南関東地域直下の地震対策に関する大綱

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第1章 地震に強い南関東地域の形成

南関東地域には、耐震性が確保されていない古い構造物・施設等が相当量存在し、また、都県境を越え高密度な市街地が連たんしていることから、ひとたび大規模地震が発生すると、多数の構造物等が倒壊し、延焼火災が多発し、また、応急対策の実施が困難となること等により甚大な被害が生じることが阪神・淡路大震災の被災状況からも推定されている。
こうした構造物や市街地等の状況を原因とする震災被害は、何より貴重な人命等の人的被害に直結し、また、南関東地域住民の生活、さらには国の内外に及ぶ経済・社会機能に著しい被害を長期にわたってもたらすこととなる。
このため、国、関係地方公共団体等は、南関東地域における震災被害を根本的に縮減するための基本的な震災対策として、構造物等の耐震性の向上をはじめとし、圏域の防災構造化を推進するものとする。

第1節 構造物・施設等の地震防災性の向上

構造物・施設等においては、大規模地震に対して損壊する可能性を否定することができない。
阪神・淡路大震災以降、防災基本計画においては構造物・施設等の耐震性確保の基本的な考え方等が規定されたところであり、国、地方公共団体、民間を挙げて、各構造物等において、耐震基準、耐震診断基準、耐震改修指針等の一層の検討、普及を進め、これらに基づく諸施設の耐震化を推進するものとする。
また、大都市震災においては、地震火災が多発することが想定される中で、その発生件数を縮減するための建築物等の不燃化、出火防止対策等を推進する必要がある。
さらに、重要な機能を有している構造物・施設等においては、特に、単に壊れない、燃えないのみならずその機能が維持あるいは容易に復旧される必要があり、これらを併せ、構造物・施設等の広い意味での耐震性、地震防災性を向上するものとする。

1 耐震性の向上

(1) 住宅

南関東地域には、古い住宅が例えば昭和35年以前の木造戸建住宅で約72万戸(平成5年住宅統計調査、京浜葉大都市圏)も集積している。
阪神・淡路大震災では、こうした古い住宅の倒壊等による人的被害が甚大となったところである。一方、最近の基準でつくられた住宅・建築物等は、阪神・淡路大震災においても概ね倒壊等の被害を免れ得ることが確かめられた現在において、それを教訓とし、同規模の地震が再び発生した場合には必ず被害が縮減されるよう、古い住宅等の更新・改修を促進することが極めて重要となっている。また、今後つくられる新築の住宅等についても基準が確実に遵守されるようにしなければならない。
これら住宅の多くは、民間個人の所有するものであり、その耐震性を向上させ、自らの、また、家族等の安全を守ることは基本的には所有者の努力によるものであることが国民に強く認識される必要があるが、国、関係地方公共団体においては、その促進を図るため、以下の施策を推進するものとする。
既存の老朽住宅等において、耐震改修促進法に基づく指導及び税制・政策融資制度等の支援施策の推進するとともに、所有者、マンション管理組合等に対する意識啓発・PRの実施、関係団体との連携による耐震診断・改修等に関する相談体制の充実、築年別の建築数の統計等を活用した老朽住宅量の定期的把握、補強・改修方法等の研究開発の推進等を図るものとする。
また、今後つくられる住宅についても、その耐震性を確実に確保するため建築関連法基準等の実効性の確保を図るほか、耐震工法等の研究・普及の推進、住宅の購入者等に対する意識啓発、より安全な住宅を誘導する政策融資制度の実施等を推進するものとする。

(2) 都市的施設・構造物

南関東地域には、首都圏の経済の進展等に併せ、多数の商業・業務施設や文化・娯楽施設が早くから建設されている。こうした施設は、大量の人々を収容するとともに、通りに人々の溢れる繁華街等を形成している。阪神・淡路大震災においてはこうした施設においても建設時期が古いものを中心に倒壊等大きな被害が発生したところであり、地震発生時刻が異なれば建築物の内外で人的被害がさらに拡大したことが想定される。
また、例えば道路、鉄道等の交通施設についても、都市が立体的に利用されている中で高架や地下の構造物が多く、大量の車両・人員がその上を移動していること等から、施設の損壊は大きな人的被害に直結することとなる。
このため、国、関係地方公共団体、公団、鉄道事業者等は、自ら管理する施設の耐震化を計画的・効率的に推進するものとし、国、関係地方公共団体等は民間の施設所有者等に対し、耐震改修促進法に基づく指導や、定期報告等の機会を利用した指導、啓発、政策融資の実施、その他の関連施策を重点的に実施するものとする。

