富士山火山広域防災対策基本方針
平成18年2月 中央防災会議
富士山火山広域防災対策基本方針 目次
(3)噴火の可能性が高 まったことを内容とする「臨時火山情報」発表時
(3)入山自粛の呼びか け及び観光客・登山者・入山者の帰宅促進
(1)富士山は、1707年 (宝永四年)に噴火した後、約三百年間沈黙を守っている。この間、富士山周辺では様々な開発が行われ、現在、広大なすそ野では多くの人々の生活や経済活動 が営まれて、周辺には我が国の東西を結ぶ重要な道路や鉄道の幹線が存在している。また、その雄大な姿などから古くより我が国の象徴的存在として親しまれ、 豊かな自然環境と相まって、富士箱根伊豆国立公園に指定されており、年間約二千万人の観光客や登山者が訪れている。
(2)平成12年10月から12月、及び翌年4月から5月には富士山直下の深さ15km付近を震源とする低周波地震の多発が観測された。これより浅い地震活動や地殻変動等の異常は観測され なかったため、直ちに噴火の発生が懸念されるような活動ではなかったが、改めて富士山が活火山であることが認識されたところである。
現時点では、富士山について、将来の噴火の時期や規模を予測することは非常に困難であ る。しかしながら、広大な山麓では多くの人々の生活や経済活動が営まれ、交通の幹線や首都圏も直近であるため、仮に噴火した場合には、他の火山とは比較に ならない広範かつ多大な被害や影響が生じるおそれがあり、広域的な防災対策に特に万全を期しておく必要がある。
(3)近年の雲仙普賢岳、有珠山、三宅島の火山災害における教訓も 踏まえ、噴火した場合の影響範囲や避難施設等の防災情報を記した火山防災マップ(以下、「ハザードマップ」という。)について、火山防災対策の一環とし て、主要な活火山を対象に整備が進められており、住民等への配布も行われている。富士山においても、平常時から住民と防災機関が的確な情報を共有すること により、万一の場合の被害を減少させることができるだけでなく、風評被害の防止にも繋がることから、ハザードマップの整備が必要と認識されてきた。
(4)以上のような状況から、平成13年7月に、国、関係する県及び市町村により「富士 山火山防災協議会」が設立(のちに東京都も参加)され、火山防災対策の確立のため、平成16年6月に富士山のハザードマップの作成が行われた(図1、2参照)。
ハザードマップの作成においては、過去3200年間の噴火活動の実績を 踏まえて、火口範囲の想定、溶岩流、火砕流、融雪型火山泥流、降灰、噴石、土石流といったそれぞれの現象について数値シミュレーション等により各現象の到 達範囲等を求めた。
さらに、平成16年6月には、同協議会において、同ハザードマップを基に、国、県、市町村が役割分担を明確にした上で互いに協働 して行う広域的な防災対策、並びに富士山が日本でも有数の観光資源であることに配慮した防災対策について具体的な検討を行うこととなり、平成17年9月に「富士山火山広域防災対策」としてとりま とめられ、中央防災会議に報告されたところである。
(5)富士山が噴火した場合、噴火に伴う様々な火山現象が発生する 可能性があり、大規模噴火の場合は、広域かつ甚大な被害が発生する可能性がある。多種多様な噴火形態を示す全国の活火山においても、今後火山防災対策を確 立していくことが望まれるところであるが、今回とりまとめた富士山の火山広域防災対策は、その際に参考になる多くの知見を含むものと考える。
本基本方針は、このよ うな富士山火山広域防災対策の意義に鑑み、上記報告における「国が富士山火山広域防災に関する基本的方針を定める必要がある」との提言も踏まえ、関係地方 公共団体等をはじめとする関係機関の意見を十分に反映してとりまとめたものである。
(1)現在、富士山の活動が活発化する兆候は見られず、直ちに噴火 が発生する状況ではない。しかし、大規模な噴火が発生した場合、被害規模や影響は、他の火山に比べて甚大なものになることが想定される。溶岩流や融雪型火 山泥流等による被害は、富士山を行政区域に含む山梨県、静岡県内の複数の市町村に及び、また降灰による影響は、富士山から遠く離れた神奈川県や東京都を含 む首都圏にまで拡大する可能性がある。本基本方針は、以上のような富士山の噴火によって影響の及ぶ可能性のある地域を対象に、富士山火山防災対策として 国、都県、市町村等がとるべき方針を定め、今後の広域防災対策を積極的に推進することを目指したものである。
(2)富士山が噴火した場合には、過去の噴火についての調査、研究 によると、噴火に伴って様々な現象が発生する可能性がある。本基本方針は、その中でも、緊急かつ広域的な対応が求められる溶岩流、火砕流、融雪型火山泥 流、噴石・火山灰等の降下物、降灰後の雨による土石流等の各現象を視野に入れた対策を示したものである。
近年、富士山における観測体制は、まだ十分とは言えないまでも充実されてきており、噴火 には直ちに結びつかないような規模の小さい現象である低周波地震の発生を捉えることも可能になっている。さらに噴火予知技術の向上も加わり、富士山におい て規模の大きな噴火が発生する場合には、前兆現象が捉えられる可能性が高いものと考えられる。このため、噴火前に発表される火山情報に応じた避難対策につ いての基本方針及び予防、応急対策から復旧・復興対策に至る総合的な対策についての基本方針をとりまとめている。
(3)さらに、火山防災対策の推進には、“地域を知り、災害を知 る”ことが重要である。また、富士山が日本有数の観光資源であることから、観光業をはじめ地域経済に与える影響が大きい。このため、本基本方針において は、富士山についての啓発・教育や、火山との共生方策の一環としての豊かな自然環境、地域生活、産業等への配慮を踏まえた防災対策の推進を謳っている。
(4)中央防災会議は、定期的に関係府省からの報告により、本基本 方針に基づく対策の具体化及び推進の状況について把握し、整理するものとする。また、課題についての検討成果、施策の推進状況等を踏まえ、必要に応じ本基 本方針の見直しを行っていくものとする。
富士山が噴火した場合、被害や影響が広域に及ぶ可能性がある。また、多様な噴火の発生に よる災害の複雑化、被害や影響の長期化も懸念される。本基本方針は、こうした特徴を踏まえて、被害の軽減と影響範囲の拡大防止を目指すとともに、富士山が 日本有数の観光資源であることに配慮した防災対策を図るものである。
(1)富士山のハザードマップにおいて、溶岩流や融雪型火山泥流の 発生のおそれがあるとして事前に警戒すべき地域は、多くの人口を抱え、観光施設等も数多く含んでいる。富士山において噴火の可能性が高まった場合、あるい は噴火が発生した場合には、これらの範囲内の多くの住民や観光客・登山者・入山者の避難対策が必要となる。他市町村や他県への避難の可能性もあることか ら、市町村界や県境を越える広域避難を前提とした体制の確立が必要である。
また、避難行動を含めた緊 急時の対応に混乱を生じないためにも、火山情報と避難行動等の各種防災対応の実施時期や対象範囲等についてあらかじめ明確化しておくことが必要である。
(2)富士山周辺には、東西の交通を結ぶ主要な幹線道路や新幹線等 の主要交通機関が存在する。降灰や溶岩流等の範囲の拡大によっては、こうした主要な交通機関も直接的な被害を受けることになる。その結果、旅客輸送や物流 にも支障を来し、国内の産業や経済活動に大きな影響が出る可能性がある。また、観光客の減少など富士山周辺の観光産業への大きな影響が懸念される。
このため、国の防災関係機関は、火山活動に関する情報、被災情報をはじめ、応急活動の進 捗状況、各種機能・施設の復旧状況から物流や産業活動等日本全体に関わる情報を、迅速かつ確実に収集し共有する体制を確立する必要がある。さらに、物流、 産業活動、経済動向等日本全体に関わる情報については、富士山周辺のみならず国内外に情報発信する体制を確立する必要がある。
(3)過去の噴火についての調査、研究によると、富士山が噴火した 場合には、火山の噴火に伴う様々な現象が発生する可能性がある。また、噴火が発生した場合、火砕流発生の有無や溶岩流到達範囲等について、予測範囲を超え た推移をたどる可能性もあり、その場合には、発生する被害の種類が時々刻々変化しながら多岐に及ぶものと考えられる。このような複雑な様相を呈する火山災 害に対しては、市町村長による避難勧告等の判断の限界を越えることが予想される。
このため、避難行動等各種活動の実施判断や連絡調整について、国の非常(あるいは緊急) 災害現地対策本部は、富士山に隣接する静岡県及び山梨県(降灰や土石流の状況によっては東京都及び神奈川県を含む。以下、「県」という。)の現地災害対策 本部、富士山周辺の市町村(以下、「市町村」という。)の災害対策本部との間の情報共有や連絡調整体制(以下、「合同現地対策本部」という。)を確立し、 火山専門家を含めて関係機関相互の連携体制を強化することが、近年の火山災害の教訓からも不可欠である。
