南関東地域直下の地震対策に関する大綱

南関東地域直下の地震対策に関する大綱


目次 前へ 次へ

第2章 応急対策の備え

大規模地震の発生に備え、予防対策の実施により、被害を最大限軽減するよう努めることはもちろんであるが、地震発生後に応急対策を的確に実施することにより、被災地の住民の生命、身体、財産を出来る限り保護することが重要である。このため、応急対策の備えを平常時から進めておく。

第1節 応急対策の備えにおける連携の推進

都県の区域を超えて市街地が広域化している大都市において大規模な地震が発生した場合には、その被害の甚大性・広域性から、国、地方公共団体等の複数の防災関係機関が密接な連携を図りながら応急対策活動を効果的に実施していくことが重要である。

1 地方公共団体間の連携等

地震発生時の応急対策活動は、第一次的には地方公共団体を中心に実施するものであり、被害が甚大かつ広域にわたるような場合、まずは市町村及び都県が広域的に連携し、応急対策を展開していくことが重要であり、そのための備えを平常時から行っておく。
阪神・淡路大震災後、南関東地域の関係地方公共団体においても、地域内外の関係地方公共団体との相互応援協定の締結が積極的に推進されている。今後は、その実行性を確保するため、必要に応じてマニュアル化等を進めていくものとする。
南関東地域においては、七都県市首脳会議や関東地方知事会において、広域的な連携の取組みが進められている。七都県市首脳会議においては、震災時相互応援協定の締結及び同協定に基づく応援調整都県市マニュアルの作成、国と連携した合同防災訓練の実施等に取り組んでいるところである。また、関東地方知事会においては、震災時の相互応援協定に関する協定を締結したところである。これらの取組みについては、今後とも積極的に推進し、さらに、今後は、国の防災関係機関とも密接な連携を図っていくものとする。
阪神・淡路大震災後、警察、消防の組織において、大規模震災の発生に際し、より効果的かつ迅速に人命救助活動等を行うためのシステムとして、それぞれ、広域緊急援助隊、緊急消防援助隊が設置された。これらの仕組みが震災時に有効に機能するよう、平常時の備えを引き続き進めておくものとする。
なお、地方公共団体が応急対策を実施するに当たっては、地方公共団体間の連携に加えて、救助救急・応急復旧活動に当たっての建設業者等との連携、緊急輸送に当たっての運送業者等との連携など民間企業等とも連携を図っていく必要があり、協定の締結など平常時からそのための備えを進めておく必要がある。

2 南関東地域の都県等と自衛隊の連携

阪神・淡路大震災における自衛隊の多岐にわたる精力的な取組みの例を見るまでもなく、被災地の地方公共団体が自力で十分な対応ができない場合に自衛隊の果たす役割は大きく、被害が広域、甚大かつ特殊になるおそれのある南関東地域の大規模地震に備え、都県等と自衛隊は、平常時から連携体制の強化を図っておく必要がある。
都県は、自衛隊への派遣要請が迅速に行えるよう、あらかじめ要請の手順、連絡調整窓口、連絡の方法を取り決めておくとともに、連絡先を徹底しておくなど必要な準備を整えておくものとする。また、役割分担の明確化、相互の情報連絡体制の充実、実践に即した共同の防災訓練の実施等に努めるものとする。
南関東地域に大規模地震が発生した場合の自衛隊の対処方針については、南関東地域震災対策活動要領に基づき、「南関東地域震災災害派遣計画」において具体的に定められており、阪神・淡路大震災後にも改訂されたところである。国が行う応急対策活動の中でもとりわけ自衛隊に対する応急対策活動のニーズは多岐にわたる。しかしながら、自衛隊が活用できる資源も限られていることから、都県はいかなる状況で、どのような分野について自衛隊への派遣要請を行うのか、各都県の防災会議等の場を活用して、自衛隊との間の調整を実施することにより、平常時よりその想定を行い、相互の意志疎通を図っておくものとする。また、被災地内で自衛隊が応急対策活動を展開していくに当たり重要な役割を占める活動拠点については、関係地方公共団体において、平常時から具体的な場所を指定し情報を共有するとともに、管理者との事前協議を進めておくものとする。

3 国の防災関係機関の連携

地震発生時の応急活動は、第一次的には地方公共団体を中心に実施するものであるが、被害が甚大な場合は、緊急災害対策本部等を中心に防災関係機関が連携を密にし、国が積極的に支援することが必要かつ有効である。
南関東地域の大規模震災時の国の緊急災害対策本部等を中心とする応急対策活動については、昭和63年に南関東地域震災応急対策活動要領を中央防災会議で決定しているところであるが、南関東地域の大規模地震における被害の態様や必要な応急対策の分野等は、社会情勢の進展等により変化していくものであるから、同要領については、新たな検討を踏まえた修正を継続的に行い、国の応急対策活動の基本的な要領としての機能を強化していくものとする。
また、地震発生時に効果的な連携を図るためには、平常時から連携を密にしておくことが重要である。このため、要領に基づく各防災関係機関の役割分担や活動内容を検証するための訓練や実践的な様々な訓練の実施、中央防災会議主事会議等を活用した特定課題の取組み等を推進し、国の防災関係機関の防災担当者の連携を深めておくものとする。
以上の取組み等に当たっては、国に対する応急対策活動のニーズは多岐にわたるものの、活用できる資源にも限りがあることを踏まえ、大規模震災時に限られた時間と情報の中で国の応急対策活動を効果的なものとするため、応急対策の優先順位を判断するための仕組みや複数都県からの要請への対応についての調整の仕組み等について、共通の認識を持てるよう配慮していくものとする。また、地震発生直後に、情報収集活動、搬送活動等の応急対策を迅速かつ効果的に実施するためには、現地での防災関係機関の密接な連携が重要であり、平常時の応急対策の検討において十分に配慮するものとする。

