1. 強振動の評価のための試算


 
1. 強振動の評価のための試算
 
2.地下構造
   地下構造は、S波速度Vsに応じ、(1)Vs>3000m/s (2)500m/s<Vs<3000m/s (3)Vs<500m/sの3区分において以下のとおりに設定した。
   
   
(1)

速度構造

  1. Vs>3000m/sの速度構造
     Vs>3000m/sの層は、岩盤層に相当し、P波及びS波速度は、防災科学技術研究所での震源決定に用いられている地盤構造を参照し作成した。
        
  2. 500m/s<Vs<3000m/sの速度構造
     この範囲の速度層については、いくつかの領域で、弾性波探査、常時微動探査により求められている。これらの構造を基にして、対象領域内の構造を内挿により推定した。その際、重力異常、深層ボーリングデータ及び地質構造を参照とした。Vs〜500m/sの比較的浅い部分については、ボーリング孔を利用したPS検層結果を参照した。また、N値の求められているボーリング地点については、N値とS波速度との関係を統計的に求め、それによりS波速度を推定し、P波速度及び密度等については、物理探査学会(1989)に示された関係式から推定した。
     
  3. Vs<500m/sの速度構造
    K−net観測点においては、PS検層結果による地盤構造を基に速度構造を作成する。この速度構造と、観測された自然地震の波形解析により得られた各観測点での表層伝達関数との比較し、速度構造の微修正を行った。
(2)

Q構造

  1. Vs>3000m/sのQ値
     最上部マントル、下部地殻、上部地殻及びVs>500m/sの層を含む範囲での見かけのQ値は、多くの研究例がある。
     既往文献によりもとめられている値の例は次のとおり
     
    ・Aki(1980) 南関東地域 Q=170f0.6
      北関東地域 Q=120f0.8
    ・佐藤(1984) 世界各地 1Hz付近で100程度fnのnは0.5〜0.9
      関東地方 n=0.7
    ・岩田・入倉(1986) 日本海中部地震 Q=100f0.6
    ・木下(1993) 関東地域 Q=100f0.7
    ・Kinoshita(1994) 南関東地域 Q=130f0.7
    ・佐藤他(1994) 仙台地域 Q=110f0.69
    ・加藤他(1998) 東北太平洋岸 Q=80f1.0
    ・Yoshimoto et al(1993) 関東地方 Q=83f0.73

    図3に佐藤(1984)のQ値の解析結果を示す。この図から、平均的には「Q=100f0.7」であることがわかる。また、データが多数分布する領域の境界は、「Q=150f0.7」であることがいえる。
    図4に想定東海地震の震源領域で発生したM5から6程度の地震の記録解析から得られたQ値を示す。この結果からも、平均的にみると周波数の0.7乗に比例し、上記のQ=100f0.7とQ=150f0.7の中間に分布していることがわかる。
     これらにより、Vs>3000m/sのQ構造として、平均的なものとしてQ=100f0.7を採用することとする。
    なお、中部地方は、他の地方に比べ地盤が固く地震波の減衰が小さい可能性もあることから、これら地域については、Q=150f0.7の場合についても試算し検討する。
     
  2. 500m/s<Vs<3000m/sのQ値
     この速度層に対するQ値の解析例が少ない。一般的には、上記の場合よりは小さいと考えられるが、ここでは、上記の平均的なQ値と同じ、Q=100f0.7を用い試算する。
     
  3. Vs<500m/sのQ値
    ボーリングにより採取された不撹乱材料を用いた室内土台試験(動的変形特性試験)結果を図5に示す。また、土質毎に分類した頻度を図6に示す。この図から、減衰乗数、h=0.015の場合が、土質によらず頻度が集中していることからが認められる。減衰乗数とQの関係(2h=1/Q)から、Q=35とする。

 

 
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