(4)溶岩流の流下や広範囲に及ぶ降灰によって被災地が拡大し、避 難者も多数に及ぶ場合、食料等の供給、医療活動等の各種防災対応において必要となる物資・資機材や活動要員の確保について、被災地の自治体だけではその対 応に限界が生じてくる。そこで、各種応急活動に関しては、広域的な応援を可能とする体制を構築しておくことが必要である。
火山活動が長期間継続すると、避難生活も長期化し、被災者への食料・物資の供給等の応 急・復旧活動も長期にわたることとなるため、各種支援により、被災した住民の生活、地域産業の早期再建を図る必要がある。特に、観光業等の地域産業に対し ては、風評による影響被害も勘案し、噴火前や噴火終息後における対策のあり方についても定めておく必要がある。
(5)富士山は、日本有数の観光地であると同時に、火山の知識を豊 富に得ることのできる教材でもある。国内外から数多く訪れる観光客に「火山を学ぶ」「火山を知る」など火山学習の機会をより一層提供することで、火山に関 する知識の広い普及に努めていくとともに、地域社会や学校等多様な場を活用して、火山に関する教育・啓発をさらに進めていくことが重要である。
国、県、市町村及び大学等研究機関は、平常時から協同し て、山体全体をカバーできるよう富士山の火山活動に関する監視、観測体制の充実整備を図る。
国(気象庁)は、富士山の監視観測情報、通報情報等を集約 し、関係機関との情報共有を図る。
県、市町村は、住 民及び観光客・登山者・入山者(以下、「住民等」という。)が、富士山周辺において井戸水の変化や噴気の発生等の異常な現象を発見した場合に、市町村、消 防機関、警察署等(以下、「市町村等」という。)へ速やかに通報できるよう通報設備や通報先の周知徹底等の体制を整備する。
市町村等は、住民 等から通報があった場合、速やかに県に伝達する。
県は、市町村等から受理した異常な現象に関する情報を、速 やかに国(気象庁)に伝達するとともに、地元において富士山に詳しく適宜解説等の情報交換が行える火山専門家(以下、「火山専門家」という。)とも情報の 共有を図る。
火山専門家と地方気象台は連携して、富士山の監視観測情 報、県を通じて得た通報等を基に、県、市町村等へ火山活動の状況を解説する。
国は、火山活動に関する情報、被災情報、応急活動の進捗状 況、各種機能・施設の復旧状況、住民の生活に関わる支援情報、物流や産業活動等の情報を、防災関係機関が迅速かつ確実に共有できるよう、防災情報共有プ ラットフォーム等も活用しつつ、情報共有体制の構築を進める。
国及び大学等関係研究機関は、噴火履歴のデータ蓄積を行 い、噴火影響範囲をより的確に予測するための研究を進めるとともに、その成果を活かし、適切な避難体制の確立に向けた現行のハザードマップの高度化、リア ルタイムハザードマップの実用化のための調査・研究・技術開発を推進する。
避難範囲の設定等を行うためには、異常現象の分析や噴火の 見通しのための専門的知識が必要である。国、県、市町村は、異常時に火山活動の状況を判断する気象庁や火山噴火予知連絡会との円滑な連携に努めるととも に、地域の状況等に詳しい火山専門家及び地方気象台と連携して、必要に応じて、アドバイス等を受けられる体制を構築する。
国は、富士山噴火災害が発生した場合の広域防災対策を迅速かつ的確に講じるため、関係地 方公共団体の協力を得つつ、災害発生時における主として国の支援等に係る広域的活動、役割分担等について、あらかじめ検討する。
@広域応援協定による対応の検討
県は、全国都道府県における災害時の広域応援に関する協定等の既往の広域応援協定を踏まえ、富士山噴火災害における具体的な広域応援内容、要請時期及 び手順、支援の受入れ体制等について検討する。
A近隣県相互応援体制の確立
県は、各種応援協定も踏まえ、富士山噴火災害における近隣 県相互の応援内容について、活動の実施時期、活動に必要な職員、資機材等の確保体制、具体的な活動方法を定めた応援協定の締結等による連携強化を進める。 国は、近隣県相互の応援体制の整備に努める。
B近隣市町村間相互応援体制の確立
市町村は、富士山噴火災害における近隣市町村相互の応援内 容について、活動の実施時期、活動に必要な職員、資機材等の確保体制、具体的な活動方法を定めた応援協定の締結を進める。県は、これら市町村間相互の応援 協定の締結の促進を図る。
C関係事業者等との協定確立
県、市町村は、緊急時の応援要請や応援活動が円滑に行われ るように、平常時から、関係事業者等と協議を行うとともに、各種応急活動に関わる災害時応援協定の締結を進める。
富士山が噴火した場合には、被害や影響が広範囲 に及ぶ可能性があることから、国、県、市町村等の連携が重要である。このため、国(気象庁)の発表する火山情報(火山観測情報、臨時火山情報、緊急火山情 報)の内容に応じた初動体制の整備を進めるものとする。
国、県、市町村は、緊急時の防災対応に備えた各種点検を開 始する。
国、県、市町村は、火山活動の把握に必要な観測体制の強化 を図り、情報収集・連絡体制を確立する。また、緊急時の防災対応に備えた各種点検、準備を実施する。また、国(気象庁)及び大学等関係研究機関は、合同で 速やかに観測強化を図る。
国(気象庁)は、必要に応じて火山噴火予知連絡会を開催す る。
(3)噴火の可 能性が高まったことを内容とする「臨時火山情報」発表時
国(気象庁)は、 火山噴火予知連絡会を開催するとともに必要に応じて「富士山部会」を設置する。富士山部会は、県、市町村の関係部局に対し火山活動の状況説明等を行うな ど、火山に関する専門的な観点から情報を提供する。
火山専門家は、火山噴火予知連絡会富士山部会が設置された際に、協力して火山活動の状況 をわかりやすく県、市町村等へ解説する。
国は、関係省庁において、情報収集・連絡体制を強化する等 噴火に備えた警戒体制を確立する。
県、市町村は、噴火に備えた警戒体制を確立するとともに、 警察、消防機関と連携して災害時要援護者の避難や自主避難者等に対応する。
国、県は、ヘリコプター等による監視を開始し、映像等を国 等へ配信する。
国は、関係省庁において、噴火に備えた警戒体制を強化する とともに、省庁間の連携の強化を図る。また、噴火した場合に速やかに非常(あるいは緊急)災害対策本部(以下、「非常災害対策本部等」という。)が設置で きる準備を整える。現地においては、派遣された担当官等による省庁間の連絡調整体制を確立する。
県、市町村は、速やかに災害対策本部を設置する等の噴火に 備えた体制を確立し、住民等の避難をはじめ各種応急活動を実施する。なお、市町村は、溶岩流の流下や大量降灰による市町村の本庁舎への被災に備え、あらかじめ災害 対策本部設置予定施設の代替施設の候補も選定しておくものとする。
国の現地担当官は、監視観測情報・通報等を集約するなど、県、市町村との情報共有や連絡調整体制(以下、「合同現地警戒本部」という。)を確立し、連携して対応す る。また、火山活動の状況を、国、県、市町村等へ解説する。
国、県、市町村等は、合同現地警戒本部について、派遣要員及びその派遣方法や輸送手段を 定めた要員派遣計画を策定するなど、初動体制をあらかじめ定めておくものとする。
国は、噴火が確認され住民等の避難が必要と判断された段階 で、非常災害対策本部等を設置する。非常災害対策本部等は、合同現地対策本部と連携し、防災関係機関から情報を収集するとともに、関係機関間で共有できる ように努めるものとする。
@合同現地対策本部の設置
噴火が確認され住民等の避難が必要と判断された段階で、 国、県、市町村等は、合同現地警戒本部を合同現地対策本部へ移行し、引き続き連携して対応する。
このため、国は、県、市町村等と連携し、あらかじめ合同現地対策本部において派遣する職 員等について検討し、組織体制の計画を策定するものとする。
A班の設置
合同現地対策本部設置後は、情報収集、広報、避難対策等の 主要な活動別に、国、県、市町村、関係機関の要員からなる班を立ち上げ、それぞれ担当する活動にあたる。
B合同現地対策本部における意思決定体制
合同現地対策本部では、定期的に全体会議を開催し、関係者 間の情報共有と連絡調整等を行うことを通じ、国、県、市町村の意志決定の迅速化及び相互調整を図る。
@被害状況の収集体制
合同現地対策本部は、地上調査及びヘリコプターによる上空 からの調査等多様な手段を用いて被害状況の把握に努める。
A被害調査の安全確保体制
合同現地対策本部は、被害状況調査にあたる要員等の安全確 保のため、火山監視により、緊急的な指示ができる体制を確保する。
また、被害状況調査にあたっては、要員等が緊急時に速やか に退避できるように、緊急連絡のための通信手段等を確保する。