4 実践的な備えの推進

南関東地域に大規模地震が発生した場合の応急対策活動については、限られた時間と情報の中で、的確に実施していく必要があり、特定の課題について、可能な限りの事前の準備を、関係者の連携の下、実践的に行っておくものとする。
このため、阪神・淡路大震災の経験等も踏まえ、応急対策についての実践的な対応パターンを構築し、それに対応した形で、要請手続き等の明確化、情報の共有、応急対策に活用する施設の指定等について検討しておくものとする。
国レベルにおいては、傷病者の搬送など人命に直接的に関係する活動、関係する機関が多岐にわたる活動から順次検討を行うものとし、その成果については、中央防災会議等の場でアクションプランとして申し合わせ、共有するものとする。その際、南関東震災対策活動要領については、関係する機関の連携により応急対策を実施する場合の基本的な要領を定めるという従来の役割に加え、アクションプランとして検討し、申し合わせる個別の課題を明らかにしておくなど、平常時の備えを推進するに当たり中心的な役割を果たすような位置づけを与えるものとする。
また、国レベルと地方公共団体レベルの施策の整合性の確保や、関係地方公共団体における防災体制充実の支援を行っていくものとする。

(1) 実践的な対応パターンの構築

傷病者の搬送、緊急輸送などの応急対策の分野ごとに、効果的・実践的な対応パターンを具体的に定めておく。なお、震災時に入手できる情報等は限定されることから、災害対策本部等に詳細な被災情報等が入ってこない場合であっても、講じるべき応急対策の主な流れや、優先順位をあらかじめ、相当程度は定めておくものとする。

(2) 要請手続き等の明確化

応急対策の実施に当たって必要な要請手続き等について、その相手方や必要な情報を明確にしておく。この際、要請の相手方については、情報伝達網が輻輳する場合等も想定し、バックアップも含めて明確にしておくものとする。なお、名簿・資料等として整理しておくだけでなく、人的な交流を深め、ネットワークを構築しておくことが、震災時には極めて有効であり、定期的な打合せ等についても、積極的に進めていくものとする。

(3) 応急対策に活用可能な施設の指定等

応急対策ごとのきめ細かな対応を含め、応急対策に活用可能な施設等について、指定及び周知を行っておくことは極めて有効であり、管理者等との事前手続きについても、平常時から出来る限り進めておくものとする。
特に、防災拠点については、阪神・淡路大震災において、重要性が痛感され、地震防災対策特別措置法においても防災拠点の整備が盛り込まれたところであるが、中でも、広域防災拠点の整備は重要な課題であり、強力に推進していく。
南関東地域においては、立川市に国の災害対策本部予備施設のほか、広域的な防災支援拠点となる災害医療の基幹施設等から成る、立川広域防災基地の整備が進められている。
他の地域についても、必要な場合には、関係する機関が連携し、広域的な防災拠点の在り方、平常時も含めた活用方策等を検討し、整備を推進していくものとする。
広域防災拠点に期待される役割は多様であり、例えば、被災地以外からの応援人員の受入れ等も考えられる。このような要請に十分に対応できるような実践的な備えを行っておくとともに、広域防災拠点を核とした関係する機関の職員の交流や訓練についても、積極的に推進していく。

(4) 情報の共有

効率的な応急対策の遂行にとって、被災状況や応急対策の実施状況等に関する情報を収集し、防災関係機関で共有することは極めて重要である。
このため、応急対策に活用可能な施設等の情報を、要請手続き等にかかわる関係者で共有し、効果的な対応パターンを迅速にとれるような情報の共有を平常時から積極的に進めておく。
一方、震災時における情報については、情報の種類、伝達方法、手順等あらかじめ定めておく事項について、より迅速かつ的確に、収集・伝達及び関係する機関の共有ができるよう検討を推進しておくものとする。
なお、技術の進展がめざましく、地震防災の分野に活用されている「情報システム」を活用することが有効であり、この際、既存のシステムを相互に活用し、入力等の負荷を極力小さくする工夫をしながら、関係する機関のシステムの連結、端末ベースでの共有等を推進していく。

第2節 応急対策の分野ごとの備え

1 政府等の初動対応

国、関係地方公共団体及び関係指定公共機関は、防災関係機関相互の連携の下、各種都市機能が集積する特殊性に応じ、以下の措置を推進する。

(1) 個々の機関の初動対応

各防災関係機関は、機関ごと、部局ごとの業務の性格、災害対策上の役割に応じ、夜間・休日等勤務時間外の発災をも考慮した震度情報・津波警報等の情報収集・連絡体制の整備を図るとともに、非常参集要員の指定、連絡手段の確保、非常参集基準の明確化、参集手段の確保、参集職員の職場近傍での宿舎の確保、非常参集・配備要領等の整備、応急活動時の行動要領の作成・訓練など、非常参集の迅速かつ確実化の推進を図るものとする。また、発災直後の指揮命令系統の明確化を図るとともに、指揮命令権者等が非常参集開始前あるいは参集途上においても的確な意思決定・指示判断等を行うことができるよう情報収集伝達手段の整備に努めるものとする。
さらに、発災直後の被災状況を迅速かつ的確に把握するため、情報収集・連絡体制の整備を推進し、収集した情報を的確に分析・整理するための人材の育成を図るとともに、必要に応じて、専門家の意見を活用できるよう努めるものとする。