(3) 公共建築物等

官公庁の庁舎、警察・消防署、学校、病院、市民利用施設等の公共建築物等については、平常時の機能の重要性に加え、震災時には応急対策活動の拠点ともなる施設であり、その耐震性の確保は極めて重要である。
特に、防災関係機関や医療機関等の重要な施設については、非常用の電源・熱源の確保や、耐震性の貯水槽の整備、コンピューターシステムのバックアップ等、地震に備えた施設整備を推進するとともに、必要に応じた臨時ヘリポート等の確保を図る等により防災性を向上させる必要がある。
公共建築物は民間建築物を誘導する上でも率先した対策を行うことが求められ、関係地方公共団体等各施設管理者においては、施設の耐震性、地震危険性の把握に努め、改修・更新、整備計画を策定する等、計画的、効率的に事業を推進するものとする。
この際、改修・更新等は極めて大きな費用と時間を要するものであることから、重要度・危険度に応じた優先順位をつけて事業を進めるとともに、国民、地域住民の理解を得つつ実施するため、的確な情報の公開に努めつつ推進するものとする。

(4) 設備機器・家具の固定、落下物・ブロック塀対策等

建築物等の耐震化に際しては、地震により構造体が損壊しない場合でも、付帯する電気、空調・衛生、情報機器等の設備、内外装等の二次部材、家具等が損壊、転倒等することで、人的な被害が発生し、また、施設が使用不能若しくは機能が著しく低下する場合があり、これらの耐震化、固定等を図ることが重要である。
また、都市部の高密な市街地では、建築物の外壁、門・塀等が公共の歩行空間に接して建てられることが多く、歩行者の安全を守り、応急対策活動の支障とならないよう、タイル・ガラス、空調機器、看板等の落下物対策、ブロック塀・自動販売機等の転倒防止対策を一層進める必要がある。このため、国、関係地方公共団体等は、特に避難路やスクールゾーン、通行量の多い繁華街などにおいて公的施設における対策の実施、民間施設所有者等への意識啓発、指導、また、政策融資等による資金的な支援措置等により対策の推進に努めるものとする。

(5) コンピューターシステム等

コンピューターシステムは、現代都市の高度な社会・経済機能を維持すると同時に、交通機関の制御等都市の安全性の確保においても不可欠なものとなっている。このため、機器等の耐震性の確保、バックアップの整備等が重要であり、国、関係地方公共団体は、関係団体と協力しつつ、システムの所有者等における各種基準・ガイドライン、認定・登録制度の一層の活用等を促進するとともに、政策融資等の助成、誘導策により所要の対策の普及、推進に努める。

2 不燃化・出火防止対策

阪神・淡路大震災では、倒壊による被害の次に大きな人的被害が火災により生じている。大規模震災時には火災が多発し、消防力が十分には及ばないことが明らかであり、発生件数を縮減することが極めて重要である。
震災時には、調理器具、暖房器具等から出火する可能性がある。このため、国、関係地方公共団体は機器の製造業界及び使用者等に対し各種安全装置の整備、普及等の指導、啓発を進めるとともに、阪神・淡路大震災で、電力の復旧に伴う通電火災が認められたことから、常時通電している電気機器が増えていることに留意した対策についても一層研究を進め、出火防止対策を推進していくものとする。
また、防災関係機関等は、出火危険性のある化学薬品等についての貯蔵、取扱いに関して、管理者の注意を十分喚起し、必要に応じた指導を行うものとする。
さらに、万一出火した場合でも、火災が拡大しないよう、国、関係地方公共団体等は、火気使用室等の区画や建築物、建材等の不燃化、初期消火設備の設置・普及等を推進するとともに、その管理が確実に行われる対策の一層の確立に努めるものとする。