噴火時においては、合同現地対策本部は、住民等の避難状 況、関係機関による応急・復旧活動状況を集約し、国、県、市町村、その他関係機関へ伝達し、報道機関の協力の下、広報を行う。
国の非常災害対策本部等は、物流、産業活動、経済動向等の 国全体に関わる情報について、必要に応じて報道機関と連携して全国に情報発信する。
合同現地対策本部は、火山活動が活発化した場合 は、収集された各種情報に基づき、ハザードマップ等を活用して噴火による影響範囲の予測を行い、避難範囲の目安になる危険ゾーンの設定について検討する。
また、合同現地対策本部は、火口位置が確定また は予測された場合は、リアルタイムハザードマップ等を活用して噴火による影響範囲の予測や危険ゾーンの設定等について検討する。
合同現地対策本部は、記者会見場や報道機関関係者の待機ス ペースの確保に努め、報道機関との円滑な連携や、報道対応の一元化を図る。
合同現地対策本部は、定期的に記者会見を行う等、火山活動 や被害の状況及び関係機関の防災対応について広く住民等へ周知する。
噴火前避難においては、火山活動状況に応じて混 乱なく避難等の対応が実施されるよう、火山活動の状況に応じて発表される「臨時火山情報」及び「緊急火山情報」等に基づき、避難対象者の特性を踏まえた避 難対策をとるものとする。
(1) ハザードマップに基づくゾーンの設定(表1、図3参照)
ハザードマップに基づき、富士山火山噴火による影響の度合いに応じて、周辺地域を第1次 ゾーンから第4次ゾーンに区分する。
@第1次ゾーン
ごく小規模の噴火であっても、瞬時に降下物・流下物による危険の及ぶ可能性のある範囲と して、ハザードマップに基づく火口分布領域を第1次ゾーンとする。
A第2次ゾーン
噴火が発生すると、短時間で降下物・流下物による危険の及ぶ可能性のある範囲として、ハ ザードマップに基づく噴石、火砕流・火砕サージの到達範囲あるいは溶岩流3時間以内到達範囲(積雪時においては、融雪型火山泥流の到達範囲)を第2次ゾーンとす る。
B第3次ゾーン
噴火が発生すると、やや時間をおいて流下物による危険の及ぶ可能性のある範囲として、ハ ザードマップに基づく溶岩流24時間以内到達範囲を第3次ゾーンとする。
C第4次ゾーン
想定される最大規模の噴火であれば、最終的に流下物が到達する可能性のある範囲として、 ハザードマップに基づく溶岩流最大到達範囲を第4次ゾーンとする。
市町村は、あらかじめ、ゾーンの境界線を参考に、これを包含し、行政界や地理・地勢等を 利用した住民にわかりやすい境界を有する噴火前避難範囲として、第1次ゾーンに基づいた「臨時火山情報」発表時の避難範囲(以下、「臨時火山情報時避難範 囲」という。)、第2次ゾーンに基づいた「緊急火山情報」発表時の避難範囲(以下、「緊急火山情報時避難範囲」という。)、第3次ゾーンに基づいた災害時 要援護者を主に対象とした避難範囲(以下、「災害時要援護者避難範囲」という。)を設定するものとする。
なお、噴火前の避難先は、災害時要援護者については、第1次ゾーンから第4次ゾーンより 外側、一般住民等については、第1次ゾーンから第3次ゾーンより外側とする。
(3) 入山自粛の呼びかけ及び観光客・登山者・入山者の帰宅促進(表2参照)
@実施基準と対象範囲
市町村は、注意喚起を内容とする「臨時火山情 報」(以下、「臨時火山情報(注意喚起)」という。)が発表された場合、臨時火山情報時避難範囲を基本として、入山自粛の呼びかけを実施する。
市町村は、噴火の可能性が高まったことを内容と する「臨時火山情報」(以下、「臨時火山情報(噴火の可能性)」という。)が発表された場合、臨時火山情報時避難範囲を基本として、避難の勧告または指示 を行い、災害時要援護者避難範囲を基本として、観光客・登山者・入山者(以下、「観光客等」という。)への観光自粛、帰宅の呼びかけを実施する。
市町村は、「緊急火山情報」が発表された場合、 緊急火山情報時避難範囲を基本として、避難の勧告または指示を行い、災害時要援護者避難範囲を基本として、観光客等への観光自粛、帰宅の呼びかけを継続す る。
A入山自粛の実施体制
市町村は、「臨時火山情報(注意喚起)」が発表 された場合、山小屋への情報伝達、警察や消防機関との連携による立て看板の設置や巡回等により、登山者・入山者へ入山自粛や早期下山を呼びかける。また、 防災行政無線、広報車等により、入山自粛呼びかけの広報を行う。
県は、警察及び道路管理者と連携して、一般道の 要所における立て看板の設置等により入山自粛を呼びかけるほか、可能な範囲でヘリコプター等を活用した広報も行う。また県は、地元報道機関に対し、入山自 粛呼びかけについての報道を依頼する。
国、県、市町村は、旅行会社、鉄道・バス等の旅 客輸送関係事業者、道路管理者等に対し、入山自粛に関する情報発信を依頼する。
B観光客等の帰宅促進の実施体制
「臨時火山情報(注意喚起)」が発表された場 合、観光施設など不特定多数が集まる集客施設においては、平常どおり営業を継続する場合、施設利用者に対して情報の伝達を確実にする体制をとるとともに、 輸送車両の確保等緊急時の避難に関する準備を開始するものとする。
市町村は、「臨時火山情報(噴火の可能性)」や 「緊急火山情報」が発表された場合、広報車、防災行政無線、ホームページ等あらゆる手段を活用して、帰宅促進の広報を行う。また、避難の勧告または指示等 を行った場合には、地元観光協会、関連する観光事業者に伝達し、観光客の避難や帰宅促進・観光自粛の対応を呼びかける。
市町村は、観光客等への情報伝達・広報のため、 あらかじめ、宿泊施設、観光施設・別荘管理事務所等に防災行政無線(同報系戸別受信機、地域防災無線)の配備を進める。
県は、地元報道機関に対し、観光客帰宅促進・観 光自粛に関する報道を依頼する。国は、国内及び海外に向けて、富士山周辺地域の観光自粛の状況を広報する。ただし、観光自粛の範囲が必要以上に拡大しない よう留意する。
県、市町村、観光協会は、観光客の誘導に当た り、観光施設、宿泊施設等に対して道路の規制及び交通機関の運行に関する情報等を収集して提供するとともに、輸送手段を確保する。
観光事業者は、あらかじめ観光客等の誘導のため の避難誘導計画を策定し、非常時の対応に関する従業員教育の実施を図るとともに、ハザードマッ プ等を主要施設に常備する。また、県、市町村、観光事業者は、あらかじめ、富士山噴火災害を想定した観光客の避難誘導訓練等を実施する。
(4) 一般住民の噴火前避難(表2参照)
@実施基準と対象範囲
市町村は、「臨時火山情報(噴火の可能性)」が 発表された場合、臨時火山情報時避難範囲を基本として、避難の勧告または指示を行う。緊急火山情報時避難範囲については必要に応じて避難の準備を呼びかけ る。
市町村は、「緊急火山情報」が発表された場合、 緊急火山情報時避難範囲を基本として、避難の勧告または指示を行う。災害時要援護者避難範囲については必要に応じて避難の準備を呼びかける。
A避難方法
「臨時火山情報(噴火の可能性)」発表時における避難方法は、一時集合場所まで徒歩で集 合した後に、バス等の車両を用いて集団避難するものとする。なお、対象となる人数が比較的少なく、避難所まで距離がある等の場合には、自家用車による避難 も考慮するものとする。
「緊急火山情報」発表時における避難方法は、避難の対象となる人数が比較的多く、道路の 渋滞が懸念されることから、原則として一時集合場所まで徒歩で集合した後にバス等の車両を用いて集団避難するものとする。
B実施体制
○情報伝達・広報
市町村は、広報車、防災行政無線等の手段によ り、一般住民に対し避難の実施または避難準備を呼びかける。情報伝達・広報に当たっては、事前に自主防災組織や消防団との協力体制を確立しておく。
県は、地元報道機関に対し、一般住民の噴火前避 難に関する報道を依頼する。また、県、市町村は、インターネットを活用した広報も行う。
○避難所等の受入れ体制
市町村は、ハザードマップを基に、避難所、一次 避難所及び一時集合場所をあらかじめ選定する。また、他市町村への避難が必要な場合には、県及び関係機関の協力を得ながら、他市町村の受入れ体制について も検討する。
○輸送手段・輸送路の確保
市町村は、災害時の避難者輸送を迅速に実施する ため、あらかじめ一時集合場所、予想避難者数、避難先・避難ルート等について検討し、県やバス事業者等との調整を図り、避難者の輸送計画を策定する。
○自主避難者への対応
市町村は、「臨時火山情報(噴火の可能性)」が 発表された場合、緊急火山情報時避難範囲及び災害時要援護者避難範囲の避難所に職員を派遣し、自主避難者のための一次避難所を開設する。
@実施基準と対象範囲
市町村は、「臨時火山情報(噴火の可能性)」が 発表された場合、災害時要援護者避難範囲を基本として、一般住民に対して避難準備を呼びかけるとともに、災害時要援護者等、特に避難行動に時間を要する者 に対して、その避難行動支援対策と対応しつつ、早めの段階で避難行動を開始することを求める避難準備(災害時要援護者避難)情報を発表する。