(2) 緊急災害対策本部等の迅速な設置等

国は、初動措置を始動するための情報集約や関係省庁連絡会議等の開催が、速やかに行われるよう体制の整備を図るとともに、緊急災害対策本部等の設置又は国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼす異常かつ激甚な被害が発生していると認められたときの災害緊急事態の布告等について、迅速な手続き等が図られるよう体制を整備するものとする。また、必要に応じて行われる政府調査団の被災現地への派遣や現地対策本部の設置等についての体制を整備するものとする。
さらに、発災直後の情報が限られた状況下で、迅速かつ的確な初動対応等を図るため、震度情報・津波警報等の活用により、各種情報処理機器等による被害規模を評価するためのシステムの活用を図るものとする。

(3) 首都直下型等大規模地震発生時対応

大規模な地震発生の切迫性が指摘されている南関東地域については、人口、諸機能が著しく集積し、社会・経済の中心となる首都が含まれる地域である。このため、地震発生の規模や震源地如何によっては、この首都における被害が甚大となり、多数の人命、財産の損失、さらに、首都機能の阻害や防災関係機関自体の被災等による初動対応の遅れが懸念される。
このようなことから、防災関係機関は、迅速かつ的確な初動対応に資するため、各機関の意思決定者の事故等を想定した職務代行の明確化を図るものとする。
また、国は、初動対応に重要な役割を成す通信手段の確保に努めるとともに、迅速な緊急災害対策本部員等の参集、政府調査団の被災現地への派遣、現地対策本部員及び必要な資機材の緊急輸送についての体制を整備するものとする。
なお、緊急災害対策本部等の設置場所については、設置予定場所が被災により使用不可能である場合を想定し、あらかじめ指定された複数の場所について内部施設・設備等の整備を進めるものとする。

2 情報・広報活動

(1) 震災時の通信の確保

国、関係地方公共団体、関係指定公共機関は、地震による災害時における情報通信の重要性にかんがみ、災害時の通信手段の確保のため、情報通信施設の耐久性の強化、停電対策、通信施設の危険分散化、通信経路の多ルート化、通信ケーブル等の地中化の促進、デジタル化の促進、バックアップ対策としての有・無線通信システムの一体的運用とその連携など、重要通信の確保に関する対策の推進を図るとともに、通信先端技術の研究・開発・導入の推進を図るものとする。

(2) 情報の収集・連絡体制

国、関係地方公共団体、関係指定公共機関は、防災関係機関相互間において迅速かつ確実に連絡が行えるよう通信のネットワーク化を図るとともに、非常通信体制の整備を推進するものとする。また、被害情報等の情報を官邸を始め、緊急災害対策本部等防災関係機関に伝送されるよう中央防災無線網の整備・拡充等伝送路の確保を図るとともに、地域防災無線網等の整備の充実・強化を推進し、市町村災害対策本部、地域防災関連機関、生活関連機関の相互間の情報連絡体制の確保を図るものとする。
情報収集活動を行うに当たり、国、関係地方公共団体は、必要に応じ航空機、巡視船、車両など多様な情報手段を活用できる体制を整備するとともに、ヘリコプターテレビシステム、監視カメラ等画像情報を活用した情報の収集・連絡体制の推進を図るものとする。
さらに、平常時より自然情報、社会情報、防災情報等防災関連情報のデータベース化を進めるとともに、震度計・地震計等観測機器の整備・維持管理に努め、震災時における被害状況等を収集するなど、防災関係機関相互での情報の共有化を図るシステムの構築に努め、応急対策活動等の効率化を推進するものとする。なお、このシステムには、必要に応じて地理情報システムを活用し推進を図るものとする。
その他、国、関係地方公共団体は、防災無線、衛星通信、パソコン通信や災害時に有効な携帯電話・自動車電話、業務用移動通信、アマチュア無線等の活用など、多様な通信手段を整備することにより、民間企業、報道機関、住民等からの災害関連情報等の収集体制の整備に努めるものとする。
通信輻輳対策としては、国、関係地方公共団体、関係指定公共機関は、防災関係機関と連携し、非常時における運用計画を定めておくものとする。また、平常時より通信設備の点検を定期的に実施するとともに、防災関係機関相互との連携による非常通信の取扱い、機器の操作の習熟等に向け、通信訓練を実施するものとする。

