記者発表資料
- 平成20年 3月25日
- 内閣府(防災担当)
中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」は、広域避難や孤立者の救助等の大規模水害発生時の応急対策等の検討に用いるため、国内でははじめて、洪水氾濫による死者数、孤立者数、浸水継続時間に関する被害想定をとりまとめた。
- 浸水継続時間
大規模水害時に、内水排除(注1)を目的に設置された排水ポンプ場が浸水により停止する場合があること等から、排水施設(注2)の稼動状況が異なるケースについて排水計算を実施した。
200年に1度の発生確率の洪水(昭和22年のカスリーン台風時に相当する降雨量による洪水)により、埼玉県大利根町で堤防が決壊した場合、
- a)排水施設が稼動しないケース
- 堤防決壊から1週間後に約160万人の居住地域(約310km2)が浸水し、その後も浸水が継続。
- b)排水施設が全て稼動するケース
- 堤防決壊から1週間後に約20万人の居住地域(約120km2)が浸水し、浸水面積の95%の排水が完了するまでに約3週間かかる
- 注1:
- 河川の水位が高いと堤内側(堤防によって守られる宅地や農地側)の雨水等の排水が困難となることから、ポンプ等により堤内地の湛水や堤内地側の水路等の水を堤外地へ排除すること。
- 注2:
- 排水ポンプ場、排水ポンプ車、水門等。
- 死者数
- 1)堤防決壊地点別の比較
200年に1度の発生確率の洪水による死者数は、茨城県古河市で堤防が決壊した場合に最大。この場合において、避難率が40%(注3)のときには、
- a)排水施設が稼動しないケースでは、死者数は約3,800人
- b)排水施設が全て稼動するケースでは、死者数は約3,500人
- 注3:
- 本資料で避難率40%の数値を取り上げたことは、その数値がどこでも代表的であることを意味するものではなく、避難率は、水害の切迫性を伝える各種情報の内容や提供時期、避難勧告等の時期や伝達、洪水ハザードマップの整備や避難訓練の実施等の普段からの備えの状況等によっても大きく変動しうる。
- 2)洪水規模が大きくなった場合の影響
埼玉県大利根町で堤防が決壊し、200年に1度の発生確率の洪水量(注4)の2割増の洪水量(約1000年に1度の発生確率)(注5)になった場合の死者数を算定。この場合に、避難率が40%のときには、
- a)排水施設が稼動しないケース
- 浸水面積、浸水区域内人口ともに1.1倍になるが、死者数は約1,500人から約2,700人へと1.8倍になる。
- b)排水施設が全て稼動するケース
- 浸水面積は1.2倍、浸水区域内人口は1.3倍になるが、死者数は、約800人から 約1,700人へと2.0倍になる。
- 注4:
- 流域平均雨量320mm/3日、洪水流量約22,000m3/s(伊勢崎市八斗島観測所)
- 注5:
- 流域平均雨量390mm/3日、洪水流量約26,000m3/s(同上)
- 1)堤防決壊地点別の比較
- 孤立者数
200年に1度の発生確率の洪水により、埼玉県大利根町で堤防が決壊し、警察、消防、自衛隊が関東地方に有する全てのボート数に相当するボートを用いて救助活動を実施(注6)した場合、避難率が40%のときには、
- a)排水施設が稼動しないケース
- 孤立者の救助の完了は14日後(約48万人救助)
- b)排水施設が全て稼動するケース
- 4日後に救助を完了(約12万人救助)
- 注6:
- 約1,900艇のボートにより、1日あたり12時間救助活動を実施
今後、大規模水害発生時のライフラインの支障、経済被害等の想定を実施し、被害軽減を図るため広域避難体制、孤立者の救助体制等の検討を行い、大規模水害対策をとりまとめる予定。
<問合せ先>
- 内閣府防災担当 地震・火山対策担当参事官
- 池内 幸司
- 同企画官
- 安田 吾郎
- 同参事官補佐
- 時岡 真治
- TEL:03-3501-5693(直通)
- FAX:03-3501-5199