A避難方法
避難方法については、災害時要援護者が入所している施設(以下、「要援護者施設」とい う。)においては、原則として、施設単位による集団避難とする。また、災害時要援護者のうち自宅において生活している人(以下、「在宅要援護者」とい う。)及びその家族等においては、巡回収容等による集団避難もしくは自家用車等による避難とする。
B実施体制
○災害時要援護者の事前把握
市町村は、個人情報保護の観点に十分配慮しつ つ、災害時要援護者に関する情報を、可能な範囲であらかじめ把握した上で、災害時要援護者に応じた避難支援の体制をあらかじめ定めておくものとする。
○情報伝達・広報
市町村は、電話、FAX、防災行政無線等、要援護 者施設に配備されている通信手段を活用するとともに、担当職員による施設個別訪問等の手段によって、噴火前避難の対象となる要援護者施設に対して避難準備 (災害時要援護者避難)情報を迅速かつ確実に伝達する。また、民生委員や自主防災組織等の協力を得ながら、個別訪問等により噴火前避難の対象となる在宅要 援護者に対して避難準備(災害時要援護者避難)情報を迅速かつ確実に伝達する。県は、地元報道機関に対し、避難準備(災害時要援護者避難)情報に関する報 道を依頼する。
○在宅要援護者への対応
市町村は、「臨時火山情報(噴火の可能性)」が発表された場合に、福祉避難所を開設する。また、自ら避難手段を確保することのできない在宅要援護者について、自主防災組織や福祉 関係者と連携して避難行動を支援する。なお、福祉施設等を活用した福祉避難所を、在宅要援護者の避難先としてあらかじめ指定しておくものとする。
○要援護者施設の災害時要援護者への対応
災害時要援護者避難範囲に含まれる要援護者施設 は、「臨時火山情報(注意喚起)」が発表された場合、受入れ施設の確認、輸送手段の確保等避難の準備を行う。
なお、要援護者施設は、災害時要援護者の受入れ 施設をあらかじめ定め、災害時受入れに関する協定を締結するとともに、搬送手段について定めておくものとし、県、市町村は、受入れ施設及び搬送手段の確保 に関する支援を行う。
@実施基準と対象範囲
「臨時火山情報(噴火の可能性)」が発表された 場合、緊急火山情報時避難範囲を基本として家畜避難を実施する。
A実施体制
県、市町村は、家畜関係事業者と協力し、あらか じめ避難先として利用可能な施設や運搬手段の確保等に留意した家畜移送計画を策定しておくものとする。
家畜関係事業者は、家畜移送計画に基づき家畜の 避難を実施する。
噴火時避難に関しては、噴火に伴う各火山現象の 発生状況(以下、「噴火の状況」という。)に応じつつ避難対象者の特性を踏まえた避難措置をとるものとする。
噴火の状況等に関する専門的判断に基づき、その 影響の度合いや内容に応じて、周辺地域を新たに以下の第1次ゾーンから第5次ゾーンに区分する。また、火砕物噴火時に第5次ゾーン内に設ける「降下物危険 ゾーン」及び「降下物注意ゾーン」、火山灰堆積時の降雨時に備え設ける「土石流危険ゾーン」を設定するものとする。
合同現地対策本部は、気象庁や火山噴火予知連絡 会等火山専門家を含めた検討により、噴火開始後の影響範囲を判断し、県、市町村に伝達する。噴火開始後の影響範囲については、噴火の状況に応じて適宜見直 すものとする。
市町村は、合同現地対策本部において検討された ゾーン区分の境界線を参考に、これを包含する範囲に噴火時における避難範囲を設定する。
@第1次ゾーン
天候、風向等にかかわらず、瞬時に降下物・流下 物による危険の及ぶ可能性がある範囲として、出現した火口及び今後火口が開くと想定される範囲を第1次ゾーンとする。
A第2次ゾーン
天候、風向等にかかわらず、短時間で降下物・流下物による危険の及ぶ可能性がある範囲と して、噴石等による危険がある範囲、今後溶岩流が概ね3時間以内に到達すると考えられる範囲、標高1,800m程度以上の急傾 斜地で噴火し火砕丘の発生が確認された場合及び火砕物噴火の発生が認められた場合に、火砕流(火砕サージを含む。以下同様。)が到達する危険性がある範囲、積雪時において融雪型火山泥流の到達する危険性がある範囲を第2次ゾーンとする。
B第3次ゾーン
天候、風向等にかかわらず、やや時間をおいて流下物による危険の及ぶ可能性がある範囲と して、今後溶岩流が到達する可能性が高いと考えられる範囲を第3次ゾーンとする。
C第4次ゾーン
現状で想定される最大規模の噴火であれば、最終的に流下物による危険の及ぶ可能性がある 範囲として、今後溶岩流が到達するおそれのある範囲を第4次ゾーンとする。
D第5次ゾーン
現状で想定される最大規模の噴火でも、流下物による危険のおそれはないが、降下物による 影響の及ぶ可能性がある範囲として、降灰堆積厚が概ね2cm以上火山灰が降下すると考えられる範囲を第5次ゾーンとする。
E降下物危険ゾーン及び降下物注意ゾーン
大量の火山灰等堆積により、堅固でない建物が崩壊する可能性がある範囲として、大量の火 山灰(降灰堆積厚約30cm以上)・火山レキ等が降下している、またはそのおそれがある範囲を降下物危険ゾーンと し、飛来する火山レキ等により、屋外にいる人に危険が及ぶ可能性がある範囲として、火山灰とともに直径数cmの火山レキ等が降下してい る、またはそのおそれがある範囲を降下物注意ゾーンとする。
F土石流危険ゾーン
降雨により、瞬時に流下物による危険の及ぶ可能性がある範囲として、火山灰の堆積状況か ら降雨により土石流の流下危険があると考えられる範囲を土石流危険ゾーンとする。
@対象範囲
噴火時に、溶岩流の流下が確認されず、かつ火砕 流のおそれがないと判断された場合、噴石に備えるとともに、火砕流及び溶岩流が発生する場合に備えて、一般住民等については第1次ゾーン及び第2次ゾーン に基づく範囲を一般住民等噴火時避難範囲として、災害時要援護者については第1次ゾーンから第3次ゾーンに基づく範囲を災害時要援護者噴火時避難範囲とし て、それぞれ避難措置をとるものとする。
ただし、新たなゾーン区分が判断されるまでは、 ハザードマップに基づく噴火前のゾーン区分を用いるものとする。
A避難先・避難方法
避難先は、一般住民等については一般住民等噴火時避難範囲外、災害時要援護者については 災害時要援護者噴火時避難範囲外とする。
災害時要援護者の避難方法は、要援護者施設については、原則として、施設単位による集団 避難とする。また、在宅要援護者及びその家族等については、巡回収容等による集団避難もしくは自家用車等による避難とする。
一般住民等の避難方法は、原則として一時集合場所まで徒歩で集合した後にバス等の車両を 用いて集団避難するものとする。
B実施体制
○情報伝達・広報
原則として、一般住民及び災害時要援護者の噴火前避難における情報伝達・広報と同様に実 施する。
○避難者の受入れ
避難者の受入れ体制は、原則として、一般住民の噴火前避難における避難所等の受入れ体 制、災害時要援護者の噴火前避難における在宅要援護者への対応及び要援護者施設の災害時要援護者への対応と同様とする。
○輸送手段・輸送路の確保
市町村は、避難所への輸送手段の確保のため、必要台数を決定しバス事業者に要請を行う。 また、あらかじめ定めた避難ルートについて被災状況等を確認し、輸送路としての利用の適否を確認する。
@対象範囲
溶岩流の流下が認められた場合は、一般住民等に ついては第1次ゾーンから第3次ゾーンに基づく範囲を一般住民等噴火時避難範囲として避難の指示を行い、災害時要援護者については第1次ゾーンから第4次 ゾーンに基づく範囲を災害時要援護者噴火時避難範囲として避難準備(災害時要援護者避難)情報を発表する。
溶岩流の噴出が継続している場合には、1日 1〜2回程度の割合で流下速度等を確認し、避難範囲の拡大あるいは縮小を検討する。
A避難先・避難方法
避難先は、一般住民等噴火時避難範囲外、または 溶岩流の流下方向における、災害時要援護者噴火時避難範囲外のいずれかを選定する。避難先の設定にあたっては、繰り返し避難を避けることに留意するものと する。
避難方法は、原則として、噴石等からの噴火時避難と同様の方法とする。
B実施体制
○情報伝達・広報
原則として、一般住民及び災害時要援護者の噴火 前避難における情報伝達・広報と同様に実施する。
市町村は、あらかじめ把握した情報に基づき、新 たに避難の対象となる要援護者施設や在宅要援護者をリストアップし、避難準備(災害時要援護者避難)情報を伝達する。
○避難者の受入れ
避難者の受入れ体制は、原則として、一般住民の 噴火前避難における避難所等の受入れ体制、災害時要援護者の噴火前避難における在宅要援護者への対応及び要援護者施設の災害時要援護者への対応と同様とす る。