3 危険物施設等の安全確保

南関東地域には、臨海部の産業施設を始め、内陸部にも高密度の市街地にガソリンスタンド、ボイラー施設、各種薬品類等危険な物質を取扱う施設が多数存在している。
こうした危険物施設等からの火災、爆発、漏洩等による被害の発生及び拡大を防止するため、防災関係機関は、各種法令及び技術基準等に基づく安全確保対策を、施設等の維持管理及び危険物等の生産、流通、貯蔵、取扱いの実態に即して徹底させる。このため、防災指導、検査等により、施設等の耐震化、緩衝地帯等の整備、不備欠陥の是正、保安体制の充実等を促進するとともに、防災要員の教育訓練の充実、関係団体を通じての自主的点検・管理体制の強化、防災資機材の整備充実、危険物移送・運搬車両の運行・取扱い基準の遵守・徹底等を推進する。
また、有害物質が漏洩することによる被害の拡大を防止するため、廃棄物施設等を所管する国、関係地方公共団体においては、施設の耐震化その他の対策を推進するものとする。
さらに、新たな危険物等の出現、危険物等の流通形態等の変容、危険物施設等の大規模化・多様化・複雑化等に的確に対応した安全確保対策の推進を図るものとする。

第2節 南関東地域の防災構造化

南関東地域は、東京を中心とした急激な都市化の中で、道路、公園等の都市基盤が十分に整わないまま高密度な市街地が形成され、また、崖地・軟弱地盤地など立地条件の良くない土地利用が進められ、大規模な地震が発生すると揺れの増幅や崖くずれ、市街地の延焼拡大等の危険性等が高く、さらに、応急対策活動の実施が困難となる都市地域が展開している。
このため、前節の構造物・施設等の地震防災性の向上と併せ、骨格的な都市基盤施設の整備、既成市街地の再整備、安全な土地利用の誘導等を行うことで地域の防災構造化を図ることは、震災被害を縮減するために不可欠の課題であり、国、関係地方公共団体は、都市整備投資の効率化や住民合意の形成等の課題に対応しつつ、計画的に進めていく必要がある。
また、大規模震災時においては、被災地における対応から、広域的な支援まで多様な応急対策の実施が求められることを踏まえ、それらを円滑に実施し得るよう、南関東地域を圏域として捉えた応急対策施設の体系的整備を推進する必要がある。
この際、各施設、事業等の所管部局等において対策を講じるとともに、調和のとれた効果的な対策が講じられるよう相互に必要な情報を交換しつつ推進するものとする。

1 交通基盤施設の体系的整備

(1) 道路

南関東地域には、大量の人員・物資を流通させる道路が集中しており、地域のみならず国の内外の経済・社会活動を支えている。震災によりこうした機能が低下することの被害は甚大なものとなる。
また、幅員の確保された道路網は、延焼火災を防止するとともに、避難、救助・救急、消火活動、緊急輸送等、応急対策活動を行う上で不可欠である。このため、国、関係地方公共団体、公団等は、機能の重要性、震災時の利用方法等を考慮しつつ、橋梁、擁壁等の補強等道路施設の耐震化を計画的に図るとともに、広幅員化、多重化、空路・海路・鉄道ともリンクしたネットワーク化を進め、震災時輸送機能の整備等を体系的に推進するものとする。
特に、都県の地域防災計画において指定された緊急輸送路等については南関東地域を一体としてとらえた情報として防災関係機関、道路管理者等で共有し、広域的な輸送活動を踏まえた効果的な整備、管理を進めるものとする。

(2) 鉄道等

南関東地域に高度に発達した鉄道等の大量輸送機関においては、震災時に、軌道、動力、管制施設等のいずれに障害があっても不通となり、大量の帰宅困難者等を発生する危険性を有している。このため、鉄道事業者等は、運行システムの総合的な耐震化を図るとともに、ネットワークを充実することで移動交通手段の確保を図るものとする。
また、阪神・淡路大震災では、比較的地下の構造物被害が軽微であったことから、地下鉄及び地下空間を利用した震災時の輸送活動等への活用について検討を進めるものとする。
さらに、駅は地域の中心的な立地にある公共的な施設であることから、震災時の情報拠点等としての整備、運用について鉄道事業者等と他の防災関係機関が連携した検討を進めるものとする。

