平成12年版防災白書の概要について

平成
国土庁防災局

「防災に関してとった措置の概況」

第1部 災害の状況と対策

第1章 我が国の災害の状況

【災害を受けやすい日本の国土と自然災害の状況】
  • ○ 我が国では、毎年、自然災害により多くの尊い人命や財産が失われているが、昭和30年代以降、死者・行方不明者の数は、長期的に見れば逓減傾向にある。災害原因別死者・行方不明者数は、地震により大きな死者・行方不明者を出した平成5年、7年を除くと、土砂災害をはじめとした風水害によるものが、大きな割合を占めている。
【平成11年度に発生した主要な災害とその対策】
  • ○ 平成11年度は、6月23日から7月3日までの梅雨前線豪雨により西日本を中心に大きな被害が生じたほか、9月24日に上陸した台風第18号では高潮災害により激甚な被害が発生した。平成11年には、時間雨量100mm以上の豪雨が10回観測されており、平年値を大きく上回っている。
  • ○ また、9月30日には、東海村ウラン加工施設において、我が国初めての臨界事故が発生した。
  • ○ さらに、平成12年3月31日には、有珠山が噴火した。これに先立ち、3月27日午前から火山性の地震が次第に増加したこと等を受け、28日中に周辺1市3町で災害対策本部が設置された。29日午後1時から順次、危険区域の住民に避難勧告・避難指示が出され、噴火前の30日までにほぼ全員の避難が確認されていた。

  政府は、噴火した31日、直ちに有珠山噴火非常災害対策本部(本部長:国土庁長官)及び同現地対策本部(本部長:国土総括政務次官)を設置して、その対策に取り組んでいる。

第2章 我が国の災害対策の推進状況

  阪神・淡路大震災後、政府は、その教訓を踏まえ、初動体制の整備、法制度、防災計画等の改善、防災無線網の充実強化、災害観測・予測システムの強化・整備、被災者に対する生活支援等、様々な面で防災施策の改善を図ってきた。
防災対策の取組みは、次のとおり。

【東海地震対策】
  • ○ 社会情勢の変化や、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地震防災対策強化地域に係る「地震防災基本計画」を20年ぶりに修正した。
  • ○ 平成12年3月、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(地震財特法)」が5年間延長された(平成17年3月31日まで)。
【風水害対策】
  • ○ 平成11年度の災害を踏まえ、
    • ・関係4省庁からなる「地下空間洪水対策研究会」が、緊急対策を取りまとめた(平成11年8月)。
    • ・中央防災会議局員会議において、豪雨災害対策のあり方について検討し、提言をとりまとめた(平成12年4月)。
    • ・「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が制定された(平成12年4月)。
    • ・関係7省庁は、「高潮災害対策の強化に関する連絡会議」及び「高潮防災情報等のあり方研究会」を設置し、関係省庁の連携強化などの対策を検討している。
【事故災害対策】
  • ○ 原子力災害対策
    • ・茨城県東海村の原子力事故を受け、加工事業者についても定期検査を実施すること等を内容とする「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律」及び異常事象が発生した場合の事業者の通報義務や国・地方公共団体の体制整備等を内容とする「原子力災害対策特別措置法」が制定された(平成11年12月)。
    • ・これを受け、防災基本計画原子力災害対策編の見直しを行っている。
  • ○ 鉄道事故対策
    • ・平成11年6月以降、山陽新幹線においてトンネルコンクリート剥落事故が続いたため、トンネル安全問題検討会を開催して、報告をとりまとめた。
    • ・平成12年3月、帝都高速度交通営団日比谷線の列車脱線・衝突事故の発生に対応し、事故調査検討会を立ち上げ、原因究明に向けて検討している。
【災害復旧・復興対策】
  • ○ 激甚災害
    • ・公共土木施設災害復旧事業等に係る激甚災害(本激)の指定については、昭和37年の制度発足当初は毎年1〜2件指定されていたが、昭和59年以降は阪神・淡路大震災1件のみの指定に止まっている。