合同現地対策本部は、市町村が避難所を他市町村 に確保する場合、あらかじめ準備された避難所の情報に基づき、受入れ施設の調整を行う。さらに、噴火時避難の必要となった要援護者施設に対し、受入れ施設 及び搬送手段の確保に関する調整を行う。
○輸送手段・輸送路の確保
市町村は、避難所への輸送手段の確保のため、必 要台数を決定しバス事業者に要請を行う。また、あらかじめ定めた避難ルートについて被災状況等を確認し、輸送路としての利用の適否を確認する。
合同現地対策本部は、市町村から避難者の輸送手 段の確保を依頼された場合、県内外のバス事業者等への要請、避難ルートにおける被災状況の把握、代替ルート及び代替輸送手段の確保等により、市町村を支援 する。
(4) 火砕流及び融雪型火山泥流の流下に備えた噴火時避難(表4参照)
@対象範囲
一般住民等については第1次ゾーン及び第2次 ゾーンに基づく範囲を一般住民等噴火時避難範囲として、同様に災害時要援護者についても第1次ゾーン及び第2次ゾーンに基づく範囲を災害時要援護者噴火時 避難範囲として、いずれも避難の指示を行う。
A避難先・避難方法
避難先は、火砕流が到達する危険性がある範囲外 とする。また、積雪時においては、融雪型火山泥流の到達範囲外とし、泥流の危険が及ばない高台等への避難とする。
避難方法は、原則として、噴石等からの噴火時避難と同様の方法とするが、緊急を要する避難においては、自家用車等により早めに避難する。
B実施体制
○情報伝達・広報
原則として、一般住民及び災害時要援護者の噴火 前避難における情報伝達・広報と同様に実施する。
○避難者の受入れ
避難者の受入れ体制は、原則として、一般住民の 噴火前避難における避難所等の受入れ体制、災害時要援護者の噴火前避難における在宅要援護者への対応及び要援護者施設の災害時要援護者への対応と同様とす る。
市町村は、あらかじめハザードマップ等を踏ま え、低地や谷筋など積雪時における融雪型火山泥流の危険範囲を特定するとともに、その際の最寄りの高台等における避難先を選定しておくこととする。
市町村は、あらかじめ選定していた候補施設のう ち必要な箇所に職員を派遣し、避難所を開設する。なお、市町村は、職員派遣が間に合わない場合に利用する避難所の開設方法についても検討しておくものとす る。
○輸送手段・輸送路の確保
輸送手段、輸送路の確保については、溶岩流の流 下に備えた噴火時避難と同様とする。
@対象範囲
降下物注意ゾーンを降下物注意範囲として、屋内 退避の呼びかけを行う。また、降下物危険ゾーンを降下物危険範囲として、堅牢建物屋内退避の呼びかけを行う。
A避難先・避難方法
近隣に堅固な建物がない地域については、最寄り の地区の堅固な建物を避難先とする。
避難方法は、原則として徒歩とする。ただし、近 隣に堅固な建物がない地域については、自家用車等により早めに避難する。
合同現地対策本部は、大量の火山灰降下による生 活への多大な影響が予想される住民について、降灰の影響が及ばない地域への避難を検討する。
B実施体制
○情報伝達・広報
市町村は、防災行政無線、広報車の巡回等によ り、屋内退避及び堅牢建物屋内退避の広報を行う。県は、地元報道機関に対し、屋内退避及び堅牢建物屋内退避に関する報道を依頼する。
○避難者の受入れ
市町村は、あらかじめ選定した小中学校や公民館 等のうち堅牢な建物を降灰時避難所として開設する。
市町村は、大量降灰が突発的に発生した場合に、 選定した降灰時避難所に、住民等が迅速に避難することが可能となるよう、施設管理者及び自主防災組織等と協議し、あらかじめ管理方法について定める。ま た、合同現地対策本部において大量降灰地域外への避難が必要であると判断された場合は、降灰時避難所に避難している住民等を大量降灰地域外の避難所へ誘導 する。
○輸送手段・輸送路の確保
輸送手段、輸送路の確保については、溶岩流の流 下に備えた噴火時避難と同様とする。
@対象範囲
土石流危険ゾーンを対象に、土石流警戒範囲とし て、「大雨警報」等発表時には避難の指示を行う。
A避難先
避難先は、土石流警戒範囲外とする。
B実施体制
○情報伝達・広報
合同現地対策本部は、火山灰堆積時の土石流発生 に備えて設置された雨量計、土石流検知センサー等の監視観測システムについて、火山活動の状況に応じて、監視観測体制の強化を検討する。また、降雨予測や 雨量計等のデータに基づいて土石流の発生を予測し、速やかに市町村等に伝達する。
市町村は、土石流の発生が予測された場合、ある いは「大雨警報」等が発表された場合、防災行政無線、広報車の巡回等で避難指示等の情報を速やかに住民等に伝達する。
国、県、市町村は、住民等が避難時に適切な対応 がとれるように、「大雨警報」等の気象情報の意味や土石流災害との関係等について、あらかじめ住民等へ啓発・周知する。
○避難者の受入れ
市町村は、土石流の発生が予測された場合、ある いは「大雨警報」等が発表された場合に、土石流避難所を開設する。
市町村は、土石流の危険が長期化した場合に備 え、土石流避難所の候補施設の選定を行う。
(7) 一時帰宅、避難範囲の縮小・解除
@一時帰宅
合同現地対策本部は、火山活動の状況、気象条 件、輸送体制、安全確保体制等から可能と判断される場合、避難の勧告または指示の対象である住民について、家財等の持ち出しのため、時間及び人数を限定し ての帰宅(一時帰宅)を検討する。
市町村は、合同現地対策本部の検討に基づき、住 民の一時帰宅について、その対象範囲を決定して実施する。なお、一時帰宅の実施に当たっては、二次災害防止の観点から、警察、消防、自衛隊等関係機関の協 力を得て、十分な安全確保体制をとるものとする。
A避難範囲の縮小
合同現地対策本部は、火山噴火予知連絡会や火山 専門家を含めて協議を行い、噴火の状況に応じた影響範囲の変更を検討する。
市町村は、合同現地対策本部により影響範囲が縮 小された場合、その範囲に基づき、避難範囲の縮小及び避難勧告または指示の解除を実施する。
国、県、市町村は、火山活動の予測や被災地の復 旧状況、各種支援活動の実施状況及び今後の見通しについて、合同現地対策本部等と情報内容の整合を図りつつ、住民等の混乱や不安の解消のための広報に努め るとともに、地域の実状・ニーズに合わせた、きめの細かい情報を提供する。
県、市町村は、在宅要援護者に対する情報伝達に ついては、市民防災組織(自主防災組織)、社会福祉協議会等の組織・団体と連携するとともに、あらかじめ住民どうしによる情報伝達や安否確認の体制の構築 を推進する。また、聴覚障害者向けの「携帯電話メール」や視覚障害者向けの「受信メール読み上げ携帯電話」等の機器の活用を進める。
国、県、市町村は、火山活動活発化の初期の段階 から、インターネットや報道機関等の活用のほか、観光事業者、観光協会、旅行代理店や輸送業者等の協力を得て、観光地や観光施設、主要な駅等における広報 により、迅速かつ広域に関連情報の周知を図る。
国の非常災害対策本部等は、火山活動の状況、被 害状況、各種施設の復旧状況、産業・経済活動への影響や見通し等について、関係機関からの情報を集約もしくは共有し、日本国内全体及び海外向けの情報を発 信する。
警察及び国、県、市町村の道路管理者は、「臨時 火山情報(噴火の可能性)」や「緊急火山情報」の発表に伴い、ハザードマップに基づき設定された避難範囲や合同現地対策本部において新たに設定した避難範 囲を基に、必要に応じ交通規制及び通行禁止等の措置を講じる。
合同現地対策本部は、噴火の状況に応じて、警察 及び道路管理者に交通規制及び道路の通行禁止措置等を要請する。合同現地対策本部から要請を受けた警察及び道路管理者は、可能な限り速やかに、必要な措置 を講じるとともに、関連情報を合同現地対策本部に提供するものとする。
合同現地対策本部は、噴火の状況に応じて運行規 制対象範囲を検討する。国は、合同現地対策本部の検討結果に基づいて、速やかに当該鉄道事業者に運行中止措置等を要請する。国からの要請を受けた鉄道事業 者は、速やかに必要な措置を講じる。なお運行中止を行う場合は、可能な限り、バス等による代替輸送等を実施するとともに、関連情報を合同現地対策本部に提 供するものとする。
合同現地対策本部は、被災地上空及びその周辺上 空を飛行している航空機への火山灰の影響及び被災地周辺上空に多数の航空機(救難機、捜索機、取材機等)が集中することによる事故発生を防止し、かつ上空 からの監視観測活動を円滑に実施するため、ハザードマップ等に基づいてヘリコプター等航空機の飛行の自粛を要請する範囲を検討する。国は、合同現地対策本 部の検討結果に基づいて、関係機関へ要請するとともに、報道機関等関係団体へ協力を依頼する。
国は、必要に応じて飛行規制を行い、NOTAM(ノータム:Notice to airman) により周知を行う。
合同現地対策本部は、噴火開始後、その規模や形 態に応じて飛行の自粛を要請する区域を精査し、必要に応じて変更するとともに、関係機関へ周知を図る。
