平成10年版防災白書の概要について

平成10年5月

国土庁防災局

「防災に関してとった措置の概況」

第1部災害の状況と対策

第1章我が国の災害の状況

 我が国は、その気象、地形・地質的特性から、地震、火山、台風、豪雨などの自然災害に対し脆弱であり、毎年のように大きな被害が発生。近年の主な自然災害の状況、災害別の死者・行方不明者の推移や施設被害等からも、我が国における防災対策の充実・強化は緊急かつ重要な課題であり、今後とも一層の推進が必要。

第2章我が国の災害対策の現況と課題

<阪神・淡路大震災後の防災施策の新たな展開>
○ 防災基本計画の改訂
震災対策、風水害対策等、自然災害対策に関する防災基本計画の抜本的改訂に加え、平成9年6月に、海上災害対策など8つの事故災害対策を防災基本計画に新たに追加。
○ 災害対策基本法の改正
2度にわたる法改正により、緊急災害対策本部の設置要件の緩和及び組織の強化等を実施。
○ 首都直下型等大規模地震発生時の内閣の初動体制の整備
内閣総理大臣の職務代行、参集場所等について閣僚懇談会で申し合わせ。
○ 情報収集体制の整備
中央防災無線網の拡充、首都直下型地震対応衛星地球局の整備、ヘリTV画像情報伝達体制の整備、地震防災情報システム(DIS)の整備など、災害発生時の情報収集体制を整備。
<震災対策の推進>
○ 地震防災対策特別措置法に基づく取り組み
地震調査研究推進本部を設置し、政府の関係機関が密接な連携協力を行いながら地震に関する調査研究を推進。
都道府県は地震防災緊急事業五箇年計画を作成、同計画に基づく事業を推進。
○ 地震防災情報システム等の整備
国土庁において「地震防災情報システム(DIS)」の整備を行っているのをはじめ(地震被害早期評価システムが既稼働、応急対策支援システムを開発中)、即時情報を活用するためのシステム等を各機関で整備。
○ 都市防災化の推進
耐震性の向上
耐震基準の見直しや耐震性の十分でない既存施設の耐震改修の推進を通じ、構造物・施設等の耐震性を向上。また、現行耐震基準に適合しない一般の建築物の耐震改修を促進。
都市の不燃化等の推進
平成9年11月に「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」を施行。防災上危険な状況にある密集市街地整備を総合的に推進。
防災拠点の整備、避難地・避難路の整備。
○ 大都市震災対策の見直しに向けた取り組み
大都市特有の課題に対応する震災対策のあり方を調査するため、平成10年1月より、中央防災会議に大都市震災対策専門委員会を新たに設置し検討を開始。その成果を踏まえ、今後、南関東地域をはじめ大都市の地震対策の見直しを実施する予定。
<風水害対策等の推進>
  • ○ 風水害対策では、被害を未然に防止し又は軽減する観点から、①気象観測の充実と迅速な予報・警報等の発表、②治山・治水対策の推進、③土砂災害対策の推進等が重要な課題であり、これらについての施策を計画的に推進。
  • ○ 火山災害対策では、①火山観測研究体制の整備、 ②活動火山対策特別措置法等に基づく対策等を推進。
<事故災害対策の推進>

 防災基本計画に新たに8つの事故災害対策を追加し、海上災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策等を推進。なお、海上災害対策については、ナホトカ号海難・流出油災害の教訓を踏まえ、平成9年12月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を閣議決定により改定し、油汚染事件への準備や対応体制を充実強化。

第3章平成9年度に発生した主要な災害とその対策

 平成9年度に発生した主要な災害は以下のとおりであり、これに対し激甚災害の指定等政府として必要な対策を実施。

<地 震>
  • ○ 鹿児島県薩摩地方を震源とする地震(平成9年4月、5月)
  • ○ 山口県北部を震源とする地震(平成9年6月)
<台風、豪雨など>
○ 平成9年7月梅雨前線豪雨災害(平成9年7月)
特に、鹿児島県出水市針原地区の土石流災害では21人が死亡。
○ 台風第19号(平成9年9月)
○ 秋田県鹿角市地すべり及び土石流災害(平成9年5月)
<ダイヤモンドグレース号油流出事故>

 平成9年7月2日に、東京湾において、ダイヤモンドグレース号油流出事故発生。
 政府は、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部(本部長:運輸大臣)を設置し、同本部体制の下、油の回収作業等を実施。

第4章阪神・淡路大震災の災害復興対策

<住宅対策>
○ 公営住宅の確保等
被災者の生活再建の前提となる住宅確保対策について、災害復興公営住宅等の全供給計画戸数である3万8,600戸の整備等を推進。
○ 公営住宅家賃負担の軽減
(神戸市の40㎡の公営住宅の場合、所得 100万円以下の夫婦世帯で 家賃6,000円程度)
<生活支援対策>
○ 「生活再建支援給付金」の支給等
住家全壊等の高齢・要援護の非課税世帯で恒久住宅に移転した世帯に対し、月額1万5千円から2万5千円を5年間支給。平成9年8月から支給開始。
この他、被災者の生活再建支援に資する施策として、阪神・淡路大震災復興基金において、「被災中高年恒久住宅自立支援金」が平成9年10月に創設。同年12月から受付開始。
○ 「生活復興資金貸付金」の充実
兵庫県が実施している生活復興のために必要な資金の貸付制度について、その貸付限度額を 100万円から 300万円に引き上げ。平成8年12月から受付開始。
<産業復興対策>
○ 産業復興支援充実策
被災中小企業に対する融資制度の特例等の延長・拡充、地場産業等復興の遅れている事業者に対するきめ細かな活性化対策、新産業の形成等のための施策を主な柱に、県・市が支援策をとりまとめ。
○ 新産業構造形成プロジェクト
次の時代の被災地を支える新しい産業の育成を図るため、ワールドパールセンター事業等を復興特定事業に選定し、政府としても必要な支援を実施。
<予算措置>