(3) 港湾・飛行場等

東京湾岸の港湾は我が国の海上輸送の重要拠点であり、その機能維持は不可欠である。また、港湾・漁港は港湾緑地等のオープンスペースも含め、震災時には輸送を始め各種応急対策活動の拠点としての機能が期待される。
また、航空機やヘリコプターの離着陸できる飛行場は、震災時の調査、救助救急、緊急輸送・搬送などの機能が期待されている。
このため、港湾、飛行場等の諸施設の管理者は、施設の耐震性の強化を図るとともに、震災時の応急対策活動を想定し必要となる機能の検討等を進め、整備を推進するものとする。
また、その際、東京湾や荒川等の河川を利用した舟運の震災時利用を想定した河川防災ステーション等の整備などについても検討を進めるものとする。

2 ライフライン施設の体系的整備

電力、ガス、上・下水道、工業用水道、通信施設等のライフライン施設は、南関東地域において高密度に整備されており、これらは、震災被害を受けやすい架線や、復旧が困難な地下に埋設されているものが多く、一度被災すると、応急対策に大きな支障をもたらすとともに、広く、また、長期にわたり被災者の生活を始め、経済・社会活動に甚大な被害をもたらす。
このため、ライフライン事業者は、供給・処理施設、管路、架線等について、液状化等にも配慮した耐震化を進めるとともに、地震に強い共同溝等の整備、管理システムのバックアップ、必要な応急復旧資材の確保等を推進するものとする。
また、被害を最小限にとどめ早期復旧を可能とするための供給・処理拠点の多元化・分散化、供給ルートの分節化・地区単位の自立性の確保、一つの系統・ルートが被害を受けても機能が維持される多重化、ネットワーク化等リダンダンシーの確保を図るものとする。
さらに、これら施設の整備及び管理、震災時対応については、各ライフライン事業者、国、関係地方公共団体等において連携を密にし、ライフラインを強化すべき重要な施設、地域に関する情報や、各ライフライン被害の相互関係の把握等情報を共有することが重要であり、必要な情報交換、調整の場等を設けるものとする。

3 水面、公園・緑地その他のオープンスペースの体系的確保

南関東地域は、高密度な市街地が広がっており、特に都区部を中心とした30キロ圏においては、農地、森林等のオープンスペースが極めて少ないことが、地震危険性の高さや応急対策の実施の困難さの大きな要因となっている。
その中で、河川空間、公園・緑地や、公共・民間の所有するオープンスペースは震災時に延焼の拡大を防止するとともに、避難、応急収容、ヘリコプターの臨時離着陸、要員・資機材等の集積、がれき処理等、各種応急対策活動の拠点として重要な役割を果たす。
このため、国、関係地方公共団体は、防災上の効果、応急対策需要等を把握しつつ、配置、規模等について検討を進め、残された緑地等の維持・確保に努めつつ、防災緑地網やオープンスペース等を計画的、体系的に整備していくものとする。また、その際、防災関係車両やヘリコプターの進入、離着陸等への配慮、消火・生活用水の取水等、震災時の利用も想定した整備を推進するものとする。

4 防災活動拠点の体系的整備

南関東地域の防災構造化を図る上で、第2章に掲げる初動対応、情報・広報活動、救助・救急、消火活動、医療活動、緊急輸送活動、物資の調達・供給活動、避難・応急収容活動、応急復旧活動、二次災害防止活動など、種々の応急対策活動を行う場所として、地域レベルの拠点から広域的な活動の拠点まで多様な防災活動拠点を、活動内容等を踏まえ、必要な機能、施設を整備し相互のネットワーク化等を図りつつ、体系的に整備することが極めて重要である。

(1)