気象庁航空路火山灰情報センターは、富士山の噴 火に伴う火山灰の監視を行い、航空路火山灰情報を発表し航空関係機関へ周知する。
国、県、市区町村は、協力して降灰量の測定を行 い、降灰分布を把握するとともに、降灰状況を住民等へ周知する。また、地方気象台等から降灰に関わる風向・風速情報を収集し、報道機関の協力を得て、住民 等へ周知する。
国、県、市区町村は、あらかじめ、必要となる除灰用資機材、具体的な除灰方法、火山灰の 一時仮置き場・最終処分場や、最終処分方法等について検討し、その結果を基に、道路管理者は、道路除灰作業の方法等について検討する。なお、降灰の範囲や 量が大きく、除灰資機材の確保や作業方針の調整等が必要な場合には、合同現地対策本部において、道路除灰作業の実施方針を決定する。
民有地内の降灰除去は、各家庭及び各事業者によ る対応を原則とする。
各家庭から排出された灰の回収は、市区町村が実 施し、各事業者から排出された灰については、一時仮置き場への搬入までを事業者の責任において実施する。
国、県、市区町村は、農地や森林をはじめとする 道路・宅地以外への降灰状況についても把握し、対応方法を決定する。また、農地や森林に火山灰が堆積した場合の農作物や樹木に対する影響調査を実施する。
噴火時の避難範囲内における残留者・行方不明者 等の捜索・救出にあたっては、二次災害を防止するため、火山活動の状況を把握した上で捜索・救出活動の実施の可否を判断し、現場への出動にあたっては、緊 急連絡体制、装備等安全確保に関する対策を講じるものとする。
火砕流等による重症熱傷患者が発生した場合に は、迅速かつ高度な治療が求められることから、国、県、市町村は、重症熱傷患者の治療が可能な医療機関の把握、治療に必要な医薬品、医療用資材等の調達確 保も見据えた体制を構築する。
市町村は、あらかじめ拠点となる救護所、救護病 院等を可能な限り選定する。
県は、一定程度の人数の負傷者に対する高度な治 療体制を確保するため、既存の災害医療計画に基づく医療機関を活用するとともに、県外へのヘリコプター等を活用した搬送を行うための仕組みをあらかじめ整 備する。
合同現地対策本部は、重症熱傷患者のヘリコプ ター等による搬送について、国、県、関係機関と調整を図る。
国、日本赤十字社及び被災地域外の地方公共団体 は、医師を確保し救護班・災害派遣医療チーム(DMAT)を編成するとともに、必要に応じて、公的医療機関・民間医療機関からの救護班・災害派遣医療チー ム(DMAT)の派遣を要請するものとする。
合同現地対策本部は、噴火時の溶岩流や土石流等 による被害拡大を防止するために、火山活動や被害状況を踏まえた対応方針を速やかに決定する。また、溶岩流の流下予測・制御や土石流発生状況の把握、砂防 えん堤等の整備、警戒避難体制の構築等の具体的な対策は、溶岩流や土石流対策等の専門家によるチームを結成して対応する。
火山活動の状況により、噴火前から多数の避難者 が発生することが予測されるため、県、市町村は、備蓄物資の放出や、協定を締結しているメーカーや小売店等関係事業者等からの調達により、被災者に対し物 資の供給を実施する。
県、市町村等は、大量降灰等による浄水場の機能 低下等により、給水量の減少が予想される場合、避難所等を拠点に給水車等による飲料水の供給を実施する。
火山活動の状況は、時々刻々と変化し、避難対象 範囲の変更に伴う避難者数の変動も大きいことを踏まえ、県、市町村は、物資の備蓄推進や、他地方公共団体との連携に基づく広域的な物資供給体制を確立す る。
国は、被災した県、市町村における物資が不足し た場合、被災地外での物資調達等を行い、被災地へ搬送する。
噴火による被害が甚大で、被災した地方公共団体 や関係機関だけでは十分な防災対応ができない場合、広域応援協定等に基づき、国や応援可能な地方公共団体からの応援要員を受入れ、協力して応急・復旧活動 を実施する必要がある。
被災した地方公共団体は、合同現地対策本部の調 整の下、応援可能な地方公共団体に対して、必要な支援の内容、派遣先、派遣期間、進入ルート、必要な人員及び装備等を明示して応援要請するとともに、受入 れ体制を速やかに整える。なお、必要に応じて、地方公共団体間で相互の広域応援体制について協議し、協定等を締結しておくものとする。
国、県、市町村及び関係機関は、活動要員のため の宿泊施設や活動拠点として利活用可能な大型施設をあらかじめ把握するよう努める。また、被災地周辺の活動拠点を後方支援するための拠点として、港湾、周 辺都市の既存施設を活用する。特に本格的な復旧活動期においては、多数の活動要員や資機材、重機等の集積拠点として活用する。
富士山が噴火した場合、避難生活支援や降灰除去 等多くの人手に頼らざるを得ない活動が発生する可能性がある。一方で、各方面から多くのボランティア支援が寄せられることが予想される。県、市町村は、社 会福祉協議会やボランティア団体により設置される「ボランティアセンター」と連携を図りつつ、ボランティアの受入れ体制を整え、ボランティアによる支援の 活用を図る。
県、市町村は、噴 火災害により居住継続が困難となった住民が発生した場合は、住民の要望、地域特性、避難前の地域社会の維持等に配慮した応急仮設住宅の建設や公営住宅の提 供等による応急的な住宅供給を実施する。
火山活動が活発化 してから終息に至るまでの期間が長期間に及ぶ場合、住宅が被災していない避難対象の住民についても、長期間の避難生活が強いられることから、応急的な住宅 供給を検討する。
応急仮設住宅の解 消や被災者の生活の再建を図るために、恒久的な住宅の供給を推進する。
県、市町村は、被 害調査を実施し、住宅の必要供給戸数を算出するとともに、被災地の復興方針等を踏まえ、住宅再建手法について検討する。その際、被災者の再建意向について も聞き取り調査等により把握し、公営住宅の供給計画、資金融資等による住宅の補修・再建等供給方針やプログラムを定め、被災者に速やかに提示する。
噴火によって被害 を受けた住民の生活再建や、被災者の日常生活維持のために、被災者生活再建支援金の支給、災害援護資金の貸付、生活福祉資金の貸付等各種経済的支援を行 う。
国、県、市町村 は、避難生活が長期に及ぶ場合、家財道具を持ち出すための一時帰宅の実施や、各世帯が持ち出した家財道具を保管するための倉庫の確保を検討する。
県、市町村は、避 難生活の長期化により、本来の生活拠点での収入が断たれ、十分な生活や事業活動が再開できない者に対し、義援金により創設した基金等を原資とする食事供与 事業の実施等の支援方法についても検討する。
県、市町村は、避 難生活が長期化する場合には、災害時要援護者等の居住環境確保のため、公営住宅やホテル・旅館等の避難所としての積極的な活用を検討する。
噴火災害によって被害を受けた地域産業の再建を図るための、各種の経済的支援を実施する。また、直接的な被害に加えて、 人口や観光客の減少による影響も考慮した地域経済活動の活性化の方策を計画する。
国、県、市町村は、各種金融機関等の行う災害復 旧資金等各種融資制度に関する情報を事業者や各種団体に周知し、その活用を促進する。
県、市町村は、地域経済支援の観点から、災害時要援護者等の避難施設として、ホテル・旅館等の積極的な活用を検討する。
@風評被害の発生防止対策
国、県、市町村は、火山活動に関する監視観測 データ・画像等の情報を迅速かつ正確に共有するため、監視観測施設、防災拠点施設及び観光拠点施設のネットワーク化を図る。
国、県、市町村は、風評の流布状況の把握に努 め、誤情報の拡大の兆しが確認された場合には、国、県、市町村の見解を発表する。
国、県、市町村は、報道を原因とする風評被害の 発生を防止するため、火山専門家と連携を図り、事実を正確に把握したうえで、報道機関と連携し、その内容が誤解なく伝わるように努める。
観光事業者は、問い合わせを受けた場合に的確な 対応ができるよう、あらかじめ富士山の火山活動に関する知識の習熟を図るとともに、国、県、市町村の発表する見解の把握に努める。
A風評被害を受けた場合の事業者への支援
国、県、市町村は、風評被害を受けた事業者に対 して、その被害を可能な限り補填し、事業が継続できるような仕組みを検討する。
@避難対象範囲等における火山防災対策の充実
国、県、市町村は、避難対象範囲を中心に、重点 的に火山防災対策を推進する地域を定め、火山噴火に備えた安全なまちづくりを進めるとともに、その範囲の住民、事業者等の利用者に対し防災対策の充実を求 める。
特に、避難対象範囲に立地する施設の事業者は、 富士山の噴火に備えて、情報伝達や従業員等の役割分担、防災訓練、観光客の避難対応等について定めた「火山防災対策計画」の策定に努めるものとする。
A噴火災害発生後の新たな地域づくり
国、県、市町村は、噴火に伴う被災範囲や被害状 況の把握とともに、学識者等の協力を得て安全性や火山活動の継続に伴う影響範囲等の検討・調査を実施し、災害危険区域の設定等防災の観点から土地利用のあ り方を検討する。
