第1回記者発表


記者発表資料
 
中央防災会議「今後の地震対策のあり方に関する専門調査会」(第1回)議事概要について
 
中央防災会議事務局(内閣府(防災担当))
   
1. 専門調査会の概要
  日時: 平成13年9月17日(月)10:00〜12:00
  場所: 東京會舘(霞が関ビル35階)
  出席者: 片山座長、阿部、熊谷、齋藤、櫻井、志方、白石、白土、廣井、目黒、森下、山脇の各委員
村井防災担当大臣、松下副大臣、高橋政策統括官(防災担当)他
   
2. 議事概要
   事務局から別添資料に基づき説明があった。
 検討すべき事項、改善すべき事項等を中心にご議論をいただくこととし、各委員からは以下のような意見等が出された。なお、詳細な議事録については後日各委員の確認を経たのち、公表の予定。
 防災基本計画、防災業務計画、地域防災計画等は、「誰が」「いつ」「どのように」という、タイムスケジュール等が詳細に決められていない。具体的なマニュアルなど、次のステップを考えることが必要。
 阪神・淡路大震災の反省をふまえ、実効性、実践性を確保するためには、被災地に近い地方公共団体の防災体制や防災システムをいかにして機能的なものとしていくか検討することが必要。近県間で統一的な体制、システムも必要ではないか。
 職員の召集基準や災害対策本部の設置基準がバラバラでカウンターパートも分からない状況であり、防災体制、防災システムの標準化が必要。
 防災対策は基本的には地方自治体の仕事であるが、防災時の対応にしても被害想定にしても各地方公共団体で最善の努力をしているが、結果としてバラバラである。複数の都道府県にまたがる災害に適切に対応するため、共通したガイドラインの作成について国がリーダーシップをとる必要がある。
 阪神・淡路大震災で犠牲者を多く出した原因として、防災対策にイマジネーション能力が欠けていたことが挙げられる。発災時からの時間経過に伴って、どのような事態が起こりうるか想定ができていない。しっかりとシミュレーションを行った上で防災対策を計画立案することが必要。
 既存不適格住宅の耐震化をどのように推進するかが最大の地震防災対策の検討事項である。
 防災対策には日頃からの対策と災害時の緊急的な対策の2種類があるが、前者については、防災活動のスペース確保に何年もかかるのが現状である。また、後者についても、いざという時、防災行政機関どうしで地図の統一が図られていない、通信が通じない、ヘリ管制がきちんとできない、装備の標準化が図られていないなどの問題が浮き彫りになってきている。
 災害時には、自治体、自衛隊、消防、警察、ボランティアなど様々な応援部隊が現地に集まるが、それらの統制ができていない。責任を持って的確に判断できる人が現地で全体を指揮・調整できる仕組みを検討することが必要。
 装備の標準化についてはガス、水道について仕様の違いを克服するシステムがあるが、十分機能していない。装備の統一化にはお金がかかるので、こうした異なる基準の装備どうしをつなぎ合わせるシステムが十分に機能するよう改善を図ることが必要。
 これまでの地震防災対策の充実は、阪神・淡路大震災に引きずられ過ぎている面がある。阪神・淡路大震災も一つのケースに過ぎない。例えば、芸予地震の場合には、土曜日の昼すぎに発生して携帯電話がつながりにくかったなどの新たな問題点が明らかになった。こうした点も踏まえつつ地震対策の全体像を総合的に検討していくことが必要。
 阪神・淡路大震災の死者は、被災地域の0.1パーセントだが、視聴覚障害者で亡くなった人は、同0.6〜1.3パーセントと6倍以上にのぼる。視聴覚障害者にはラジオやサイレンなどの災害(音声)情報が伝わらない。少子高齢化を考えると、振動式ポケベルやもっと進めて「iモードとポケベルの統合された商品」がよいと考えている。阪神・淡路大震災後、地域防災計画が改正され災害弱者対策が規定されたが、文言だけで具体的な対策は何も講じられていない。
 住宅の耐震化については、アメリカでは耐震性の高い住宅が高く売れる状況。実際には個人住宅の耐震化は我が国の根強い私有財産尊重の土壌の下では難しいが、住宅の性能評価の仕組みを活用して少しづつでも促進すべきである。学校、病院等の公共施設の耐震化については、一定規模以上のものは耐震診断を義務づけ、義務を履行しない場合には氏名を公表する仕組みを検討すべき。また、耐震診断に基づき、実際に耐震化のための工事を行う場合には補助を行う仕組みを併せて導入するなど、規制と補助を適切に組み合わせることが必要。
 防災対策に地域性をどう盛り込むかが重要。例えば、平日の勤務時間中に、男性が都心に働きに出かけている地域では、その時間に災害が起こった場合には、女性と子供と高齢者で救助・救急活動を行わなければならない。このような地域でどのような防災対策を行うべきかについて、イマジネーションを働かせることが必要。
 今回のアメリカのテロ事件の教訓として、企業が正確な一次情報を提供することの重要性が浮き彫りになった。
 震災はどこまでが人災でどこまでが天災なのか、地震をどの程度コントロールできるのかといった点をはっきりさせておくことが必要。これは学問的な地震予知の問題とも絡む話であるが、こうした点を明らかにした上で初めて、国が防災対策上どの程度まで関与していくか検討することができる。
