対する注意喚起や周辺海域の航行自粛要請を行い,これらを航行警報にて周知するとともに,有珠山噴火災害対策参考図を作成し,防災関係機関に最新情報を提供した。また,巡視船艇,航空機,救難チーム等を派遣し,住民や物資の輸送,ホタテ管理作業時の警戒等の支援を行った(人員派遣:最大時約500人,延べ約47,500人,ヘリコプター派遣数:最大時10機,延べ184機,巡視船艇派遣:最大時11隻,延べ397隻)。

 気象庁は,緊急火山情報や臨時火山情報を適宜・適切に発表するとともに,火山噴火予知連絡会有珠山部会を随時開催し,火山活動を総合的に評価し情報提供を行った。また,火山機動観測班を急派し,大学,北海道開発局等と連携を図りながら監視体制等を強化した。さらに,警報を含む気象情報を適時に発表し,大雨や融雪に伴う土砂災害等に十分に警戒するよう呼びかけた。

 郵政省では,電気通信事業者等に対し重要通信の確保等について要請した。また,4月1日から5月28日まで衛星通信設備によりオンラインサービスが可能な移動郵便局(スペースポスト号)を避難所へ派遣した。さらに,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。4月16日,八代郵政大臣が現地を視察した。5月8日,虻田町に対し,臨時災害対策用FM放送局を免許した。

 NTTは,災害用伝言ダイヤルを運用するとともに,避難所等に特設公衆電話を設置した。また電話料金の支払い期限の延長や電話が使用できない期間の基本料金等を免除した。

 NHKは,被害が甚大な放送受信契約者に対し,放送受信料を免除した。

 労働省は,雇用・労働問題に適切に対処するため,雇用・労働に関する相談窓口を設置したほか,一時的な離職を余儀なくされている被災者に対して雇用保険の基本手当を支給する措置を行った。また,緊急地域雇用特別交付金事業を活用して,雇用の創出を図るとともに,休業等を実施する事業主を雇用調整助成金の支給対象とし,雇用の維持を図った。さらに,災害により離職を余儀なくされた方(45歳以上)を特定求職者雇用開発助成金の支給対象労働者とした。

 建設省は,観測・監視機器等の増設や災害対策用ヘリコプターの派遣等により観測監視体制を強化したほか,配置した衛星通信車及びマイクロ回線を利用し,現地画像を本省,国土庁及び官邸まで配信した。再避難の円滑化のため,道央自動車道に緊急避難路等を設置するとともに,住民の生活機能の確保の観点から,国道230号の機能を代替している道道を国道230号に編入し,整備を行った。インターネットの道路局ホームページにおいて,道路管理者の対応状況,道路の被害状況,道路法等に基づく道路の規制状況や迂回路情報,現地の写真等災害に関する道路の情報を迅速に提供した。また,有珠山の噴火後ただちに土砂災害対策専門家チームを派遣したほか,建設省等で構成する土砂災害対策検討委員会を開催し,泥流警戒基準雨量及び警戒区域等を設定した。泥流対策,避難路確保等早急な対策が必要な箇所については,各種災害復旧事業及び災害関連緊急砂防事業を無人化施工も取り入れながら緊急に対策を実施した。さらに住宅金融公庫融資を返済中の被災者に対し,返済金の払込みの据え置き,返済期間の延長等の措置を実施した。3月31日から4月1日及び6月6日から7日にかけて,中山建設大臣が現地を視察した。

 自治省では,被災納税者の地方税の減免措置等について地方公共団体に対し通知したほか,伊達市,虻田町,壮瞥町に対して6月に定例交付すべき普通交付税の一部1,030百万円を4月18日に繰り上げて交付し,4月28日には多数の避難住民の受け入れ等を行った被災地周辺4市町村に対しても,6月に定例交付すべき普通交付税の一部1,227百万円を繰り上げて交付した。さらに,虻田町については多数の住民が避難生活を余儀なくされている状況等に鑑み,9月に定例交付すべき普通交付税の一部221百万円を6月28日に繰り上げて交付した。また,4月23日には保利自治大臣が被災地を視察した。

 消防庁は,消防・防災ヘリ,緊急消防援助隊等の派遣を行った。地元消防機関ではこれらの応援を受けながら,救急隊の避難所への配置や巡回,避難住民の短時間・一時帰宅支援等を実施した(人員派遣:最大時58人,延べ2,284人,ヘリコプター派遣:最大時2機,延べ14機)。

 ボランティア活動については,北海道の各社会福祉協議会,日本赤十字社,ボランティア団体等により設置された「北海道有珠山福祉救援ボランティア活動対策本部」及び「北海道有珠山福祉救援ボランティア活動現地対策本部」が,全国から参加するボランティアの受け入れ,役割の付与等を行い,ボランティア活動全体をコーディネートする形で進められた。延べ約1万人が参加し,避難所運営のサポート,物資搬送・引越しの手伝い,リクリエーション活動等様々な活動に携わり,被災者を支援した。

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