県、市町村は、噴火履歴を観察できる露頭等の自 然資源や既存の砂防えん堤等を活用した観光の振興を図る。また、噴火終息後は、災害遺構も加えた新たな観光等による地域産業の活性化を図る。火山堆積物に ついては、工業製品への活用等災害後の地域産業の振興に役立てるよう努める。
市町村は、地域を構成する複数の町内会・自治会 等を中心とした地域のネットワークを強化し、婦人会、事業所、商工会議所、学校教職員、PTA等の参画を呼びかけ、地域社会の充実と広域的な地域防災力の 向上を図る。
平常時には、地域のネットワークを通じ、防災、 環境教育、火山学等に関して学識者や専門家による講習や研修会、ワークショップの開催、訓練実施等を行い知識の普及及び防災組織としての活性化を図り、災 害時の避難や情報収集・伝達等における協力体制を構築する。
県、市町村は、防災リーダーの育成や地域の火山 防災マニュアルの策定等にあたって具体的な成果が得られるように、地域を構成する住民、地元事業者等を対象とした富士山に関する基礎知識、防災教育、環境 教育等に関する啓発・教育プログラムを作成し、計画的に防災啓発活動を進める。
@幅広い学習テーマによる学習機会の創出
富士山は、洞窟や溶岩樹形等独特な地形を数多く 有し、特徴ある動植物も生育していることから、国立公園に指定されている。このほか、豊富な水資源や多様な土地利用型農業の生産現場の提供など、自然の不 思議さや面白さ、かけがえなさを学ぶ貴重な資源になっている。また、富士山ゆかりの神社や史跡なども多く、歴史的資源にも恵まれている。
県、市町村、観光事業者は、これらの特徴ある資 源を活用した観光プログラムの充実を図るとともに、富士山のもつ火山地形や自然環境、富士山と人間との関わりなどの理解を深めた上で、国内外から訪れる観 光客の環境保全や火山防災への意識を高めて広く普及していくための学習機会の創出をめざす。
県、市町村は、噴火履歴を観察できる露頭等の自 然資源や既存の砂防えん堤等を活用して、地域全体を自然・観光の博物館として、噴火の伝承や火山学習の推進を図る。
A観光ガイド・解説者等の人材育成
県、市町村は、ツアーガイド、宿泊施設事業者、 交通事業者等の観光事業者を対象に、専門家の協力を得て、火山学や火山防災、環境問題等の分野も取り入れた自然ガイド講習を企画・実施し、各分野に精通し た観光ガイド・解説者の人材育成を図る。
国、県は、観光ガイド・解説者が観光客等に正し い防災に関する情報や知識を提供できるような環境整備に努める。
学校においては、地域や児童生徒の実態に応じ て、今後とも火山に関する基礎的知識、自然がもたらす恩恵や災害等に関する教育を一層推進するよう努めるものとする。
県、市町村においては、小・中学校の教職員を対 象に、例えば火山専門家による講習を実施するなど、火山や地震に関する知識の普及に努める。
国、県、市町村は、地域住民の火山防災に対する 意識向上を図るために、富士山に関する情報や知識を、より興味深く、また正確に伝えるための啓発・教育ツールを整備する。
@情報発信拠点等の整備
国、県、市町村は、気象情報、火山活動に関する 情報・監視映像、観光情報等の富士山に関する各種情報について、地域住民や観光客等に向けた発信サービスを行うために、研究施設、ビジターセンター、博物 館・資料館等の既存施設を拠点にした情報のネットワーク化を図る。
A火山学習や観光プログラムとしての防災対策施設の整備
噴火等による災害時には避難場所・監視観測拠点 等の防災施設としての機能を果たし、かつ平常時には、地域住民の集会施設あるいは火山学習や観光プログラムの拠点となるビジターセンター等地域生活や産業 に有効活用される施設の整備を進める。
避難所、避難路、砂防えん堤等の各種防災対策施 設の整備にあたっては、観光地としての景観に配慮するとともに、公園や観光プログラムの対象としての利用に配慮する。
富士山火山広域防災対策の推進にあたっては、関 係する機関が広域に存在し、また多岐にわたることから、対策の進め方において、関与する国の行政機関や地方公共団体等防災関係機関が共通の認識に立ち、一 体となって取り組んでいくことが必要である。
県、市町村においては、富士山噴火災害に備えた 地域防災計画の策定を進めるとともに、災害時要援護者の参画を含めた広域避難等に関する合同訓練を実施するなど、富士山噴火災害に対する意識を高め、互い の連携を強化しつつ、近隣県、市町村に係る相互間地域防災計画の策定に向けた検討に努める。また、災害時において、各種対応が迅速かつ円滑に実施されるよ うに、既存の各種応援協定を活用しつつ連携強化を進め、あらかじめ都道府県レベル及び市町村レベルにおいて、国等の支援のもと、広域応援活動の実効性を確 保するものとする。
多様な噴火形態、時々刻々変化する事態に対する 火山防災対策の構築において、火山に関する調査研究や噴火予知技術等の果たす役割は重要である。これらの調査研究の成果を火山防災対策に反映させ、的確な 対応による被害の軽減化を図るための防災計画等を、あらかじめ策定しておく必要がある。
国及び大学等関係研究機関は、富士山噴火等火山 活動に関するメカニズムや噴火予知技術の研究・開発に努め、また、県や市町村とも共同し、観測体制の強化や情報の共有、火山活動を把握するための研究を推 進する。
国及び大学等関係研究機関は、噴火履歴に関する 新たな調査の実施やデータの蓄積にも努め、噴火影響範囲の予測技術の高度化に向けての調査研究及び技術開発を推進する。
国、県、市町村は、ハザードマップ等の成果を踏 まえ、広域避難等に関する合同訓練や合同現地対策本部における図上演習等を実施するなど、富士山噴火災害に対する関係機関の意識を高め、互いの連携体制の 強化に努める。
これら実戦的訓練や図上演習等の実施により、常に富士山火山防災への関心を維持するとと もに、逐次、防災計画を見直す等火山防災対策の内容を高度かつ実践的なものとするよう努めるものとする。
富士山が噴火した場合、過去の履歴からみて、噴 火に伴う様々な火山現象が発生する可能性がある。また、大規模噴火の場合は、広域かつ甚大な被害が発生するとともに、長期化することや、影響が多岐に及ぶ ことが想定されている。今回とりまとめた富士山の火山広域防災対策は、多種多様な噴火形態を示す全国の活火山においても、今後、火山防災対策を確立してい く上で参考になる多くの知見が含まれているものと考えられる。従って、本基本方針に基づく防災対策を、さらに全国の活火山の防災対策にも反映し、その充実 に努めるものとする。

図1 富士山防災マップ(溶岩流・噴石・火砕流などの影響がおよぶ可能性の高い範囲)

図2 富士山防災マップ(降灰の影響がおよぶ可能性の高い範囲)
表1 富士山火山噴火による影響の度合いに応じたゾーン区分(噴火前)
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ゾーン |
範囲の考え方 |
ハザードマップに基づく噴火前設定範囲 |
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第1次 ゾーン |
・ごく小規模の噴火であっても、瞬時に降下物・ 流下物による危険の及ぶ可能性がある。 |
ハザードマップにおける ・火口分布領域
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第2次 ゾーン |
・噴火が発生すると、短時間(3時間以内)で降下物・流下物による危険の及ぶ可能性がある。 |
第1次ゾーンの範囲外で、ハザードマップにおいて、以下の いずれかの可能性がある範囲 ・噴石、火砕流・火砕サージが到達 ・ 溶岩流が3時間以内に到達 ・積雪期において、融雪型火山泥流が到達 |
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第3次 ゾーン |
・噴火が発生すると、やや時間をおいて(3時間以上24時間以内)流下物による危険の及ぶ可能 性がある。 |
第1〜2次ゾーンの範囲外で、ハザードマップにおいて、以 下の可能性がある範囲 ・溶岩流が24時間以内に到達 |
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第4次 ゾーン |
・想定される最大規模の噴火であれば、最終的に 流下物による危険の及ぶ可能性がある。 |
第1〜3次ゾーンの範囲外で、ハザードマップにおいて、以 下の可能性がある範囲 ・溶岩流が到達(最大) |
図3 ハザードマップに基づく第1〜3次ゾーン(噴火前)
表2 各局面における避難範囲別・対象別の噴火前避難対策
凡例) △:避難準備 ○:活動自粛等 ◎:避難