(3) 被災者等への情報提供

国、関係地方公共団体、関係指定公共機関は、住民等に対し地震の被害、津波及び余震の状況、二次災害の危険性に関する情報、安否情報、ライフラインや交通施設等の公共施設等の復旧状況、医療機関などの生活関連情報、交通規制情報、義援物資の取扱い等ニーズに応じた情報について、提供体制を整備するものとする。その際、高齢者、障害者、外国人等災害弱者や帰宅困難者に配慮した体制整備を図るとともに、情報の公表、広報活動の際、その内容について、相互に連絡を取り合うものとする。
また、情報提供に当たっては、掲示板、広報誌、広報車、ビラ、パソコン通信等の活用体制を整備し、また、報道機関との連携を図るものとする。なお、国は、放送機関と協力して、緊急放送時にテレビ、ラジオが自動的に作動するシステムの普及を推進するものとする。
国、関係地方公共団体、関係指定公共機関は、必要に応じ、発災後速やかに住民等からの問い合わせに対応できる体制の整備を図るものとする。

(4) 安否情報対策

南関東地域においては、各種都市機能の集積、人口及び建築物の密集などの特殊性から、被災者の安否に関する情報、帰宅困難者に関する情報が膨大となることが想定される。このため、国、関係地方公共団体、関係指定公共機関は、住民等のニーズに応じた的確な安否情報を提供するため、報道機関・関連会社等と連携し、避難者に関する情報の把握・管理や関係する機関への迅速な伝達を実施するよう努めるものとする。また、災害用伝言ダイヤルなど電話連絡システムの活用、パソコン通信等の有効活用を図るとともに、これらについて、国民への周知・啓発に努めるものとする。

(5) 効果的な広報のための備え

報道機関は、南関東地域に所在する通信施設等が被災した場合、速やかに復旧できる体制や他施設の運用など、国民への情報提供の確保に努めるものとする。
また、国は、外国人やその施設について、海外への情報提供を迅速かつ的確に行うため、国内外の報道機関との協力体制を推進するものとする。

3 救助・救急、消火活動

大都市地域には、高層ビル、地下街、ターミナル駅等不特定多数の人々が利用する施設が集積しており、特定の地域内で多数の人的被害が発生するおそれがある。また、同地域においては老朽木造密集市街地が存在するとともに、危険な物質を取扱う施設の集積が著しく、地震火災による被害の拡大も予想される。このため、人的被害を最小限にするよう、関係地方公共団体は、大規模震災が発生した場合において、同時に多数の人々が被災した場合を想定し、迅速かつ円滑な救助・救急活動及び消火活動を行うために必要な準備を進めておくことが必要である。

(1) 救助・救急活動

南関東地域において大規模な地震が発生した場合、老朽木造密集市街地や高層ビル、地下街、ターミナル駅等が多数存在していることから、多数の要救助・救出者が発生する可能性がある。
このため、地方公共団体は、救助工作車、救急自動車、照明車等の車両及び応急措置の実施に必要な救助・救急用資機材の整備を進めるとともに、広域的な救助・救急活動に極めて大きな効果を発揮するヘリコプターの配備を推進するものとする。また、国においても、救助用資機材の整備を推進するとともに、関係省庁、関係地方公共団体、住民が情報を共有し、地震発生時に広く資機材を活用できる体制の整備について検討するものとする。
阪神・淡路大震災後、全国の消防機関による緊急消防援助隊、全国の警察機関における広域緊急援助隊等による広域的な応援体制の整備が推進されており、警察庁、防衛庁、消防庁による大規模災害時を想定したいわゆる「三庁協定」(消防庁と防衛庁による「大規模災害に際しての消防及び自衛隊の相互協力に関する協定」、警察庁と防衛庁による「大規模災害に際しての警察及び自衛隊の相互協力に関する協定」、及び消防組織法第24条)等も締結されたところである。救助・救急活動は、地震発生直後に迅速な対応の求められる活動であるとともに、広域的な応援の人員も含め、複数の組織の密接な協力により展開される活動であり、地震発生時に最大限の効果が発揮されるよう、平常時からその連携の在り方等について検討を進めていくものとする。
この際、老朽木造密集市街地や繁華街等で同時に多数の人が被災した場合の対応は、南関東地域の大規模震災時における重要な課題であるので、平常時からそのような事態の発生が予想される地域における施設の管理者等も含めた実践的な対応策について検討を進めていくものとする。

(2) 消火活動

南関東地域は老朽木造密集市街地が存在するとともに、危険な物質を取扱う施設の集積が著しく、地震火災による被害の拡大が予想されることから、迅速かつ的確な消火活動を行う体制を確保することが極めて重要である。
このため、関係地方公共団体は、平常時から消防力の整備や消防本部、消防団及び自主防災組織等の連携強化を図り、区域内の被害想定の実施及びそれに伴う消防水利の確保等に努めるものとする。また、国、関係地方公共団体は、大規模震災等複雑化多様化する震災への対応力の向上を図るため、地方公共団体間の相互応援協定による協力や、緊急消防援助隊等による広域応援体制の充実を図るとともに、小規模消防の地域の実情に即した広域再編を推進していく。
震災時には火災が同時多発することが想定され、消火用水が大量に必要となる。一方、地震により消火栓等が断水、損壊等により利用できなくなることも想定される。このため、防火水槽の整備を始め消防に必要な水利施設の耐震化、量的な充実、計画的な配置等を推進するとともに、設置場所の確保等における防災関係機関の連携を進めるものとする。
また、河川水、海水、下水処理水、農・工業用水等その他大都市地域に存在する多様な水利を震災時に消火活動に利用できるような整備について、施設管理者等が消防機関と連携しつつ進められるよう検討を推進するものとする。その際、震災時において住民による初期消火活動等に活用できる地域の井戸等、日常から住民が身近に利用する多目的の水利の確保についても配慮するものとする。
さらに、ヘリコプターによる空中消火については、ヘリコプターの多目的な活動内容に留意しつつ、市街地火災における活用の可能性についても研究を進めるものとする。