国においては、国の防災関係機関の防災中枢機能を果たす拠点として、緊急災害対策本部等を置くこととされている総理官邸、国土庁、防衛庁、立川災害対策本部予備施設等の機能の整備、充実を図るとともに、関東地方を管轄する国の防災関係機関が多く移転する大宮、与野、浦和地区で進められている防災拠点の整備の一層の推進、横浜市の新港埠頭に設けられた海上防災基地の機能の充実、主要大河川と幹線道路等の結節点付近における内陸防災拠点の整備の推進等を図るものとし、さらに、その他国が行う各種応急対策活動に応じた拠点の整備、確保について国の防災関係機関相互、また、関係地方公共団体等との連携の下に進めるものとする。
なお、地域に根ざした行政機関である郵便局については、その立地、郵政三事業が持つ情報通信機能、輸送機能等による地域の防災拠点としての役割が期待されることから、郵便局と関係地方公共団体等の連携の下、地域実状を踏まえ、郵便局の防災拠点化を進めていくものとする。

(2)

関係地方公共団体においては、防災センター等それぞれの本部が置かれる施設、設備の耐震性の向上、機能の充実に努めるとともに、コミュニティレベルの防災センター等とのネットワークの形成を進め、併せて応急対策活動に応じた各種の拠点整備を地域防災計画等に位置づけつつ、計画的、体系的に進めるものとする。

(3)

国と東京都等が整備する立川広域防災基地については、他の拠点も含めた体系的な拠点ネットワークにおける役割や運用等について一層の検討を進め、機能の充実に努めるものとする。

(4)

これら拠点の体系的整備に当たっては、国、関係地方公共団体、ライフライン事業者等が、それぞれの活動内容及び管理する施設、オープンスペース等、既存の防災拠点の情報や震災時の対応に関する情報等を共有しつつ、連携して進めることが不可欠であり、防災関係機関において必要な協議等を行いつつ進めるものとする。

5 既成市街地の再整備の推進

都市基盤施設が未整備であったり、老朽建築物等が高密度に立地している地震危険性の特に高い老朽木造密集市街地等においては、延焼の防止が図られ構造物等の耐震性等が確保された安全な街区への再整備を推進するため、土地区画整理事業、市街地再開発事業及びいわゆる密集法関連事業等を推進する必要がある。
さらに、駅前等の繁華街の防災性を向上する再開発、産業施設の移転跡地等を活用しオープンスペースの確保等を図る臨海部の再整備、浸水危険区域におけるスーパー堤防の整備と併せた沿岸の再整備等、多様な市街地の面的な再整備事業を推進し、都市の防災性を向上する必要がある。
こうした既成市街地の再整備には、地域の合意形成が不可欠であり、地域住民においては、その地域の延焼危険性や地震危険性を理解し、自ら参画し又は必要な協力等を行うことが期待される。
このため、関係地方公共団体等にあっては、再整備に向け関係地方公共団体施行の事業を円滑、迅速に推進するものとし、また、地域の合意形成に努め、組合施行等の事業の誘導を図るものとする。
また、国においては必要な助言、補助・融資・税制等の資金的若しくは技術的支援等を推進し、また、公団等は蓄積したノウハウを生かし、関係地方公共団体と協力して市街地の再整備に向けた事業を推進するものとする。

6 土地利用の規制・誘導

南関東地域は、地盤が軟弱な沖積平野を中心に市街地が形成され始め、市街地の拡大とともに周辺の丘陵地を造成しつつ土地利用が進められている。こうして既に高度に利用されている土地利用を、震源や被害の規模、発生時期等が確実に特定できない中で、地震危険性をもって排除することは非現実的であり、防火地域等の諸制度を活用し、今後の土地利用の更新等に際し、土地条件に応じた構造物等の防災性の向上を推進する必要がある。
このため、関係地方公共団体は、都市計画法の整備、開発又は保全の方針や、市町村の都市計画に関する基本的な方針などに、防災に関する方針を積極的に定めるとともに、災害危険区域や防火地域の指定等を必要に応じ進めるものとする。また、延焼危険性や液状化危険性等、都市の地震危険度の把握に努め、施設整備者が立地選定等をする際に自ら必要な対策、選択を行い得るよう危険度の公表等について一層検討を進めるものとする。
また、関係地方公共団体は、既成市街地における地区計画等を地域住民の合意形成を図りつつ導入することにより、地区内の建築物等の建て替え時における防災性の向上を漸進的に誘導する等の取組みについて一層の推進を図るものとする。
国は関係地方公共団体等に対し、必要な助言、計画技術の提供等支援を行うとともに、南関東地域を対象とした横断的な危険度の把握等について関係地方公共団体と連携しつつ検討を進めるものとする。