網掛け:段階を追って事態が進展した場合、 新たに避難することとなる対象者
【臨時火山情報(注意喚起)】臨時火山情報により注意喚起の必要が示された場合
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対象者 噴火前避難範囲 |
観光客、 登山者・入山者 |
一般 住民 |
災害時 要援護者 |
市町村の対応 |
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臨時火山情報時避難範囲 |
○ |
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入山自粛呼びかけ |
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緊急火山情報時避難範囲 |
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災害時要援護者避難範囲 |
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【臨時火山情報(噴火の可能性)】臨時火山情報により噴火の可能性が高まったことが示さ れた場合
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対象者 噴火前避難範囲 |
観光客、 登山者・入山者 |
一般 住民 |
災害時 要援護者 |
市町村の対応 |
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臨時火山情報時避難範囲 |
◎ |
◎ |
◎ |
避難勧告または指示 |
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緊急火山情報時避難範囲 |
○ |
△ |
◎ |
避難準備(要援護者避難)情報 観光自粛・帰宅呼びかけ |
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災害時要援護者避難範囲 |
○ |
(△)*注1 |
◎ |
避難準備(要援護者避難)情報 観光自粛・帰宅呼びかけ |
※この段階で緊急火山情報時避難範囲の家畜も移送(避 難)
【緊急火山情報】緊急火山情報が発表された場合
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対象者 噴火前避難範囲 |
観光客、 登山者・入山者 |
一般 住民 |
災害時 要援護者 |
市町村の対応 |
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臨時火山情報時避難範囲 |
◎ |
◎ |
◎ |
避難勧告または指示 |
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緊急火山情報時避難範囲 |
◎ |
◎ |
◎ |
避難勧告または指示 |
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災害時要援護者避難範囲 |
○ |
△ |
◎ |
避難準備(要援護者避難)情報 観光自粛・帰宅呼びかけ |
*注1) 一般住民は必要に応じて避難準備を行うことが望まれる。
表3 富士山火山噴火による影響の度合いに応じたゾーン区分(噴火時)
(1) 避難範囲の基本となるゾーン(噴石等、溶岩流、火砕流・火砕サージ等)
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ゾーン |
範囲の考え方 |
対象範囲 |
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第1次 ゾーン |
・天候・風向等にかかわらず、瞬時に降下物・流 下物による危険の及ぶ可能性がある。 |
・出現した火口 ・今後火口が開くと想定される範囲 |
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第2次 ゾーン |
・天候・風向等にかかわらず、短時間(3時間以内)で降下物・流下物による危険の及ぶ可能性がある。 |
・火口周辺における噴石等による危険がある範囲 ・今後、溶岩流が3時間以内に到達すると考え られる範囲 ・(標高1,800m程度以上の急傾斜地で 噴火して火砕丘の発生が確認された場合、火砕物噴火が発生した場合)火砕流・火砕サージが到達する危険があると考えられる範囲 ・(積雪時)融雪型火山泥流の到達する危険があると考えられる範囲 |
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第3次 ゾーン |
・天候・風向等にかかわらず、やや時間をおいて (3時間以上)流下物による危険の及ぶ可能性がある。 |
・今後、溶岩流が到達する可能性が高いと考えられる範囲
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第4次 ゾーン |
・現状で想定される最大規模の噴火であれば、最 終的に流下物による危険の及ぶ可能性がある。 |
・今後、溶岩流が到達するおそれのある範囲 |
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第5次 ゾーン |
・現状で想定される最大規模の噴火でも、流下物 による危険のおそれはないが、降下物による影響の及ぶ可能性がある。 |
・火山灰が降下すると考えられる範囲 (降灰堆積厚 2cm以上) *ただし火砕物噴火時には(2)も設ける |
(2) 火砕物噴火時、第5次ゾーン内に設けるべきゾーン
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降下物危険 ゾーン |
・大量の火山灰等堆積により、堅固でない建物が 崩壊する可能性がある。 |
・大量の火山灰(降灰堆積厚 約30cm以上)・火山レキ等が降下している(またはそのおそれがある)範囲
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降下物注意 ゾーン |
・飛来する火山レキ等により、屋外にいる人に危 険が及ぶ可能性がある。 |
・火山灰とともに直径数cmの火山レキ等が降下して いる(またはそのおそれがある)範囲 |
(3) 火山灰堆積時の降雨時に備え、特に設けるべきゾーン
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土石流危険 ゾーン |
・降雨により、瞬時に流下物による危険の及ぶ可 能性がある。 |
・噴火による火山灰等の堆積状況などから、降雨により土石流の流下危険があると考えられる範囲(10p 以上の降灰がその流域にあったと見込まれる渓流の下流で勾配2°以上の地域) |
表4 市町村の設定する噴火時避難・警戒範囲の種類
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名称 |
噴火の状況 |
参考とする ゾーン境界線 |
市町村の対応 |
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一般住民等 噴火時避難範囲 |
溶岩流の流下なし |
第2次ゾーン (噴火時) |
避難指示 |
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溶岩流の流下あり |
第3次ゾーン (噴火時) |
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災害時要援護者 噴火時避難範囲 |
溶岩流の流下なし |
第3次ゾーン (噴火時) |
避難準備 (要援護者避難) 情報 |
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溶岩流の流下あり |
第4次ゾーン (噴火時) |
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降下物危険範囲 |
大量の降灰、火山レキ等降下あり |
降下物危険ゾーン |
【降灰時】 堅牢建物屋内退避 の呼びかけ |
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降下物注意範囲 |
比較的多くの降灰、火山レキ等降下あり |
降下物注意ゾーン |
【降灰時】 屋内退避の呼びかけ |
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土石流警戒範囲 |
火山灰堆積時 |
土石流危険ゾーン |
【大雨警報発表時】 避難指示 |