4 医療活動

南関東地域は、人口が集積している上に、密集市街地、老朽住宅、高層ビルや地下街、ターミナル駅等の不特定多数の人々が集まる施設やボイラー施設、各種薬品類等危険な物質を取扱う施設も多数存在していることから、震災時には重傷熱傷やクラッシュシンドローム等の処置の難しい負傷者等が大量に発生することが予想される。このため、迅速かつ円滑な医療活動を地震発生後短時間のうちに行うために、被災地内にとどまらない広域的な医療活動が必要であり、国、関係地方公共団体は、そのための準備を平常時から進めておく必要がある。

(1) 拠点となる医療機関の指定と体制の整備等

都道府県は国の定める方針に基づき、災害時に医療活動の拠点となる災害拠点病院の指定を行う。また、医療関係機関及び関係地方公共団体は、災害拠点病院を中心として、所管する医療施設の耐震化・不燃化等を進めるとともに、防災無線等災害時にも使用できる通信設備の整備、水道・電気等ライフラインの補強、自家発電装置、耐震性水槽の設置などを進める。
また、災害拠点病院を始めとする各医療機関は、震災時の職員の参集体制を整備するとともに、震災時に医療活動の指揮をとるなど重要な役割を担う医師等については、輸送に関係する機関の協力の下に、参集のための手段の確保についても検討しておく。

(2) 医薬品、医療資機材等の備蓄

関係地方公共団体は、地域の実情に応じ地域内の医療機関と連携して医薬品、医療資機材等の備蓄を推進するとともに、平常時から地域内の関係業者と協定の締結を促進し、また、相互応援協定等により周辺の地方公共団体と連携した広域的な医薬品・医療資機材等の調達のための方策を講ずる。国は、広域的な見地から関係者間の連絡調整や情報収集に努めるとともに、被災都県への支援を行い、必要に応じ被災地外からの医薬品、医療資機材等の調達について関係者間の調整を行う。

(3) 救護班の編成と派遣

医療関係機関及び地方公共団体は、所管する医療機関に対して震災時に迅速に救護班を派遣できるよう、平常時から救護班の編成を行うなど派遣の準備を進める。
救護班の編成の状況については、医療関係機関のみでなく防災関係機関で情報を共有する。
救護班については、広域的な医療活動を行う場合を考慮して、傷病者の搬送に同行する救護班の編成についても配慮する。

(4) 医療機関相互の連携

震災時における医療活動を円滑に行い、救護班の派遣や傷病者の搬送を迅速に行うためには、関係する機関間における平常時からの連携が必要である。
国は、災害拠点病院を始めとする医療機関及び防災関係機関が情報を共有するためのシステムの整備を進める。また、発災時に対応できる医療体制を確立するために、救護所や地域の病院と災害拠点病院の連携を密にし、ネットワークを推進していく。

(5) 医療機関と防災関係機関の連携

大規模震災時に医療活動を効果的に展開するためには、医療機関と防災関係機関の連携、特に輸送活動における連携が重要である。大規模震災時には、被災地内の医療機関の対応能力が飽和状態となり、被災地外の医療機関において早期に傷病者の治療を行う必要が生じることから、特に国及び関係地方公共団体は、そのような場合に備えて、平常時から傷病者の受入れ体制や傷病者及び救護班の輸送の実施体制について周辺地方公共団体と調整を行っておく必要がある。また、傷病者及び救護班の輸送については、医療や輸送に関係する機関がそれぞれに検討を行うことでは発災時に十分な対応をとることが困難であると考えられることから、関係各機関が十分に連携を持ちつつ、その具体的な実施体制の整備を図っていくことが必要である。

(6) 震災時医療に関する研究の推進及び医療従事者、住民等に対する研修、訓練 の実施

国は、震災時の医療関係者の役割、トリアージ技術、震災時に多発する傷病の治療技術等に関しての研究を推進する。また、国、地方公共団体、日本赤十字社は、医療関係者に対する震災時の応急医療に係る訓練、研修等の推進や、震災時の応急医療体制を補強するため、住民等に対する救急法、蘇生法等応急処置に係る知識・技術の一層の普及を図る。
阪神・淡路大震災においても被災地内の病院等において、医療機関相互あるいは他の機関とのコーディネーターの役割を果たす医療従事者の重要性が痛感されたことから、研修、訓練等に当たってはこれらの役割に関する知識の普及についても十分配慮するものとする。

(7) 医療搬送活動についての実践的な備え

医療活動については、傷病者の搬送も含めて考える必要があり、その場合、関係者が多岐にわたる一方で、地震発生直後に迅速な対応が求められる分野であることから、平常時から実践的な備えをしておくことが強く求められる。
このため、地方公共団体及びそれを支援する国において、災害拠点病院に関するヘリポートの有無や外科手術の処理能力等の把握、傷病者の搬送に同行する医師も含めた救護班の選定や情報伝達ルートの確立、傷病者の搬送等に有効である拠点の選定と事前手続き等を検討し、申し合わせるとともに、このような備えを前提として、震災時の情報共有の在り方や効果的な対応のパターンを構築しておくものとする。
この際、南関東地域の大規模地震においては、重傷熱傷やクラッシュシンドロームといった高度な治療を必要とする負傷者等が多数発生することが予想される。このため、全国の高度な医療機能を有する医療機関へ負傷者等を搬送する必要が生じることを念頭に置いて、役割分担や対応の流れを平常時から整理しておくものとする。

