平成11年度防災白書の概要について

平成11年度防災白書の概要について

平成11年5月

国土庁防災局



「防災に関してとった措置の概況」

第1部 災害の状況と対策

第1章 我が国の災害の状況
 <災害を受けやすい日本の国土と自然災害の状況>
○ 我が国は、その位置、地形、地質、気象などの自然条件から、地震、台風、豪雨、火山噴火などによる災害が発生しやすい国土となっている。
○ 昭和30年代後半以降、人的被害は長期的には逓減傾向にあるものの、平成に入っても雲仙岳噴火災害、北海道南西沖地震災害、平成5年8月豪雨災害、阪神・淡路大震災等を始め災害により多くの尊い人命が奪われるとともに、施設等への被害額も1兆円を超える年が5回に達するなど、高水準で推移している。
 <平成10年度に発生した主要な災害とその対策>
○ 平成10年度は前線や台風の影響を受けた未曾有の豪雨などにより、各地で甚大な風水害に見舞われた。
 これに対して、総理大臣及び関係閣僚並びに政府調査団の被災現地視察、消防・警察・自衛隊等による迅速な救助活動の実施、災害救助法の適用、住宅被災者に対する被災者生活再建支援金支給、災害復旧貸付及び災害復旧事業の実施、激甚災害の指定等、政府として必要な対策を実施した。
第2章 我が国の災害対策の推進状況

 我が国は、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、これまで災害対策基本法の改正、防災基本計画の改訂、初動及び応急対応体制の強化、行政機関相互及び官邸への的確な情報伝達を図るためのハード・ソフト両面にわたるシステム整備、災害予測・観測システムの強化、国土保全事業の推進等防災施策の着実な整備、拡充を図ってきた。
 ☆平成10年度に充実強化した施策は次のとおり。

 <被災者生活再建支援等>
○ 平成10年5月に「被災者生活再建支援法」が成立し、平成11年度から経済的理由等により自立生活再建が困難な自然災害被災者に対し支援金を支給する制度の運用を開始した。なお、平成10年8月末豪雨災害等の被災者に対しても同様の支援を行っている。
○ 被災者の住宅再建支援の在り方について総合的な見地から検討を行うための検討委員会を国土庁に設置した。
 <震災対策の推進>
○ 首都圏(南関東地域)の直下型地震対策推進のため「大綱」及び「応急対策活動要領」を平成10年6月に改訂、広域医療搬送など実践的なアクションプランを策定した。今後、広域輸送活動等の課題についても策定する。
○ また、地震防災緊急事業五箇年計画に基づき、避難地、避難路等の整備、小中学校の改築補強等を進めるとともに、東海地震対策についても引き続き推進している。
○ 地震被害の早期評価と迅速な応急対策の遂行を図るため、地震防災情報システム(DIS)の充実整備を図るとともに、パソコン上で自動的に地震被害想定を行うシステムを開発し、インターネットで公開した。
○ 平成11年度から津波の予報区を従来の18から66に細分化するとともに津波の高さを具体的数値として発表するなどより詳細な津波予報の運用を開始している。
 <風水害対策の推進>
○ 平成10年夏の災害を踏まえ、被災箇所の上下流を一体的に整備する河川災害復旧等関連緊急事業制度を創設し平成11年度から8河川で実施する予定。
○ また、救護施設の入所者が死亡した土石流災害を契機に緊急点検を実施した結果、全国で約13万9千箇所の災害弱者関連施設のうち約14%が土砂災害危険箇所等に立地していることが判明、関係省庁は国土保全事業の推進、施設管理者への情報提供、地域と一体となった警戒避難体制の確立などを内容とする共同通達を都道府県知事に発出するなど、災害弱者施設等の防災対策の強化を実施した。
 <原子力災害対策の推進>
○ 原子力安全委員会の専門部会において、原子力防災の実効性を一層向上させる観点から総合的、体系的視点に立った検討を行っている。
 <その他の災害対策>
○ 内閣の危機管理機能強化
 内閣官房における危機管理機能を強化するため、内閣危機管理監を設置した。また、災害の類型別に内閣官房としての対処マニュアルを整備した。
○ コンピュータ西暦2000年問題
 国及び地方公共団体は、国民生活等に密接に関連する優先度の高いシス テムについては、平成11年6月末までに模擬テストを実施するよう努める とともに、中小企業に対し金融・税制など必要な助成措置を実施している。
第3章 阪神・淡路大震災の災害復興対策
○ 阪神・淡路大震災から4年が経過したが、政府、地方公共団体、地元住民等の一体となった取組により、本格的な復興段階を迎え、恒久住宅の確保、生活再建支援、産業の復興、市街地の復興に重点を置いた復興対策がとられている。
○ 住宅の確保については、計画された災害復興公営住宅等の約90%が完成した。また、生活再建支援については、地元地方公共団体が復興基金を活用して被災者自立支援金の支給を開始している。
○ 一方、公営貸工場である復興支援工場の建設、操業開始や災害復旧融資実施期間の1年間延長などの産業復興対策が図られているが、復興需要の一段落や景気の低迷に伴い被災地の経済は総合的にみて引き続き厳しい状況である。
○ 阪神・淡路地域の復興関係施策に重点的に予算配分を行っており、平成6年度から平成10年度までに総額約4兆7,400億円(国費)の予算措置がなされた。
第4章 防災と情報(特集)

