南関東地域直下の地震対策に関する大綱

南関東地域直下の地震対策に関する大綱


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前文

1 本大綱決定及び改訂の背景

(1)
南関東地域においては、大正12年(1923年)の関東大震災以降大規模な地震災害を経験しないまま、人口、諸機能が著しく集積し、都市構造、都市住民の生活・行動様式の大幅な変化や企業活動の高度化等が進展した。このため、同地域は、地震災害に脆弱な地域構造となっており、地震の規模や震源地如何によっては、震災時に多数の人命、財産の損失を招く危険が大きく、さらに、都市機能の阻害等による二次的な影響が国民生活や経済の混乱となって被災地域を越えて著しく広域に波及するおそれがあるなど都市型の地震災害が発生・拡大するおそれが増大してきた。
このような状況を踏まえ、中央防災会議地震防災対策強化地域指定専門委員会において検討がなされ、平成4年8月21日の報告において、「今後直下の地震の発生の切迫性が高まってくることは疑いなく、100年から200年先に発生する可能性が高いと考えられる次の相模トラフ沿いの地震が起こるまでの間に、プレートの潜り込みによって蓄積された歪みのエネルギーの一部がマグニチュード7程度の直下の地震として数回放出されることが予想される」ことが明らかにされた。
また、同報告において、「直下の地震の発生により著しい被害を生ずるおそれのある震度6相当以上になる地域の範囲を推定し、この範囲において特に重点的に震災対策を講じるべき」ことが明らかにされた。
中央防災会議においては、同報告を受けて、直下の地震から住民の生命・身体・財産を守り、また、経済・社会活動の安定性を期するため、国、関係地方公共団体、関係指定公共機関等が講ずべき震災対策について検討を行い、平成4年8月21日に本大綱を決定した。
(2)
平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は戦後の我が国の大都市直下を襲った初めての大震災であり、大都市地域における震災対策をさらに積極的に推進する必要のあることが再認識された。同震災以降、国、地方公共団体等の各機関において講じられた対策、計画の改訂等を踏まえ、平成10年1月に中央防災会議に設置された大都市震災対策専門委員会においては、これら関係する機関が的確な連携を図りながら、大都市地域における震災対策をより効果的なものとするための検討が行われた。
(3)
今般、中央防災会議においては、本大綱に基づき南関東地域の震災対策を推進する中で得られた知見、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた新たな施策の展開や社会・経済状況の変化、また、大都市震災対策専門委員会の提言の趣旨等を受けて、本大綱を改訂した。改訂に当たっては、中央防災会議大都市震災対策連絡会議等を活用するとともに、関係地方公共団体とも意見交換を行いながら、特に阪神・淡路大震災後、防災関係機関等の連携により考え方等の整理を進めてきた南関東地域における震災対策のとりまとめを行った。

2 本大綱の対象地域、性格

(1)
本大綱は、直下の地震の発生による被害の防止・軽減をあらかじめ図るために、平成4年報告別図の範囲(以下「対象地域」という。)において講ずべき地震防災に関する対策について、当該対策を総合的に推進する上で当面する課題を掲げ、かつ、当該課題に係る施策の進め方を示したものである。国、関係地方公共団体、関係指定公共機関等は、一体となって、その緊密な連携の下に、逐次、本大綱に基づく対策の具体化及び推進を図るものとする。また、南関東地域内の住民や企業等においても、本大綱を踏まえた取組みの推進が図られることを期待するものである。
(2)
平成7年7月に防災基本計画が大幅に改訂され、新たに「震災対策編」が設けられた。同計画は、長期的かつ総合的な視点から我が国において防災上必要と思料される諸施策の基本について、国、地方公共団体、指定公共機関等における各々の役割等を定めており、本大綱は、同計画に基づき、南関東地域の震災対策を推進するに当たっての課題と施策の進め方を具体的かつ実践的に定めるものである。特に、本大綱において重点的に記述している防災関係機関等の連携が必要な課題については、大都市震災対策連絡会議等の場において必要な検討・申合せ等を行いながら取り組んでいくものとする。この場合、国は、関係地方公共団体等に対し、必要な支援、協力又は要請を行うとともに、国、関係地方公共団体それぞれにおいて検討を進める中で、相互の整合性の確保や共同の取組みが必要になる場合には、密接に連携を図っていくものとする。
(3)
本会議は、定期的に、関係省庁からの報告により、本大綱に基づく対策の具体化及び推進の状況について把握し、整理するものとする。また、課題についての検討成果、施策の進捗状況等を踏まえ、今後とも必要に応じて本大綱の見直しを行っていくものとする。
(4)
今回の本大綱の改訂に当たっては、南関東地域直下の地震だけでなく、相模トラフ沿いの地震、活断層による陸域の浅い地震、房総半島沖の地震、神奈川県西部地震等に係る対策にも活用できることを念頭に置きつつ、大都市震災対策専門委員会における提言においても切迫性の高まりが指摘された南関東地域直下の地震についての対策が急がれることから、一義的には直下の地震を想定した対策を取りまとめたところである。

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1998.6.23
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