5 緊急輸送活動

大規模震災時において交通を確保し、救助・救急活動等の応急対策要員や物資・資機材等の輸送、傷病者の搬送等を行う緊急輸送活動は極めて重要であり、平常時から次のような対策を講じておくことが必要である。

(1) 総合的な緊急輸送ネットワークの形成

南関東地域は高密度の市街地が広く展開しており、大規模震災時には、道路施設等の損壊、周辺建築物の倒壊等により、被災地への到達が困難となる等、輸送活動が円滑に行い得ないおそれがある。
このため、道路施設や周辺建築物の耐震化、緊急輸送道路のネットワークの整備を図るほか、飛行場、臨時離着陸場を拠点とする航空機、ヘリコプター等による空路による輸送、東京湾の各港湾・漁港及び荒川等の河川防災ステーション等を利用した船舶による海路、水路による輸送等も含め、輸送拠点、輸送経路を総合化した緊急輸送ネットワークの整備を推進するものとする。
これら緊急輸送ネットワークについては、具体の輸送活動を想定した重要度等を踏まえ、それぞれの都県における地域防災計画への位置づけ及び国、関係地方公共団体等における圏域としての総合的な把握、共有を進めるものとする。
また、橋梁等施設の耐震性、ネットワークの整備状況及び輸送力等の情報についてもあらかじめ国、関係地方公共団体、輸送関係団体等において情報を共有し、震災時の対応等について申し合わせておくものとする。

(2) 緊急輸送路の確保

震災時の道路交通の混乱を防止し、道路利用者の安全確保並びに住民等の円滑な避難及び緊急車両等の通行を確保するため、防災関係機関は、引き続き、交通管制システム、情報板等の道路交通関連施設についての耐震性を確保し、信号機減灯対策を推進するとともに、震災時の道路交通管理体制の整備を推進する。特に、南関東地域における震災が発生し被害が広域に及ぶことが予想されることから、防災関係機関は都県の境界を越えた広域的な交通規制を計画的・効果的に行う体制を整備する。また、都県警察は、震災時の交通規制を円滑に行うため、警備業者等との間に交通誘導の実施等応急対策に関する協定等の締結に努める。さらに、防災関係機関は、阪神・淡路大震災以後の災害対策基本法の改正を踏まえ、震災時における自動車運転者がとるべき措置の普及を進めるとともに、違法駐車防止対策の強化、駐車場の整備を推進し、震災時の道路交通の停滞を抑止するものとする。
発災後の道路の啓開・応急復旧等については、道路利用者の安全確保、道路管理上必要な周辺住民の避難等の円滑化、緊急輸送路の確保等を確保するため、防災関係機関は迅速かつ的確な対応が求められる。特に、同地域には、高架、地下道等空間を立体的に利用した複雑な構造の道路が多いことから、避難や緊急輸送活動等に活用される道路等において優先的に啓開活動等を展開することが必要である。このため、防災関係機関は被災状況の把握及び施設点検、緊急輸送道路と広域輸送拠点とのアクセス等に配慮した道路啓開活動を展開できるような方法、判断基準等を定めておくとともに、これを実施するために必要な人員・資機材等の確保、防災関係機関や民間企業等、関連する施設の管理者等との協力体制を進めるものとする。なお、資機材等の輸送においては、輸送ルートとして、緊急用河川敷道路等の活用を図るものとする。

(3) 輸送拠点の確保

高密度な市街地が連たんしている南関東地域において、緊急輸送活動を始めとする応急対策活動を効果的に展開するためには、輸送拠点の確保が極めて重要な課題である。
阪神・淡路大震災後、南関東地域の地方公共団体においては、防災関係機関の協力の下、ヘリコプターの着陸可能性等も整理しつつ、臨時ヘリポート候補地に関する情報の集積が進められている。今後は、管理者等との間で震災時の利用について事前の協議を進め、大規模地震発生時に迅速な確保ができるよう連絡体制等も整備していくものとする。また、通信機器等の必要な資材については、必要に応じ、当該輸送拠点に備蓄するものとする。
南関東地域においては、オープンスペースの確保が容易でないことから、輸送拠点と避難地が競合する場合が少なくない。避難地に指定されていない輸送拠点を確保するよう努めるとともに、競合する場合であっても、ある程度の広さがあるスペースについては、避難者の協力を得つつ輸送拠点としても活用できるような体制づくりを進めていくものとする。
輸送拠点に関しては、立川広域防災基地のような広域的な拠点、あるいは、比較的小規模であるが災害拠点病院に隣接するオープンスペースのように目的別にみた場合に有効な拠点というように、様々な視点での体系化が必要である。関係地方公共団体、国の防災関係機関が連携して、輸送拠点に関する情報の集積を行い情報を共有するとともに、輸送拠点の活用方策等について体系的に検討し、震災時の対応や役割分担等についても検討し申し合わせておくものとする。