 災害の未然防止、被害の軽減を図る上で、災害に関する正確な情報に基づき適切な行動をとることが非常に重要であることに鑑み、行政機関から国民に提供される防災情報とその伝達システムをより一層充実していくため、以下の課題について報告している。

 <時々刻々と変化する情報ニーズに対応した情報の的確な提供>
○ 平常時において住民は、居住地域等における身近な危険箇所の状況を正しく認識するとともに、災害に関する正しい知識、技術を取得しておくことが重要である。
○ このため、行政機関はあらゆる機会、手段を通じて住民に対し危険箇所についての情報や注意を要する気象情報、地殻の変動などの情報(例えば、東海地域については、「解説情報」「観測情報」として公表)を積極的に提供していくとともに、防災訓練、イベント等を通じた防災知識の普及を一層進めていくことが必要である。
○ 災害発生のおそれが強くなったときに、住民に対しその変化する状況を 的確に伝達するため、国及び地方公共団体は、引き続き観測網・観測体制の整備強化を図るとともに、住民に対しわかり易い説明を行うことが必要である。
○ 住民は、市町村等から避難勧告が出されたときはもとより、自ら危険を察知したときは自主的に避難する等の対応が必要である。
○ 災害が発生した後に必要な情報は特に時間とともに変化することに鑑み、被災者等のニーズに応じきめ細やかな情報提供が求められる。
○ 電話の輻輳を防ぐためには、あらかじめ家族や職場で安否の確認方法を決めておくことが重要。また、災害用伝言ダイヤル(171)の活用も望まれる。
 <情報提供に際してのマスメディアとの連携>
○ 被災者や国民に対する災害情報の伝達に当たっては報道機関の役割が非常に大きいので、行政機関やライフライン事業者はマスメディアとの連携を一層深めていくことが重要である。
○ 時と場所を選ばずに起きる災害に対しては、防災週間等の特定の時期だけではなく、定期的・継続的に防災に関する番組、記事を組むことが望まれる。
 <情報技術の発展等に対応した情報提供の工夫>
○ よりタイムリーかつきめの細かな情報の収集、伝達を図るため、インターネット、ポケットベルネットワーク、衛星を活用した新しい情報技術を積極的に活用していくことが必要である。
○ 住民への情報伝達については、伝達手段の特性、地域形態、災害の種類等により、長所・短所があるため、多様な伝達手段を組み合わせながら確 実に住民に情報を伝達するよう、さらに努力していくことが必要である。また、いわゆる災害弱者に対しては特別な配慮を払うことが重要である。
 <災害に強い情報システムの構築>
○ 行政機関においては、災害時においても情報伝達手段が確保できるよう 衛星通信系回線の整備などによる回線の多重化や非常用電源の確保等、計画的な整備を図っているが、民間経済主体においても、災害時を想定した ハード、ソフトの両面での情報システム強化を図っていくことが必要である。
第5章 国民の防災活動
○ 地域防災上重要な役割を果たしている消防団及び水防団については、団員数の減少、高齢化、サラリーマン化の進展に対処して、住民に対する参加促進、女性消防団員の活用、施設・設備の充実強化、処遇の改善等の対 策が講じられている。
○ また、自主防災組織(全国8万7,000余)やボランティア団体の結成、活動に対して様々な助成等の環境整備が行われるようになってきている。 ○ 企業の防災に対する備えは、阪神・淡路大震災を経ても進捗がみられていないとともに規模別に大きな格差がみられる状況にあり、防災対策に関するガイドライン、マニュアル等の作成や金融・税制面での支援措置、保険の活用などを積極的に推進していくことが必要である。
第6章 世界の自然災害と国際防災協力
 <世界の自然災害>
○ この30年間の世界の災害発生件数のうち、約4割がアジアである。
○ 1998年から1999年にかけて2度にわたるアフガニスタンの地震(死者: 2,323人/2月、4,700人/5月)、中国の洪水(死者:3,656人)、バングラデシュの洪水(死者:約1,000人)、パプアニューギニアの津波(死者: 2,100人)、中米地域を直撃したハリケーン「ミッチ」(死者:9,032人)、コロンビアの地震(死者:1,171人)などの災害により多くの人命、財産を喪失している。
 <世界に貢献する我が国の国際防災協力>
○ 1998年のホンジュラスのハリケーン災害に対しては、初めて自衛隊の部 隊を派遣し、医療・防疫の援助活動を実施した。また、1999年のコロンビ アの地震には警察・消防等で構成される救助チーム及び医療チームを派遣する等、国際緊急援助活動に貢献した。
○ このほか、被災国に対する有償・無償資金協力、技術協力などを行うとともに、アジア各国の防災対策の推進を図るため、1998年7月、兵庫県神戸市にアジア防災センター(加盟国:22カ国)を開設し、1999年2月に 専門家会議を開催するなど、各国の災害、防災体制、制度、科学技術等に関する情報の交流活動を開始した。
第2部 平成9年度において防災に関してとった措置の概況

 平成9年度において各省庁は、予算額約4兆750億円(国費)をもって科学技術の研究、災害予防、国土保全、災害復旧等の防災に関する具体的措置を実施した。


「平成11年度において実施すべき防災に関する計画」

 平成11年度において各省庁は、予算額約3兆3,000億円をもって科学技術の研究、災害予防、国土保全、災害復旧等の防災に関する具体的措置を講じる予定である。


連絡先
 国土庁防災局防災調整課 田中
 TEL 03(3593)3311 内線 7253,7254

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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