 平成6年度から平成9年度までに、阪神・淡路大震災関係経費として、総額約4兆3,600 億円を国費で予算措置。
政府としては、復興に向けた取り組みに対し、地元地方公共団体等と緊密な連携を図りながら、全力を挙げて支援。

第5章「防災に関する世論調査」(平成9年9月:総理府)と今後の防災対策の課題

 阪神・淡路大震災以後、国民の防災意識は、どのように変化してきているのか、平成9年9月に総理府が実施した「防災に関する世論調査」を中心に、過去の世論調査結果との比較を含め分析。

○ 阪神・淡路大震災以降、薄れつつある大地震への危機意識
阪神・淡路大震災に対して非常に関心のある人の割合が減少 (H7:59.6%→H9:52.2%)
大地震に対する危機意識が低下
大地震が起こると思う  (H7:38.1%→H9:36.1%)
大地震が起こらないと思う(H7:43.9%→H9:47.7%)
大地震に備え何らかの対策をとっている人の割合もこの2年間ほとんど増えていない (H3:60.2%→H7:73.7%→H9:74.8%)
○ 地域による災害への認識の相違
危険と感じている災害として、地震を挙げた人の割合は、関東、近畿で高く、台風を挙げた人の割合は、九州、四国で高く、豪雨を挙げた人の割合は、九州で高い。
○ 世代による防災意識の違い
20歳代の若者は他の世代に比べ防災意識が低く、高齢者の防災意識も内容的には十分とはいえない。これらの世代に対する重点的な普及啓発活動が必要。
○ 災害時のボランティア活動などに対する意識の変化
阪神・淡路大震災やナホトカ号油流出事故におけるボランティアの活躍などを契機として、ボランティア活動への参加意識が一層高まってきている。

第6章国民の防災活動

 阪神・淡路大震災やナホトカ号海難・流出油事故における活躍からも明らかなとおり、発災時に応急対策を迅速かつ的確に実施する上で、行政機関による活動のみならず、消防団・水防団、自主防災組織、ボランティア、さらには企業など、国民一人ひとりを主体とする防災活動が、重要な役割を担っている。

<消防団・水防団>
  • ○ 消防の常備化が進展している今日においても消防団が地域の消防防災に果たす役割は依然として極めて重要。また、的確かつ迅速な行動が最大限求められる水防活動において、水防団は消防機関とともに水防管理者の所轄のもとに水防活動を実施。消防団、水防団ともに、今後ともその充実強化が必要。
  • ○ 阪神・淡路大震災においては、地域における自主防災活動の重要性を改めて認識。このような自主的な防災活動が組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、防災に対する備えを充実することが必要。
  • ○ 地域住民の自主防災活動への積極的な参加の促進、自主防災活動の環境整備を図り、自主防災活動の充実強化を推進していくことが必要。
<防災とボランティア>
  • ○ 災害時において、柔軟かつ機動的なボランティアの役割が不可欠であり、実際、阪神・淡路大震災、ナホトカ号海難・油流出事故においても、ボランティアが活躍。
  • ○ 今後とも、ボランティアの活動環境の整備、「防災とボランティア週間」をはじめとする普及啓発活動の推進等が必要。
<企業防災>
  • ○ 企業は、災害時に企業が果たす役割を十分認識し、①顧客、従業員の安全確保、②経済活動の維持、③地域住民の防災活動への貢献に努めることが必要。
  • ○ 国、地方公共団体等においても、企業防災マニュアルの作成、企業の防災意識の高揚等の企業防災促進に向けた取り組みが必要。

第7章世界の自然災害と国際防災協力

  • ○ 「国際防災の10年」において我が国も積極的に国際防災協力を推進。
  • ○ アジア地域における多国間防災協力を推進するための拠点となる「アジア防災センター」については、平成9年6月のアジア防災協力推進会合を受けて、平成10年度予算に関連経費として1億3千万円を計上し、平成10年夏頃を目途に兵庫県神戸市に設けるべく準備中。
  • ○ 日米の地震防災協力の推進を図るため、2回にわたる「日米地震シンポジウム」の成果を踏まえ、今後は、ハイレベルフォーラム等を通じて、世界の地震防災対策の最先端にある日米両国の間で、地震被害の軽減について相互に協力活動を積極的に推進。

第2部平成8年度において防災に関してとった措置の概況

平成8年度において各省庁のとった科学技術の研究、災害予防、国土保全、災害復旧等の防災に関する具体的措置を報告。

「平成10年度において実施すべき防災に関する計画」

 平成10年度において各省庁は、予算額約3兆1,700億円をもって、科学技術の研究、災害予防、国土保全、災害復旧など防災に関する措置を講じることとしている。


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