  このため、最近の地方自治体の財政の逼迫状況等を踏まえ、被災した地方自治体の財政負担の緩和を図るとともに、被災地域の円滑かつ早期の復旧を図ることを目的として、公共土木施設等に大規模な被害が生じた災害については、これを適切に激甚災害に指定できるよう激甚災害指定基準等を改正した(平成12年3月)。
 指定基準を最大で現行の8分の1まで引き下げることとしており、新しい指定基準等は、平成12年1月1日以降に発生した災害から適用される。

  • ○ 被災者生活再建支援法
    • ・同法による制度の運用が平成

  11年4月から開始され、自然災害により生活基盤に著しい被害を受け、経済的理由等により自立して生活を再建することが困難な被災者に対しては、最高100万円の被災者生活再建支援金が支給されている。

第3章 阪神・淡路大震災の災害復興対策

【復興に向けての取組み】
  • ○ 阪神・淡路大震災の被災地の復興を目指して、政府は、「阪神・淡路復興対策本部」を中心に、地元地方公共団体と密接な連携の下、被災者の住宅再建確保対策、生活再建支援対策、各種インフラの復旧対策、産業の復興対策、市街地の復興対策等に取り組んできた。
  • ○ 平成11年度(第二次補正予算)までに、阪神・淡路大震災関係経費として、総額5兆200億円の国費が予算措置されている。
  • ○ 特に、4万戸を上回る公営住宅の確保をはじめ恒久住宅の整備が進むにつれて、最大時に約4万8,000世帯が入居していた応急仮設住宅の入居戸数は減少し、平成12年1月14日にゼロとなった。
  • ○ 「阪神・淡路復興対策本部」の設置期限満了(平成12年2月)に伴い、政府は、被災地の復興に残された課題に取り組むため、「阪神・淡路復興関係省庁連絡会議」を設置した。
【震災の教訓を踏まえた対策】
  • ○ 災害に強いまちづくり
    •  ・公共施設に新しい耐震基準を設定した。
    •  ・「建築物の耐震改修の促進に関する法律」を制定した(平成7年)。
    •  ・「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」を制定した(平成9  年)。」
  • ○ 迅速な災害応急対策への備え(総合的な緊急即応体制の整備など応急対策への備え)
    •  ・市町村から内閣総理大臣への直接報告など初期情報の収集・連絡体制を整備した。
    •  ・被害の早期評価システムを整備した。
    •  ・現地対策本部を法定化するなど総合的な緊急即応体制を整備した。
    •  ・初動・応急対策のため実働部隊や住民が参加した防災訓練の実施を促進している。
  • ○ 速やかな復旧・復興に向けた対応
    •  ・被災地の円滑な復旧を図るため激甚災害指定基準を緩和した。
    •  ・生活の立ち上がりを支援する「被災者生活再建支援法」を制定した(平成10年)。
  • ○ 災害に関する科学技術研究の活用
    •  ・地震調査研究推進本部を設置し、98の活断層について評価を進めている。

第4章 国民の防災活動

  • ○ 災害発生時に、初動応急対策を迅速かつ的確に実施する上では、消防、警察、自衛隊等の救急・救助活動に加えて、消防団・水防団、自主防災組織、ボランティア、企業などの防災活動が極めて重大な役割を果たす。
  • ○ 自主防災組織の組織率には、地域によって大きな差が見られる。ボランティア活動の協力・支援の取組みについては、各地で様々な展開がなされている。
  • ○ 企業による防災活動への取組みは、企業規模によって差がある。今後、ガイドライン・マニュアル等の作成や情報交換の場の設置等を積極的に推進するとともに、企業防災に関する情報提供を図る必要がある。さらに、地域防災活動への積極的参加を呼びかけるなど、企業防災のさらなる推進に努めることが重要である。

第5章 地域防災力の強化に向けて−風水害を事例として(特集)