 まちづくりについては、都市計画法など土地規制のあり方を検討することが必要。国民の生命、財産を誰が主体となって守るのか。生命を守るのは国の責務であり、沿革的に防災対策は地方公共団体中心で進められてきたが、ベクトルだけでも国から地方公共団体へと向きを変えたほうがよい。内閣府に中央防災会議が置かれたこともあり、場面によっては、防災対策の中央での集約を図るという議論があってもいいのではないか。規制と補助金の関係については、規制が先で、それを間接的に補完するため補助金を使うということになる。
 被災地に近い地方公共団体で災害に対応するという考え方が大切。人命を守るのは地方自治体としても最も大事な任務。国と地方公共団体が共に責任を持つと考えの下、双方が効果的に連携するシステムを検討することが必要。
 地震予知はできないというのが阪神・淡路大震災の教訓。大きな期待は持たないほうがよい。
 文部科学省の地震調査研究推進本部で活断層型や海溝型の地震の評価が行われている。こうした学術的な評価をどう防災対策に生かすかということが抜けていることが大きな問題。学術的な研究と防災対策の検討との連携を図る体制、仕組みを検討して欲しい。まずは、阪神・淡路大震災以降、学術的な研究が地域防災計画やマニュアルの補完にどの程度活かされてきたのか、示していただきたい。
 阪神・淡路大震災では携帯電話がかなり使えた。芸予地震はインターネットが使えたが、便利と分かれば皆が使うので局所的に集中して使えなくなることも考えられる。通信手段を多様化することが必要。インターネット情報がどこまで正しいかも保証されていない。
 公衆電話をどう活用するか。今回のテロ事件ではNY市内の4000台の公衆電話を無料にしていると聞く。日本では採算ベースに合わないのでどんどん減っている。災害時の情報通信手段として公衆電話を活用できないか検討することが必要。
 学校教育のインターネット化と連携して、学校を災害時の「避難場所+連絡体制の拠点」としていくことができないか検討することが必要。
 ポケベルについてもユニバーサルサービスとしては成り立たなくなっているが、電波としては余裕がある状況。防災対策にポケベルをどのように活用していくか検討することが必要。
 防災伝言ダイヤル認知度は、鳥取県では2、3パーセント程度。これが認知されれば、通信の輻輳対策にもなる。171のシールが効果的。
 イマジネーションを喚起する教育はマスコミができる。例えば、公共放送たるNHKに、定期的に防災教育番組の放送をお願いすることが必要。
 実際に防災対応は、非専門家の集まりであるマスメディアではなく、もっと地域単位で行うべき。しかし、地域社会は崩壊しつつあるので、地域社会をどう再構築することが必要。
 土地利用規制は重要であるが、どこが危険地なのかといった情報を開示した上で規制を行うべき。
 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、電力設備の耐震化についてはしっかりできている。むしろ、停電情報など、町中での情報をどう収集し、いかに迅速に集約・発信するかが課題。また、地域情報の標準化も必要。
 災害時の緊急医療に伴い電力が必要となるなど、街中で臨時の電力需要が発生した場合、電源車の派遣を如何に効率的に行うことができるかが課題。行政には、迅速な緊急道路の確保をお願いしたい。
 規制の問題については、我が国では個人の財産権を尊重する土壌が確立されている。密集市街地では権利が複雑に設定されており、その解消には莫大な時間と手間を要する。こうした条件の下で、地震に強いまちづくりを効果的に進めるにはどうすればよいのか、土地収用法の問題も含め検討することが必要。
 ヘリの飛行についても、防災行政機関とマスコミとが輻輳するので管制をしっかり行うことが必要。
 地方分権の流れを尊重することは重要であるが、防災対策の規制、基準の統一は国が強力な公権力の下で実施すべきである。地震発生のメカニズムや起こることの蓋然性はイメージできるようになってきたので、予知可能な部分以外にも防災対策の充実は避けて通れない検討課題である。
 日頃からの準備、定期的な情報交換が大切。土地利用規制については、重要であるが難しい。
 3年前に広島での災害をきっかけに土砂災害防止法を作り、情報公開の仕組みを作った。
 NPOの活動が重要であり、役人だけの対応では不十分ということで、阪神・淡路大震災以後にNPO法を作った。防災対策において、NPOを支援する方策がないのが問題である。
 訓練ではシナリオを決めていてもトラブルが生じる。ましてや、実際の災害時は予定どおりにならないことが多い。訓練さえきちんとできないのだから、訓練を繰り返し実施すべき。訓練の方法も河川敷だけでなく、市街地での訓練を実施すべき。県と市区町村の間など、自治体どうしの連携が必要。
 行政における危機管理の人材育成が不十分であり、人材育成システムの検討が必要。
 規制の導入には社会的合意が必要であることを念頭に置いておかなければならない。
 災害教育は学校教育を中心に進めることが必要。南海地震は30年先といわれている。幼稚園を含めて長期的に教えていないといけない。人材育成については、専門家すぎてもいけない。イマジネーションを膨らます意味でも、総合的な人材育成対策が必要であり、特殊なカリキュラムが必要。
 学校で災害時に親が児童を引き取りにいく訓練を実施しているが、その日だけは、仕事を休んで15分でいける自宅に待機している。そんな意味のない訓練で満足している状況であり、改善を要する。
 
 
 
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