(4) 多様な輸送手段の確保

南関東地域で大規模な地震が発生した場合、輸送活動に対するニーズが大量に発生するとともに、緊急輸送ネットワークそのものが被災する可能性がある。また、被害の状況によっては、負傷者等の広域の搬送や帰宅困難者の輸送等の特別なニーズが発生することも踏まえ、陸上交通に限定せずに、航空機や船舶等も含めたできる限り多様な輸送手段を活用できる体制の整備を図っていく。この際、運送事業者との協定等も積極的に進めておくものとする。
特に、機動性の高いヘリコプターによる輸送は、被災状況によっては極めて大きな効果を発揮すると考えられることから、地震発生時に迅速に活用するための準備を平常時から進めておくものとする。
また、継続的に輸送活動をする場合の燃料の確保等の問題についても、平常時から検討し、調達体制の整備を図っておくものとする。

(5) 輸送の優先順位

大規模震災時に、応急対策活動の実施に伴い多様な輸送需要が発生するが、確保できる輸送手段が限られるため、緊急性の高い輸送を優先的に行う必要がある。実際の応急対策活動の中で、他の輸送活動との関係も含めて、どのように輸送活動を行うべきか等について、できる限り具体的なイメージを関係者間で共有しておくよう検討を進めていく。

6 食料、飲料水及び生活必需品の調達、供給活動

食料、飲料水及び生活必需品等の確保については、被災者の生活を確保するために必要不可欠な活動である。国、地方公共団体は、近年の生活の向上に伴う被災者のニーズの変化や流通形態の多様化等の変化に対応した調達、供給体制を確立する必要がある。

(1) 食料、飲料水及び生活必需品の備蓄

食料、飲料水及び生活必需品の備蓄は、地域内の住民及び関係地方公共団体により地域内で確保することが基本であり、関係地方公共団体は必要とされる食料等についてあらかじめ備蓄、調達体制を整備する必要がある。この際、高齢化、核家族化の進展や地域コミュニティの脆弱化等も考慮して、調達、供給体制を確立する必要がある。国は、地方公共団体における備蓄・調達の状況を踏まえて国が確保すべき物資等について検討し、備蓄や調達の方法、輸送手段等について検討する。

(2) 地方公共団体間、企業等との協定による物資等の確保

関係地方公共団体は、周辺地方公共団体との連携によって地域内での備蓄が十分でない物資等について、平常時から検討を行い、広域的な備蓄の推進を進める。また、関係する地域内の企業等との協定を結び、必要な物資の確保を図る。

(3) 防災関係機関における情報の共有

防災関係機関は、食料、飲料水及び生活必需品等の供給活動が円滑に行えるよう、防災関係機関における備蓄物資の数量や備蓄場所、協定に基づく調達可能量等について平常時から把握しておくとともに、防災関係機関間で情報を共有しておく。また、地域内での備蓄が十分でなく、しかも早急に調達しなければならないものについては、国が備蓄するものも含め、調達場所と輸送ルートを検討し共有するものとする。

(4) 供給体制の確保

食料、飲料水及び生活必需品等の円滑な供給を行うためには、備蓄や協定による確保に加え、できるだけ速やかに流通による供給を再開する必要がある。このため、平常時から災害時における流通の在り方について検討しておくとともに、防災関係機関は、広域輸送拠点、道路等の輸送施設等で、食料等の調達のために使用する輸送施設等について、早期に復旧させるための方策を検討する。

(5) 優先度に応じた供給活動の実施

震災当初は、被災地内が混乱しており、使用できる輸送手段も限られることから物資等の輸送においては、緊急度・重要度を考慮することが重要である。このため、国、関係地方公共団体は、平常時から、緊急度・優先度を考慮した円滑な物資等の輸送の在り方について検討を進める。この際、不急不要の物資を、被災地内に運び込まない方策についても検討する必要がある。

(6) 義援物資等の受入れ

震災により、甚大な被害が発生した場合、義援物資の申し入れが多数寄せられることが予想される。国、関係地方公共団体はこれらの申し入れに円滑に対応するための方策や被災地のニーズを広報するための方策について検討する。

7 避難・応急収容活動及び被災者に対する配慮

(1)

南関東地域において大規模地震が発生した場合、住民等のための避難所のほか、応急仮設住宅用地の確保を行う必要があるが、避難場所等として使用できる土地が多くないことに加え、地域で働く人口等についても考慮しておく必要がある。

関係地方公共団体は、公共施設等を中心に管理者の同意を得た上で、平常時から避難所等の指定を行うほか、適切な避難誘導が行えるよう計画を作成・周知するとともに、職員の配置方法等を検討しておくものとする。また、地域住民等を含めた訓練等の実施や、避難場所の運営管理のために必要な知識の普及等に努めるものとする。

応急仮設住宅に関しては、地方公共団体は、土地管理者等の協力を得て、建設用地の選定を行っておくとともに、関係業者を通じるものも含め建設に必要な資機材の確保のための備えを進めておくものとする。

近年の生活水準の向上等を踏まえれば、地震発生時においても、避難所に間仕切り、仮設トイレ・風呂等を備えるほか、応急仮設住宅の仕様を改善するなどきめ細かな対応が必要である。また、災害時において、地域住民、自主防災組織の協力を得ながら、避難所や応急仮設住宅への優先的な収容等の措置を講じるとともに、福祉避難所、福祉仮設住宅を設置するなど、高齢者、障害者その他の災害弱者に対する配慮がなされるような備えを推進しておく。