7 効果的な整備の推進

(1) 整備目標の共有と進捗状況の定期的把握等

大規模震災に対する防災関連の諸施設の効果的な整備を図り、広域的な応急対策活動の備えを行う上では、施設・市街地等の整備水準の把握、目標の設定、進捗状況の定期的な把握等が不可欠である。また、これらは、施設ごとに行われるのみならず、施設横断的にかつ圏域で地域横断的に防災関係機関において情報を共有しつつ行われることが求められる。
このため、国、関係地方公共団体等は、関係施設の整備水準の横断的把握に努め、改善目標の設定等について、諸施設の整備計画や地域防災計画等にできるだけ具体的に記述するとともに、定期的に進捗状況を把握し、防災関係機関において必要な情報の交換等を行うものとする。
また、国民、地域住民の的確な理解が得られるよう、整備水準、改善目標、進捗状況等や整備コスト、整備期間等についての公表等についてその在り方の検討を一層推進するものとする。

(2) 応急対策活動を踏まえた防災施設等の整備

避難地、避難路、避難場所となる学校や公園などのような震災時には重要な防災拠点等となる施設の整備や、市街地の再整備等に当たっては、防災関係機関と、施設、都市整備機関が連携し、震災時における応急対策活動を踏まえた整備、事業の実施を図ることが重要である。
このため、国、関係地方公共団体においては、防災関係機関から、具体的な活動内容、防災上有効な施設の仕様、施設量等の情報を、施設・都市整備機関等から事業の内容等の情報を、それぞれ交換する場等を設け、積極的に連携していくこととする。

(3) 住民・専門家との連携によるまちづくり

施設や都市の整備、再整備においては、住民の合意形成等、住民の理解と参画が不可欠である。また、地域住民が地震の危険性や、震災時の行政の対応、住民自らが行わなければならない対応、都市整備の効果と必要性等について理解をし、合意形成等を図る上では、行政のみならず防災、まちづくり等の専門家と連携しつつ、その専門的な情報や調整を受けて進めることが有効となっている。
このため、国、関係地方公共団体は、住民、専門家、行政の連携による防災関連の施設、都市整備等を推進するため、公共施設等の整備計画の作成や事業の実施等においては、住民や防災関連の専門家の意見を踏まえ進めるとともに、民間で進められる事業等において専門家等との連携が推進される環境の整備に努めるものとする。

(4) 都市的被害・対策の研究の一層の推進

多様な都市活動が行われている南関東地域において、その活動時間帯に大規模地震が発生した場合には、群集におけるパニックの発生、夜間の停電等による暗闇での混乱・事故の発生など、これまでの地震災害では明らかになっていない予想外の被害の態様が示されることも否定できない。このため、国等においては、大都市震災の被害について、様々な可能性の検討を行い、米国等地震国との交流も生かしつつ、一層研究を推進していくものとする。

第3節 国土構造における震災対策への配慮

国は、地震危険性の高い南関東地域の地域構造を、国土利用計画等の観点から改善するため、関連する国土保全事業を計画的に推進するとともに、全国総合開発計画や首都圏整備計画等、総合的・広域的な計画の作成に際しては震災対策を確実に位置づけ、また、その実施に際しては、国土や圏域の安全性の向上等計画に定められた震災対策に関する施策を確実に推進するものとする。
この際、震災に対する脆弱性等の問題を抱える東京一極依存構造の是正を図るため、業務核都市の育成整備、国の行政機関等の移転等による東京都区部、とりわけ都心部に集中した諸機能の分散を推進するものとする。
さらに東京一極集中の是正、国土の災害対応力の向上など国土政策上極めて大きな効果を有する首都機能移転について、その具体化に向けて積極的な検討を行うものとする。


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1998.6.23
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