  自然災害多発国であるわが国では、災害時に相互扶助するコミュニティ組織を形成するなど、各自の災害対応力と地域の繋がりを醸成してきた。しかし、戦後の国土保全事業をはじめとした防災行政が進展する中、行政への過剰期待・依存、災害体験の減少から、個々人の「自分の身は自分で守る」という基本的な認識が薄れ、地域の災害対応力が低下してきた面があると認識される。

【国土保全事業の効果とソフト施策の充実・活用】
  • ○ 洪水被害面積を大幅に減少させるなど国土保全事業は国土の安全性の向上に高い効果を発揮している。
  • ○ 一方、政令指定都市などの都市圏を中心に、依然として急傾斜地への住宅立地が進んでいる。
  • ○ 土砂災害危険箇所数は一定の割合で増加傾向にあるが、事業の整備率は横ばい状態にある。国土保全事業に対する重点化・効率化の要請もかんがみ、今後は、国土保全事業と併せて、危険箇所の開発制限と立地規制、危険箇所からの移転、警戒避難体制の整備確立などのソフト施策の一層の充実と活用が必要である。
【的確な避難誘導の重要性とその実現に向けた平常時の行政の備え】
  • ○ 適切かつ迅速な警戒情報の提供と避難誘導は、防災対策の重要な柱となる。特に、適切な時期に的確な避難勧告・指示を発令することが大切である。そのため、自治体は、平常時から、地域特性を斟酌しつつ発令の客観的指標や情報収集伝達体制を整備しておく必要がある。
【平常時からの住民への危険情報の周知】
  • ○ 水害や土砂災害に対する避難勧告が発令されても即座に避難を開始しない住民が多い(第3図参照 避難勧告への対応)。行政による避難誘導の実効性を上げるためには、住民の「自分の身は自分で守る」という主体的な防災意識が不可欠である。
  • ○ 主体的な防災意識の促進には、危険箇所等の危険情報やおのずから存在する行政対応の限界を、平常時から住民に周知することが有効である。
【行政・住民・コミュニティ・企業の連携による「地域防災力」の強化】
  • ○ 防災リーダーの育成、住民と行政の一体的な防災訓練の実施など、地域単位での行政、住民、コミュニティ、企業の連携により、地域全体の防災力、すなわち「地域防災力」を強化する施策が重要である。

第6章 世界の自然災害と国際防災協力

  • ○ 1990年代は、1992年の米国南部のハリケーン・アンドリューや、1995年の阪神・淡路大震災など、先進国を大きな災害がみまったため、直接被害額は約6,840億ドルに上っている。
  • ○ 近年の自然災害は、風水害によるものが多く、特にアジア地域で大きな被害をもたらしている。
  • ○ また、我が国は、以下のとおり積極的に国際防災協力に取り組んでいる。
    • ・被災国・地域に対し、緊急援助隊の派遣や救援物資の供与を行っている。1999年には、トルコ、台湾などに対して行った。
    • ・国連の「国際防災の10年(1990年代)」や、これを引き継いだ「国際防災戦略(2000年以降)」の活動を積極的に支援している。1999年12月には、「国際防災の10年」記念シンポジウムを東京で開催した。
    • ・アジア地域における防災協力を推進するため、1998年7月、兵庫県神戸市にアジア防災センターを開設し、情報ネットワーク及び人的ネットワークの構築を進めている。

第2部 平成10年度において防災に関してとった措置の概況

  • ○ 平成10年度において各省庁は、予算額約5兆5,000億円をもって科学技術の研究、災害予防、国土保全、災害復旧等の防災に関する具体的措置を実施している。

「平成12年度において実施すべき防災に関する計画」

  • ○ 平成12年度において各省庁は、予算額約3兆3,000億円をもって科学技術の研究、災害予防、国土保全、災害復旧等の防災に関する具体的措置を講じる予定である。
連絡先
国土庁防災局防災調整課 轟木
TEL 03−3593−3311 内線 7253,7254

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