南関東地域直下の地震対策に関する大綱

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第3章 地震危険性の特に高い地域の対策

1 老朽木造密集市街地

南関東地域には、道路等の整備が著しく遅れ老朽木造建築物が高密度に集積したいわゆる老朽木造密集市街地が、戦後すぐに形成された古い市街地等を中心に存在している。
東京都においては、こうした市街地について重点整備地域として、25箇所、約6,000haを具体に示し、おおむねの事業期間の目標を定めつつ、その改善に努めており、埼玉、千葉、神奈川県下においても同様の市街地について対策が進められているが、さらに一層推進していく必要がある。
関係地方公共団体においては、阪神・淡路大震災において著しい被害を受け、結果的に大きな事後対策を必要としているこうした市街地の再整備について、地域住民の理解、自助努力等を得つつ、密集法関連事業の推進、街路事業、市街地再開発事業、土地区画整理事業等により、地域コミュニティの保全にも配慮しつつさらに推進していくものとし、国は関係地方公共団体とともにその進捗状況等を把握しつつ必要な財政的、技術的支援を行うものとする。
また、老朽木造密集市街地においては、消防車両等の進入が困難な地区が多く、街路整備により進入路を確保するとともに、街路整備や市街地の面的な整備等が進行するまでの間においては、特に、消防力の重点的整備を図り、さらに住民、自主防災組織等による出火防止、初期消火対策に関する意識の啓発、訓練の実施、消火用の水利の確保等の推進に努めるものとする。

2 崖地・軟弱地盤地域

南関東地域は、郊外のベッドタウン地域等において丘陵地を造成する等により形成された市街地が展開しており、崖地等に近接した土地利用がなされている。このため、関係地方公共団体は、地震による崩落等の危険のある崖地等の把握に努め、近接する居住者等に注意を呼び掛けるとともに、急傾斜地崩壊危険区域や災害危険区域の指定等を進め、崖地の崩落対策事業等を推進し、また、近接する建築物等の移転等を誘導するものとする。
なお、新たに造成される市街地においては、宅地の造成に係る基準等が遵守されるよう指導の徹底に努めるものとする。
さらに、地震時の崩落の兆候、避難方法等についてあらかじめ周知するとともに、余震、降雨等による二次災害を防止するため、地震後の緊急の点検、応急措置、避難場所への避難誘導の体制の整備等を図り、被害の拡大を防止するものとする。
同様に、造成時の盛地、埋立地、河川沿岸などにおいては、地盤が軟弱であり、地震時に揺れが増幅されたり、液状化により住宅、ライフライン等が大きな被害を受ける可能性がある。このため、関係地方公共団体、ライフライン事業者は、軟弱地盤地域、液状化危険地域等について、調査・把握するとともに、施設立地者が立地の選択や、基礎の補強等の対策の実施等の判断ができるよう公表に努めるものとし、国は、これら危険性の把握、改善措置等に対する技術的支援等を行うものとする。

3 浸水・津波危険地域

南関東地域の臨海部においては、標高が低く浸水危険性の高い地域が広がっている。このため、国、関係地方公共団体は、特に0m地帯等における既存の河川堤防の耐震対策を進めるとともに、スーパー堤防の整備等により、より耐震性の高い整備を推進するものとする。
また、市区町村等関係地方公共団体は、浸水危険区域に関するハザードマップの作成、周知等に努め、消防機関、水防団、沿川住民等とともに地震後の避難や水防活動について事前の備えを進めておくものとする。
さらに、南関東地域には地震による津波の可能性のある海岸部を有しており、関係地方公共団体においては、関係省庁が作成した津波対策の手引き等を参考に海岸事業、港湾整備事業、漁港整備事業等の実施、津波浸水予測図の作成等による地域住民等への注意の喚起、避難誘導の体制整備等、津波対策を推進するものとする。
なお、これら対策においては、防災関係機関と関係地方公共団体の防災部局の情報交換、協力体制の充実等に一層努めつつ推進するものとする。

4 コンビナート地区等

南関東地域の臨海部、特に東京湾岸においては、石油コンビナート等、危険物施設の集積するコンビナート地区や工業地域等、我が国の経済の基盤となる産業施設が集積しており、その地震による被災を縮減することは、国家的な経済機能の維持を図ると同時に、近接する内陸の市街地や、東京湾の海運、自然環境等に対する被害の拡大を防止する上で、極めて重要な課題となっている。
このため、国、関係地方公共団体は、石油コンビナート等災害防止法に基づく対策の充実に努めるほか、臨海部の老朽化した工場地帯の再開発等を進め、地震防災性の高い臨海部整備を推進するものとする。

5 高層ビル、地下街、ターミナル駅等

高層ビル、地下街、ターミナル駅等不特定多数の者が利用する都市の施設等においては地震時における安全性の確保の重要性にかんがみ、これらの施設における安全確保対策及び震災時の応急体制の整備を図るものとする。
そのため、防災関係機関は、国の防火管理体制指導指針や消防計画に基づいた出火防止、初期消火及び混乱防止に重点を置いた防火管理体制の充実強化を図るよう、予防査察を徹底し施設管理者等に対し指導を行う。
また、震災時の当該施設内外における混乱を防止し、的確な避難誘導を図るため、

各種通信手段・システムの活用等による迅速かつ的確な情報収集体制、及びガイドラインに基づき施設内の顧客等に対し的確な行動を呼び掛ける情報伝達体制を確保する。

高層ビル街における地区単位の避難誘導体制の整備や複数の施設管理者が存在するターミナル等における応急活動の連携を図る。

施設従業員の教育・訓練については、トップから現場の従業員に徹底するよう、当該施設の管理者等に対し指導する。

平常時からの施設利用者に対する各種安全対策や震災時にとるべき行動について効果的な広報を行う。

これらの対策の基礎として、平常時からの当該施設の管理実態の継続的な把握に努めるとともに、個々の施設において消防計画等に基づく通報連絡・避難誘導体制等の一層の整備を図るよう、当該施設の管理者等に対し指導する。

等を一層推進していく。
さらに、必要に応じ高層建築物等の屋上にヘリコプターの臨時離発着場の整備を図り、建築物に閉じ込められた者を空中からも救出できるような備えを行っておく。
今後とも、都市における空間利用の高度化や現在検討の進んでいる大深度地下利用の進展が見込まれるが、その利用の実用化に当たっては必要な地震防災上の検討を行い、住民等の安全・安心の確保に努めるものとする。


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1998.6.23
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