南関東地域における避難・応急収容活動を考えた場合、地方公共団体は、周辺地方公共団体や国等の協力を得つつ、広域的に候補地や建設用地のリストアップを進めておくものとする。また、国は、自らの所管施設を避難所等として開放するための準備を進めておくものとする。

(2)

応急収容等による環境変化の激変に伴い、被災者は心理的に不安な状態に陥りやすいことから、被災地においては社会的な混乱が発生するおそれがある。このため、地方公共団体は国等の協力を得つつ、災害時のパトロールや安全に関する情報の提供について、平常時から検討しておくものとする。

(3)

被災者の避難生活における衛生環境の確保のために、関係地方公共団体は保健婦の巡回及び防疫活動を行う。このために、国は関係地方公共団体の協力を得つつ、保健婦派遣や防疫活動のための広域的な計画の策定を行う。また、生活環境の激変に伴い、心身双方の健康に不調を来す被災者が発生することが予想されることから、関係地方公共団体は被災者の健康の維持や心の健康増進(いわゆるメンタルヘルス)のための方策を推進する。
一方、大規模震災時には、多数の死者が発生することが想定される。遺体の処理については、遺族の心情や民心の安定を図るために、迅速、円滑に進める必要がある。このため、関係地方公共団体は、警察、医療機関の協力を得つつ、遺体の身元の確認や検視の進め方を定めておくほか、関係業界の協力により棺やドライアイス、遺体を保存するための薬品の確保の方策について検討しておく。遺体の火葬を円滑に行うためには、広域的な火葬の実施が不可欠であり、地方公共団体同士の協力や、火葬場に関するデータベースの構築等を進めておくものとする。

8 都市基盤施設等の応急復旧活動

(1) 公共施設の応急復旧

都市基盤施設の復旧活動は、経済・社会機能の迅速な回復を図る上で、急を要するものであるが、さらに、病院等の医療施設や、道路等の緊急輸送施設については、応急対策活動に不可欠な施設であり、損壊した場合、緊急の応急・復旧活動が求められる。
このため、各施設の管理者は、あらかじめ、被害の想定、復旧の方法等について、復旧計画を策定するとともに、復旧のための資機材の確保等を進めるものとする。
さらに、施設の管理情報等のコンピューターシステム、図面等のバックアップを図るものとする。

(2) ライフライン施設の応急復旧

ライフライン事業者は、地震発生時に円滑な対応が図られるよう、ライフラインの被害状況の把握及び緊急時の供給の在り方等について、あらかじめ被害想定等を踏まえて定められた復旧計画に基づき実施するものとする。
その際、応急復旧における広域的な応援を前提として、あらかじめ事業者間で広域応援体制の整備、必要な作業スペースの確保等に努め、また、迅速に復旧しなければならない地域、施設等の把握を含め他の種類のライフライン事業者、道路管理者、国、関係地方公共団体の防災部局等との必要な情報交換等を行い連携しつつ復旧の備えを推進するものとする。
さらに、ライフラインの復旧状況等の情報については、他の応急対策活動を行う機関、被災者等において重要な情報であることから、その迅速、確実な提供方法等について、あらかじめ防災関係機関と調整を進めておくものとする。

(3) 応急復旧等の妨げとなるがれきの処理

公共施設等の損壊により発生するがれきや、道路上に崩れた周辺建築物等のがれきの処理については、迅速な施設の応急復旧を図る上で、また、緊急輸送活動等の実施においても極めて重要な課題となる。
がれきの処理に当たっては、処理の際の粉塵、有害物質の飛散・漏洩対策、運搬方法、処分場の確保方策、がれきの財産上の扱いなど課題が多く、あらかじめ国、関係地方公共団体等において検討を進め、円滑な実施が図られるよう措置しておくものとする。

9 二次災害の防止活動

大地震後には、津波、余震、降雨等により、損壊した建築物、都市施設等がさらに大きく倒壊したり、0m地帯の堤防が損壊したり、緩んだ地盤が土砂災害を起こすなど、避難者や応急対策活動の従事者の人的被害や、物的被害が拡大するおそれがあり、こうした二次災害を防止する必要がある。
このため、国、関係地方公共団体は、余震や降雨等の情報を的確に把握、伝達、広報し、被災者、応急対策従事者に対し注意喚起するとともに、迅速な構造物・施設、崖地等の点検を行い、応急措置を講じ、立入りの制限や避難の誘導等を行うものとする。この際、二次災害対策が必要な施設、崖地等をあらかじめ把握しておくとともに、危険度を把握する官民の技術者の養成、事前登録、必要な資機材の備蓄等の事前の準備を推進するものとする。
二次災害防止活動は、震災直後の危険かつ混乱した被災地において行われることから、作業の安全の確保方策を図るとともに、対策要員が被災地に到達する迅速な移動手段の確立等について検討を推進するものとする。
また、判定される危険度の表示方法やその意味等をあらかじめ市民等に周知し、震災時の円滑な対策の実施を促進するものとする。


目次 前へ 次へ
1998.6.23
中央防災会議(事務局内担当:国土庁防災局震災対策課:E-mail:edcplan@nla.go.jp

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.